ザ・シンフォニーホールの夏を彩る、関西フィルの親子定期演奏会が今年も開催される。指揮はもちろん、関西フィル首席指揮者である藤岡幸夫。第9回となる今年の親子定期についてマエストロに聞いた。
――今回は「音楽と物語」というテーマが掲げられていますが、どのように選曲されたのですか
絵本を見るような、イメージのわく曲を選びました。小さい子から大人まで楽しめるコンサートにしたいと思っていますが、とくに小学校高学年生や中学生のみなさんに来てほしいですね。演奏会後半のメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」は高校生にも楽しんでもらえるファンタジーに富んだ作品です。序曲、スケルツォ、間奏曲、夜想曲、結婚行進曲の5曲を演奏しますが、場面場面で音楽のキャラクターが違い、わかりやすいと思います。今回は、新井鴎子さんが書いた音楽台本を使って、語り(空井仁美)を交えての演奏になります。
演奏会前半は、楽器や曲の特徴についてお話しします。オッフェンバックの「天国と地獄」の”カンカン”はCMでも使われたキャッチ―な旋律が現れます。モーツァルトのディヴェルティメントK.136は弦楽器の合奏曲です。カバレフスキーの「道化師」の”ギャロップ”ではピアノも入ります。シベリウスの「フィンランディア」はドラマティックで聴きごたえのある曲です。ロシアに支配され、独立を希望していたフィンランドの話もしようと思っています。ロッシーニの「ウィリアム・テル」序曲も場面場面で音楽が違う作品です。いろんなタイプの音楽を楽しんでいただきたいですね。
――「夏休み自由研究はこれで決まり!!」というサブタイトルもついていますね
コンサートの鑑賞が夏休みの宿題に使えるようにシート(学習帳)のようなものが配られます。そこに感想や曲の解説などが書き込めます。また「真夏の夜の夢」の登場人物の関係図なども載っています。
――今回で9回目の「親子定期演奏会」ですが、手応えはいかがですか?
お客さまが定着してきた頃にコロナ禍になって残念でした。昨年はお客さまがまだそんなに戻ってきていなかったので、今年は戻ってきてほしいですね。
――子どものための演奏会はいろいろありますが、あえて「親子定期演奏会」と名付けた意図はどういうところにありますか?
普段クラシック音楽を聴かない大人にも、クラシック音楽を聴くきっかけとなるような演奏会にしたいと思っています。初めてザ・シンフォニーホールに来る方もいらっしゃると思いますが、クラシック専用ホールにびっくりするでしょうし、あの雰囲気を楽しんでもらいたいですね。夏休みの宿題と言って、子どもをだしにして、大人にもクラシック音楽を体験していただきたいです。そうやって、クラシック音楽の裾野を広げていければと思っています。
――演奏する関西フィルについてお話ししていただけますか?
僕とは24年目のシーズンです。今、日本のオーケストラで24シーズンも続いているのは僕らだけでしょう。彼らはラテン気質のよく歌うオーケストラ。明るくて、元気で、エキサイティングな音を楽しんでいただけると思います。「親子定期」は関西フィルの将来にとっても重要なコンサートなのです。
――藤岡さんがナビゲーターをされているBSテレ東の「エンター・ザ・ミュージック」で関西フィルに馴染みを持っておられる方も多いと思います
「エンター・ザ・ミュージック」は9年目になります。地方のオーケストラが全国放送の番組でレギュラーになるのは初めてのことでした。関西フィルのそれぞれの奏者のファンになってもらいたくって、番組では奏者の名前を積極的に出しているのですが、奏者のファンも増えてきました。
――子ども向けのコンサートで藤岡さんが心がけていることは何ですか?
本気で演奏することですね。相手が子供だからこそ、本気で演奏しなければなりません。関西フィルも絶対に手を抜きません。
――最後にメッセージをお願いいたします
親子で楽しめますから、今までクラシックのコンサートに足を運ばなかった方も、子どもと一緒に、ザ・シンフォニーホールというゴージャスな空間に来て、生のオーケストラを体感してほしいと思います。もちろん、クラシック音楽が好きな方には一層楽しんでいただけると思います。
取材・文/山田治生
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