【インタビュー】Tempalay
新体験のTempalayワールドを誓う、リベンジのフジロック
フィジカルなグルーヴでステップを踏ませながら、ふわりと白昼夢的世界へと連れ立ってしまう中毒性の高いサウンドを奏でる、新世代バンドTempalay。2014年に結成して以降、アメリカのフェス「SXSW」出演やアメリカツアー、アジアツアーなども行ない、その奇想天外な音楽で感度の高いポップファンを惹きつけている3人は今年6月、2年ぶりのフル・アルバム『21世紀より愛をこめて』をリリースした。
小原:久々のフル・アルバムで、前回アルバムを出したときとは自分たちの状況が変わってきていることを実感しているなかでの作品作りだったので。中途半端なことはできないなと思ってました。
藤本:ライブでの会場が大きくなってきているんですけど、会場が大きくなったことが嬉しいんじゃなくて、大きくなったことでこだわれるものが増えているんですよね。それで、以前よりも音楽的にいろんなことが試せるようになってきている。それが、結果的に大きなステージに運んでいってくれるものになるという、ワクワク感があります。
今作は、結成当初からサポートメンバーとして参加していたAAAMYYYが正式メンバーとして加入した、新体制となって初のアルバムでもある。ソロでも活動し、さまざまなバンドのサポートをしてきたAAAMYYYは、現在のTempalayについて、「楽しそうにやっているのがいい」と語る。
AAAMYYY:本当に楽しそうにやっているんです。ライブに関しては、よりお客さんが増えたりとか、大きなところでできるようになってきたから、やりやすくなったのもあると思うんですけど。バンドが楽しんでいる空気があるから、私も楽しんでいますね。
つねにクリエイティブに、リスナーや観客に仕掛けて、新しい体験を味わってもらうこと。そのTempalayサウンドを生み出す上では、「かっこいいけれど、その中にちょっと狂気的なものがあって、でもクスッと笑えるものがないとっていう自分なりのルールはある」と、ソングライターである小原はいう。そんな彼を形作ったものを聞くと、こんな答えが返ってきた。
小原:多種多様で、音楽だけじゃないんですよね。内に秘めた狂気というようなものが好きなんです。例えば、初めての映画体験が『マスク』(1994年)だったんです。小さい頃そのVHSを毎日のように見ていて。あの映画は、マスクをすることで自分の欲望がすべて表に出てくるというもので、元々のホラー漫画では、最終的に最愛の人を殺してしまって終わるんですよ。それが僕の中で衝撃的な体験で。コメディでもあるしバイオレンスでもあるし、セクシーでもあって。当時は子どもだったから怖かったんですけど、多分そういう怖いもの、狂気的なものに美しさを感じるというものが養われた気がしますね。
さらに、自分で手に取り触れてきたさまざまな作品、カルチャーが彼自身の感性を裏打ちしていく。
小原:音楽体験でいうと、僕が中2の時に銀杏BOYZが出てきて、そこからサブカルにのめり込んでいったんです。同時にパンテラとかも聴いてましたけどね(笑)。大槻ケンジさんの「グミ・チョコレート・パイン」とか、みうらじゅんさんの「アイデン&ティティ」……最終的に「ガロ」とかまでいっちゃって。でもそれを僕は人に言いたくなくて。めちゃくちゃヤンキーの学校だったので、そういうやつとつるみながらも、家ではつげ義春を読むみたいな。隠れサブカルで。そういうのをもう隠さなくてもいいやって解放したときに、外にいるやんちゃな自分と、内なるサブカル文化がバーン!とぶつかって、それこそマスク状態になったんです(笑)。
こうして独自で育て上げた感覚と、3人の人間がせめぎ合うサウンドゆえ、Tempalayは面白い。
小原:細かい仕掛けをしているので、入り込んでほしいですね。正解不正解はないので、いろいろ想像して欲しいです。じゃないと僕らの苦労はなんだったんだろうってなるので(笑)。
