クラシック

【インタビュー】[7STARS in 王子ホール]LEO(箏) LEO × CLASSIC ~In A Landscape

【インタビュー】[7STARS in 王子ホール]LEO(箏) LEO × CLASSIC ~In A Landscape

LEO(箏)


レコード会社の日本コロムビアが、クラシック音楽フェスの新シリーズ「7STARS(セブン・スターズ)in 王子ホール」を開催。若手新人を紹介するこのシリーズで、箏アーティストLEOのコンサートが決定した。和楽器というジャンルを超えて、さまざまな挑戦を果たしているLEOに、箏への想いやステージへの意気込みなど話を聞いた。


 箏アーティストとして活動されているLEOさんですが、箏を始められたきっかけは?

僕は高校まで一貫のインターナショナルスクールに通っていたんですが、小学校4年生と5年生の時にお箏の実習が必修であったんです。音楽の先生はアメリカ人のカーティス・パターソン先生で、アメリカの大学でピアノを習っていて、そこでたまたま出合ったお箏の音に惚れて日本まで来たという方だったんですね。その先生の授業が、僕とお箏の出合いでした。その翌年からは小中学生のコンクールに毎年出場して、それが目標になっていました。中学2年の時にパターソン先生の先生でもある沢井一恵師匠のところに行きまして、そこで音楽の深さに触れて、より楽しくなったんです。中学3年の時に、小中学生のコンクールで優勝して、16歳の時に大人も出場している「くまもと全国邦楽コンクール」でも優勝しました。そこで注目していただいて、デビューできることになりました。


 お箏を仕事にしていこう、というお気持ちはいつごろからあった?

中学3年生の時に初めて、音楽を仕事にしたいと考えて親に相談しました。僕の家はビジネス一家で、音楽家は家族に誰も居ませんでしたし、祖父が20代前半で音楽の道で挫折したという話もあって、反対なのははじめからわかっていました。「芸大に入学したい」と話したとき、承諾を得ることはできたんですが「大学卒業までに音楽で食べていける目途が立っていなければ辞めること」という条件でした。なので、大学在学中の今、このように活動できていることがうれしいですね。


 お箏を始めた頃は、どういうところに惹かれたんでしょうか

小中学校の頃の僕は、すごくシャイでした。インターナショナルスクールに通っていましたが、家では日本語しかしゃべっていなかったので、英語で自分の気持ちを話すのが日本語ほどスムーズじゃなかったんです。でも、楽器というのはやっぱり自分を表現できる。楽器を演奏しているときに自分に注目してくれて、その当時のつたない演奏でも悲しいのか楽しいのかくらいはわかってもらえる。そういう楽器でコミュニケーションが取れることが楽しくなって、のめり込んだんだと思います。もちろん、負けず嫌いな性格もあってですけどね。


 お箏以外の楽器はやらなかったんですか?

お箏の後にも、ピアノやギター、ベース、ドラムといろいろな楽器にチャレンジしました。バンドを組んだこともありましたね。でも、結局お箏に戻ってきました。戻ってきて初めて、自分のアイデンティティとつながったんじゃないかと思います。自分自身がアメリカ人と日本人のハーフなので、アイデンティティについて考えることはよくありました。その中でも、僕はハーフだけれども日本人的なところを主張したかったんだと思います。自分の性格と、日本の芸術、音楽の表現方法がマッチしていて、感性に響いたんです。


 LEOさんの感性に響いた、お箏の魅力ってなんでしょうか

お箏で言うならば、儚い音色ですね。一度弾いたら、減衰していってしまうだけなんです。ペダルで伸ばしたり、バイオリンのように弓で弾き返して伸ばしたりはできません。すごく余韻が短い楽器で、音もそんなに大きくないんです。でも、その余韻をすごく大事にしていて、古典の技術の中にはその余韻を大切にする技術がたくさんあるんです。譜面には書いていなくても、口伝ですごく細かく伝わっている指示がたくさんあって奥が深い。音を出し終わった、すぐに消えていく音になんでこんなにも執着するのだろうか……花びらが散っていく瞬間が美しいんじゃないか、そういう儚さに共感しています。


