演劇

【インタビュー】LEO 箏リサイタル

【インタビュー】LEO 箏リサイタル

LEO

箏アーティストのLEOが、自身初となるホール・リサイタルを紀尾井ホールににて開催。藤倉大、高橋悠治、坂東祐大といった日本を代表する作曲家が手掛けた楽曲など、世界初演プログラムでお届けする一夜限りの貴重な公演となる。特別なリサイタルを前に、LEOは何を思うのか。話を聞いた。

 

――今回のリサイタルはどのようなテーマで演奏されるんでしょうか。
今回は「古典を現代に迎える」というテーマを掲げています。今年3月にリリースしたアルバム「In A Landscape」にも共通するテーマです。今僕自身が演奏する上で、日本独特の表現、日本の美学、といったものを追求していて。余韻の短い音の儚さを慈しむことだったり、間引くような音楽の良さ、といった点は和楽器の音楽だけでなく、様々な音楽で表現できるものではないかと思っています。そして、それは日本人の心に絶対に刺さるものがある、DNAに染みついているのではないかと思います。

 

――どんなジャンルの音楽でも、日本人の心に響く根源的な表現ができるはず、ということですね。
僕が幼少期からいろんな楽器に触れてきた中で、お箏をずっとやり続けてきたのには、ひとつはハーフゆえに日本人のアイデンティティを探していた、という部分はあると思います。でもそれ以上に、日本的な表現にすごく共感していたところがあるんです。そして、きっとそれは、日本人であれば誰でも共感できるはずと信じています。古典音楽の歴史の中で培われた日本的な美学を、今の時代に合った音楽で表現したいと思いました。特に今回は、お箏のために名だたる作曲家の方に曲を書いていただきました。さらに自作の曲、自分の流派の名作と、リサイタルを通して日本的な音楽の良さを表現できればと思っています。

 

――構想自体はかなり以前からあったそうですね。
2~3年ほど前から構想を練ってきました。新作を委嘱する作曲家の方とのコミュニケーションも重ねてきましたが、作曲家の方に、新しい曲を作っていただき、お箏の新しい魅力を引き出していただく。その過程が、僕はものすごく好きなんです。クラシックの曲をお箏で弾くということも、似たような感覚ではあるのですが、新しいお箏の魅力を自分なりに発見したり、再確認していくことが、音楽家としてのものすごい喜びなんですよ。尊敬する作曲家の方に書いていただいたことで、そういう気付きがいっぱいありましたね。

 

――LEOさんにとって、いろいろな念願や理想がかなうリサイタルなんですね。
そうなんです。たとえば、尺八の藤原道山先生との共演ですね。3年前ほど前に道山先生が「上弦の曲」を演奏される公演を観ました。「上弦の曲」は、僕の流派の曲ですし、いろいろな奏者の方の演奏やCDなどで何種類もの演奏を幼少のころから聴いていた曲。その中でも、道山先生の演奏は、群を抜いて感動しました。僕が感じた感動を、たくさんのお客さんに道山先生の音で届けたい。いつか共演させていただきたいと思っていて、今回ご快諾いただくことができました。「上弦の曲」の尺八は、普段の尺八ではあまり使わないくらいの高音を使うんです。そもそもその音を出せない奏者もいますし、出せてもピッチが安定しないことも多い。道山先生は、そんな音を正確に、ブレずに出していて、その正確さの上に成り立っている音楽的な抑揚があって、すごく自由に感じました。僕が聴いた時のお箏の奏者の方も素晴らしい方だったので、音楽的なアンサンブル、音楽での対話が直に感じられて、音楽家として目指したい境地だと思いました。本当に高い水準であってこそ成立する、言語のいらない音楽的なコミュニケーションでしたね。

 

――ある種、音楽家としての理想像を藤原道山先生の「上弦の曲」で感じられたんですね。
あの境地に達するには、今の努力じゃ全然足りない。あの演奏で、そう再認識できたように思います。

 

