知れば知るほど謎めく パウル・クレーの魅力とは!?
「パウル・クレー展」兵庫県立美術館で絶賛開催中!
現在、兵庫県立美術館で開催中の「パウル・クレー展 創造をめぐる星座」(~2025/5/25(日)まで開催)。
パウル・クレーの展覧会は日本でも数多く開催されてきましたが、同時代の前衛芸術家たちとクレーとの交流については、さほど広くは知られていないのでしょうか。というのも、キュビスム、表現主義、ダダイズム、シュルレアリスムなど、20世紀前半のヨーロッパでは多様な「イズム」が生じ、前衛芸術家の活動はしばしばそれらとの関わりにおいて語られますが、クレーは「イズム」とは距離を取り続けてきたからです。
とはいえ、クレーはひとり孤独のなかで制作したわけではありません。彼はヴァシリー・カンディンスキーら青騎士の展覧会に積極的に参加したり、ダダイストたちに会うためにチューリッヒを訪ねたりしています。なにより彼は1921年からバウハウスという共同体的な学校の教師となりました。
本展覧会では、クレーと交流のあった芸術家の作品との比較や、当時の資料の参照を通じて、多くの人や情報が構成する星座=コンステレーションのなかでクレーを捉え直し、その生涯にわたる創造の軌跡をたどります。
今回、本邦初公開となる《ハマメットのモティーフについて》は、1914年にクレーがチュニジア旅行した直後に制作されました。旅行中の日記にある「色彩が私を捉えたのだ」という彼の言葉は、この旅行が重要な転回点であることを示しますが、チュニジアの光が画家クレーを生み出したわけではありません。その少し前から、彼はフランス美術への関心を強め、それを旅の同行者であるアウグスト・マッケらと共有していました。特に画家ロベール・ドローネーのバッハのフーガのような抽象的な色彩は、クレーのお気に入りでした。
パウル・クレー《ハマメットのモティーフについて》1914年 バーゼル美術館
バウハウスでの色彩論の講義は、当初はヨハネス・イッテンが担っていましたが、1922年末にクレーがこれを引き継いでいきます。まさにその頃に制作された《赤、黄、青、白、黒の長方形によるハーモニー》は、多様な色彩を白と黒という両極の間に秩序づけていく、イッテンおよびクレーの色彩理解に基づきます。
パウル・クレー《赤、黄、青、白、黒の長方形によるハーモニー》1923年 パウル・クレー・センター
他方で、《北方のフローラのハーモニー》は、1921年以降にバウハウスに影響を与えたオランダのデ・ステイルの絵画を彷彿とさせます。ただ、クレーは彼らの「イズム」的な教条主義には批判的だったはずです。その証拠に、クレーはそれを「フローラ」つまり花々の咲き誇る姿として提示しているのです。
パウル・クレー《北方のフローラのハーモニー》1927年 パウル・クレー・センター(リヴィア・クレー寄贈品)
本展覧会にはパウル・クレー・センターやバーゼル美術館などのスイスの美術館をはじめ、日本各地の美術館からクレーの作品が集結し、同時代の芸術家の作品と比較しています。それらを紐解いてゆけば、20世紀前半を生きたひとりの芸術家としてのクレーの姿が見えてくるでしょう。
パウル・クレー《周辺に》1930年 バーゼル美術館
20世紀、激動の時代を生きたパウル・クレーの創造の軌跡をたどる「パウル・クレー展 創造をめぐる星座」は2025/5/25(日)まで兵庫県立美術館にて開催しています。謎めいたクレーの世界をぜひ体感してください。