 消えていく儚さに力を注ぐ、というのはすごく日本的な印象がありますね。古典的な奏法を学ぶ一方で、いろいろな楽器とのコラボ新しいチャレンジもたくさんされています。そういう挑戦はどのように感じていますか

いろいろな楽器とコラボすることがあるんですが、弾く前はお箏とはなかなか馴染まないんじゃないか、という想いもあったんです。お箏ではなく、別の楽器で演奏したほうが音楽としては良いものになるんじゃないか、と勝手に思っていたんですね。例えばピアノとだったら、ピアノの方が音が大きくて豊かな響きがあって共鳴しているスケールがお箏よりも大きいので、その豊かさにお箏の音色が吸い込まれてしまうんじゃないか、と。でも、実際に演奏してみたら、全然そんなことは無かった。お箏にはピアノのような雄大さはなくても、音色に魂がこもっていると僕は思っているんです。シンプルな構造だからこそ、爪で弾くスピードや角度、力み具合、それだけにかかっている。音を出した後の余韻にはいろいろあるんですが、音を出すという部分に関しては本当にそれくらいしか要素がない。それを無限に研究してやっているわけですから、魂の込め方が違うように感じているんですね。その音さえちゃんと伝われば、どんな楽器の中でもお箏の音色は負けない。そう思えたら、洋楽器とのコラボも怖くなくなりました。それは、ここ最近の挑戦から気づいたことですね。


 3月24日にリリースしたアルバム「In A Landscape」についてもお聞きしたいと思います。こちらはどのようなアルバムですか

ひと言でいうなら、いろいろなクラシックの楽曲をお箏で演奏したアルバムですね。日本の音楽と西洋の音楽とでは、違う美徳があって、何をよしとするかが違うように思うんです。西洋の音楽は、人工的というか、完璧できれいに整えられた美しさが求められていて、日本の音楽は、自然にあるそのものの美しさを求めているように感じています。たとえ、歪であっても、雑味があっても、それぞ全部含めて美しい。そういう違いを踏まえて、そういう2つの感性がどういうふうに混ざり合っていくかというのが、僕の中のテーマでした。


 実際に収録してみて、どのような難しさがありましたか

まず、単純に演奏的に難しいんですよ。普通のお箏は弦が13本しかありませんから、その中で音を作っていかなければなりません。1曲目の「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番より アルマンド(J.S.バッハ)」は25絃のお箏なんですが、臨時記号がたくさん出てくるので普通の音階じゃない音がたくさん出てくる。それを全部つくらなければいけないので、単純にそれが大変でした。めちゃめちゃ難しかった。


 そもそも和楽器の音階は少ないですから、大変ですよね。まず、そういう技術的な壁があった

そうなんです。そして、自分の楽器のために書かれていない曲を演奏するとなった時には、その楽器の良さを出してあげるということを演奏者側が考えなければいけなくなるんです。ピアノ曲であれば、作曲者はピアノの良さが出るように作曲しているわけですから、本来、奏者はそこを考えなくてもいいんです。どうしたらお箏の楽器の良さを、楽曲の良さを崩さずに出していくのか、というのが一番の考えどころでした。だから、楽曲によってもアプローチはぜんぜん違いますね。大学に入って古典の勉強もたくさんしてきましたけど、そこで培ってきた知識を応用している感覚でした。昔の人々はどのような想いでお箏を弾いていたのか、何を考えながら聴いていたのか、そういうところに想いを馳せましたね。


 学んだ知識や挑戦で得た感性を活かした、まさに今の感性で作ったアルバムなんですね

僕の中では、古典を伸ばせばその逆にある新しいものも伸びるし、新しいものを伸ばせば、古典も伸びてくる。そんな感覚になりました。



 「7STARS in 王子ホール」というフェス企画で、5月22日に「LEO × CLASSIC ~In A Landscape」と題したステージを行いますが、こちらはどんなステージになりそうですか

