【インタビュー】INSPi
こういう時代だからこそハモニケーションによる調和を
アカペラを通じ人と人の調和の大切さを唱えてきたINSPi。だが、世の中はコロナの影響により密が避けられ直接的なコミュニケーションを取ること自体、構えてしまうようになっている。
グループとして打ち出してきたものがやりづらくなる逆境。それでもリーダーの杉田篤史は、そうした今だからこそ調和の時代を築くべきと語る。
「心に余裕がなくなると、お互いを攻撃し合ってしまう。考えが違った人たちもいるということを受け入れるのが、ハーモニーを通して伝えられることだと思っています。違う音があるからこそ、ハーモニーが生まれる。人との違いをネガティブにとらえるのではなく、むしろ違うからこそ面白いんだというように変えていく。20年間それをやってきて今こういう状況になっているのは、運命的なものを感じてしまうんです。このために自分たちはずっとアカペラ、ハーモニーをやってきたのかと思うぐらいで」
3年前、自ら株式会社hamo-laboを起ち上げた杉田は、会社研修や学校教育といった場で組織の中の調和を学ぶワークショップ「ハモニケーション(R)」をおこなっている。そこで経験したこと、学んだものをバンドにフィードバック。他のメンバー5人もINSPiとは別の仕事を並行する。
グループの活動以外で働くことを自分たちのスタイルとして公言し「それゆけペラリーマン!」というネット番組も継続して配信。メンバー全員が集まっての生配信から、現在はZOOMでのリモート形式の生配信に切り替え、それぞれの仕事の都合がある中でも全員集まるという。
「オンラインですけど、時々会って調子を合わせておかないとチューニングが狂ってしまう。音楽的な面と、心のチューニング。コロナになって全然活動できなくなり、集まることさえも難しかった時期にほかのやることがあって助かった。収入がどうよりも、あの時にINSPiしかなかったら精神的に危なかったと思います。ペラリーマンスタイルを確立したことでこのコロナも乗り越えられると思うし、ということはこれから何があっても乗り越えられるはずなんです」
毎年夏と年末にはライブをおこなっているが、今年は同じく20周年を迎えるアカペラグループのRAG FAIRとの合同で12月19日に記念コンサートが予定されており、7月11日にはINSPi単独でステージへ立つ。タイトルは『アカペラ・オン・ザ・ビーチ』。杉田は逗子在住ですぐ近くに海があり、コロナ前には訪れた友人たちに"なんか自分が疲れていたことに気づいたよ"と言われることもあった。
「心が疲れがちな人が多いと思うので、僕らのライブでは海辺でのんびりしている空気感を出せたらということでのオン・ザ・ビーチ。波の音とともに聴きたい唄だったり、そういうアレンジだったり。ライブに来られる人だけでなく、配信で見る人も頭にサングラスを乗せてビーサンを履いてほしい。そういう、はしゃぐことって大事ですよね。どんな苦しい時でも、それによって自分の気持ちを開放できると思うので」
時代性に左右されることなくアカペラという文化を伝えるために活動してきたが、これからはハモりによって人々を救う役割を担うようになるだろう。杉田は「音楽を続けるための動機に恵まれています」と噛み締める。
閉塞的な日々の中で、人とのつながりを求めたいのであればINSPiの音楽をツールとすればいい。楽器がなかった太古の時代から受け継がれたアカペラの中に、人肌のぬくもりが息づいている。
プロフィール
インスピ
今年デビュー20周年を迎えるアカペラグループ。 2005年より日立CMソング「この木なんの木」を担当。昨年12月にはシングル「All right!」をリリース。 メンバーは、吉田圭介、大倉智之、北剛彦、杉田篤史、渡邊崇文、奥村伸二。
公演情報
INSPi 2021 Summer Live アカペラ・オン・ザ・ビーチ
7/11(日)15:00 東京・表参道GROUND
7/11(日)18:00 東京・表参道GROUND
※公演が中止・延期になる可能性がございますので詳細は各公演の公式HPをご確認ください。
インタビュー・文/鈴木健.txt
構成/月刊ローチケ編集部 6月15日号より転載