今年のフジロックはTempalayにとって3度目の出演となる。最初は、2015年の「ROOKIE A GO-GO」という、オーディションを勝ち抜いて獲得する、新人の登竜門ステージだった。
藤本:決まった時はめちゃくちゃ嬉しかった。
小原:フジロックに出たくてこのTempalayを組んだんです。めったにプライベートで遊ばないんですけど、「ROOKIE A GO-GO」に出ると決まった日はふたりで飲みに行ったくらいだし。
藤本:渋谷の交差点かなんかで、ウェーイ!ってやってましたね(笑)。
小原:フジロックには観客としても遊びに行っていたから、そこに演者としているという高揚感がありましたね。
2年後の2017年には、満を持してのフジロック出演となった。が、思わぬアクシンデントが起こる。
小原:僕が出演前日に骨折してしまって、だいぶ迷惑をかけましたね。ギターが弾けなくなってしまったので、現地にいた友だち──ギターの弾ける友だちからドラマーの友だちとかにも頼んで、徹夜でギターを何曲か習得してもらって。当日のステージは、ギターを一人ずつ回して、最後はカラオケでやるというステージだったんです。思い出深いですけど、思い出したくないステージですね。なので、今回の出演は、ポジティヴに捉えるとストーリーは作れたかなと。
AAAMYYY:私は初めてのフジロックが、2017年だったんです。だから衝撃的でもあり(笑)。でも、とてもいいロケーションだし、出演者もよくて、しかもご飯が美味しくて、いちばん好きなフェスですね。今年も楽しみなんですけど、今年こそはドラゴンドラに乗ろうと思っています。
自分たちの出演時はもちろん、観客として行っていたという小原と藤本にフジロックの魅力を語ってもらった。
藤本:普段はなかなか、あれだけたくさんの海外の大御所のバンドを見ることがないので。しかもフジロックならではというか、酒を飲みながら、みんなでワイワイ騒ぎながらライブを見ることってあの空間でしかないですからね。雨ですらも演出の一部で、どしゃ降りでかっこいいステージを見せるバンドもいれば、はじまった瞬間に雨がやんで陽気な感じになったり、すごく面白いと思う。
小原:いろんなステージのなかから、何を見るかも楽しい。いちばん上にある「FIELD OF HEAVEN」まで行っちゃうと、なかなか帰ってこれないとか。なんかいま話していたら、フジロックめっちゃ楽しみになってきました。
現在、アルバム『21世紀より愛をこめて』を携え全国ワンマン・ツアー中のTempalay。そのツアー直後のフジロックのステージとなるので、是非楽しみにしてほしい。
小原:ツアーではいつも、ひとつのショーとして成立するように、頭から終わりまで見ないといけないような構成にしているので。新体験をしてもらいたいですね。フジロックについては、このツアーが終わってから、ツアーの感触を見ながらいろいろ決めたいと思ってます。最強の布陣で臨むつもりなので。
プロフィール
Tempalay(テンパレイ)
FUJI ROCK FESTIVAL をはじめ、アメリカの大型フェスSXSWを含む全米ツアーやアジアツアーを行う等、自由奔放にシーンを行き来する新世代バンド"Tempalay"。15年9月にリリースしたデビューEP『Instant Hawaii』は瞬く間に完売。16年1月に1stアルバム『from JAPAN』、17年2月に新作EP『5曲』を発売。17年夏にGAPとのコラボ曲「革命前夜」を収録した2ndアルバム『from JAPAN 2』をリリース。18年夏、AAAMYYY(Cho&Syn)が正式メンバーに加わり、新体制後にミニアルバム『なんて素晴らしき世界』をリリースし各方面から高い評価を得る。
公演情報
FUJI ROCK FESTIVAL'19
公演日程・会場
7/26(金)~28(日) 新潟・湯沢町 苗場スキー場
※Tempalayは7/27(土)RED MARQUEEに出演
インタビュー・文/吉羽さおり