――今回、初披露となる曲もたくさんありますね。
藤倉大さんに書いていただいた「箏協奏曲」に関しては、今回のコンチェルトをお願いする前に、ソロの曲「竜」を書いていただいていて、協奏曲は、この「竜」をベースにつくられた楽曲です。 初めて「竜」を委嘱したのは2018年頃だったのですが、その少し前に「Neo」という曲を藤倉さんが書かれていたんです。その作品にすごく感動しました。三味線という楽器は、弦は3本しかないですし、フレットもなくてギターのようにコードもできない。様々な制限があって作曲家としては難しい楽器です。それなのに三味線の良さがすごく出ていて、なおかつ聴いたことのない音楽が流れてきました。当時、藤倉さんはまだお箏の曲を書いたことがなかったんですが、ダメ元でお願いしたらご快諾いただいて、そうして書いて頂いた作品が「竜」です。やはり素晴らしい楽曲で、藤倉さんご本人もすごく気に入ってくださっていたんです。「竜」を何度も演奏しているうちに、僕自身も西洋楽器とのコラボやオーケストラとの共演など、活動の幅が広がってきたので、レパートリーを増やしたいという想いから、今度は「協奏曲」をお願いし、4月にオーケストラ版を初演しました。室内楽版は今回が初演です。 高橋悠治さんは、高校生の頃に現代音楽にハマっていまして、そのころから聴いていた方。ピアニストとして演奏されているアルバムもたくさん聴いています。また、僕の師匠の沢井一恵先生も高橋悠治さんに多くの作品を書いていただいていて、ご縁があったんです。今回のテーマと照らし合わせてみると、高橋悠治さんの音楽自分がまさに今向き合っている音楽で、新しい曲だけれども、古典を聴いているかのような気持ちになるんです。古典の心を現代の曲で伝えるためには、ぴったりな音楽だと思いました。単に構成が古典っぽいとか、そういう表面的なことではなく、自分と音楽の世界にどんどん沈んでいくような、楽器と自分、また自分自身と対話していくような――心の奥底に潜り込んでいくような音楽なんですよね。

 

――藤倉さんのコメントでは、音の可能性や楽器の可能性をディスカッションしながら曲を組み上げた、というお話でしたが、どのようなお話をされましたか。
作品を作るとき、まずはSkypeなどでセッションしながら作っていくスタイルが多いのですが、最初のセッションの前からものすごくお箏のことをリサーチしていて、僕自身とても驚きました。本当に高い水準のラインから会話がスタートできて、その上で僕の思うお箏のことや、新しい奏法のこと、古典での奏法のことなど、応用のようなところから話すことができました。すごく中身のあるセッションでした。

 

――古典作品は、これまでにいろいろな方が何度も演奏されていて、ある意味お手本のようなものが出来上がっていますが、新作となるとご自身が初めての奏者になります。アプローチは違うものですか?
すごくプレッシャーはあります。僕が最初に弾いたその曲の演奏が良くなかったら、その曲の印象も良くなくなってしまう。責任をもって弾かないといけないと思いますし、練習にも熱が入ります。でも、新作初演の特権としては、作曲者ご本人に質問ができること。音源が存在しないので、何かを参考にすることはできないですが、どんな音楽も深く楽譜を読んでいけば、作曲家が伝えたいことはすべて楽譜に書かれているはず。もちろん既存の曲を演奏するよりも準備に時間はかかりますが、特に不自由に思ったことはないですし、むしろ、楽しい。自分で暗号やパズルを解いていくような感覚です。

 

――今回のリサイタル、こんなふうに演奏したいなどの描いているビジョンはありますか
実はまだ完成していない曲もあったり、数日前に届いたばかりという曲もあったりするので、まだまだこれから準備を重ねる段階です。藤倉大さんの曲は、室内楽版では初演ですが、オーケストラとは演奏しており、かなりグルービーで、リズムも16分の15拍子とかなり複雑なところもある曲です。かなり速いテンポでグルーヴ感がある中でも、伸び縮みがあって、その余白をちゃんと奏者にゆだねているんですね。そこが藤倉さんのすごいところです。その余白こそ、お箏らしい表現ができる部分。演奏を重ねるごとに曲が体に染みついてきているので、その余白でより自由に演奏できるようになればいいな、と感じています。それは、ほかの曲もそうですね。「上弦の曲」や自作曲「鏡」も何度も演奏してきている曲なので、曲を体に染みつけて、音楽上でのコミュニケーションができればと思います。ステージの上だからこそ発見できることもありますから。

 

――素敵なセッションを期待しています!最後に楽しみしている方にメッセージをお願いします。
日本の音楽の表現は、日本人ならば誰もが共感できると信じています。クラシックとは異なる、日本の音楽ならではの美学や魅力を感じていただけたら嬉しいです。

 

ライター:宮崎新之

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