今回のステージはアルバムのテーマに沿ってお届けするんですが、アルバムで表現したかったことはすごく壮大で、まだ表現しきれていない部分や、これから気付く部分もあると思っています。生だからこそ伝わる微細なニュアンスってお箏にはあって、逆に生だからこそあるエラーもあるんです。楽器がすごくシンプルな構造であるゆえ、音がビリついたり、チューニングがずれたりする。それを耳で直しながら演奏しているんです。日本の音楽としては、それも美しさのひとつであると思っています。同じ音を連打して、それがちょっと低くなっていくところにも、感情の揺れのように聞こえてきますし、それを全部味方につけるじゃないですけど、そういう生ならではの良さを感じていただきたいですね。それは、CDには絶対出てこない部分があるので。


 演奏されているときは、どういうお気持ちでいらっしゃるんですか

どういう気持ちで弾いているんだろう……? コンサートではトークもするので、その時はちゃんと現実世界に戻ってくるんですけど……やっぱり、楽曲のことを考えていますね。楽器の状態も演奏しているうちに刻々と変化していくので、楽器の状態のことも考えています。リハーサルと違って、本番は人が入ったことで響き方も変わるので、その響きを感じたり。僕の中では、音を空間に置くようなイメージなので、なるべくその空間全体を感じるようにしているんですよ。バイパスをオープンにして、演奏しているので、お客さんのことも感じていますね。


 いろいろと忙しい日々を過ごしていらっしゃると思いますが、オフの時間にやる趣味などはありますか?

趣味は、音楽!……っていうのはズルいですね(笑)。仕事と境目がわからないから。でも、自分がやっているジャンル以外の、いろんなジャンルの音楽を聴きますよ。今日は電車でジャスティン・ビーバーを聴いていましたし、ティグラン・ハマシアンっていうジャズ・プレイヤーもすごく好きですね。坂本龍一さんを聴くこともあったり、めちゃくちゃクラシックを聴く日もあったり。本当にいろいろです。


 音楽以外の趣味を挙げるなら?

音楽以外だと、ファッションと料理。ファッションはデザイナーさんが、社会のことなどいろんなメッセージをデザインに込めているということに気付いた時にすごく感動したんです。洋服の組み合わせも楽しいですし、舞台衣装も基本的に自分で用意しています。料理は大学からひとり暮らしを始めて、その時は普通の自炊でした。コロナ禍があってから、時間がたくさんあるので、スパイスからカレーを作ったり、イタリアンのソフリットを作ったり。作っている時間が楽しいんですよね。料理って同時進行でいろいろやるので料理のことで頭がいっぱいなんですけど、それが無心に近い。それがリラックスタイムなんです。


 お箏の衣装も自分で用意されているとのことですが、どういうところにこだわっていますか?

足袋のブーツなど、ちょっと和のエッセンスを入れたいな、という意識はあります。あと、細身ではなくてゆったりめのシルエットを着ていますね。お箏の演奏っていろいろな動きをするんです。弾いたり押したり、擦ったり叩いたりもします。そのいろいろな手の動きが、ゆったりした服だと生地が揺れて、よりきれいに見えるんですね。もちろん着物で演奏するときはその洗練された動きがきれいに見えるのですが、洋服のときもよりよく見えるシルエットのものを選ぶようにしています。


 演奏そのものだけではなくて、トータルのプロデュース力を感じます。今後挑戦したいことは?

最近は、オーケストラの中で演奏できることにすごく喜びを感じています。お箏のコンチェルトの曲はすごく少ないんんですが、コンチェルトのソリストとして呼んでいただける実力をつけたい。そして、呼んでいただいた時のために、レパートリーを作っていきたいです。そして可能性を広げるために、いろいろなコラボもしていきたいですね。今後はピアノとのリサイタルも予定されていますし、その中でいろいろな発見をしていきたいです。もちろん、古典の勉強も続けていって、古典も新しいものも両方、学び続けていくのが一生の目標ですね。


 最後に、コンサートを楽しみにされている方に、メッセージをお願いします!

聴いたことのあるクラシックの曲もありますし、これぞお箏という曲も用意しています。古典的な曲からすごくスケールの大きな曲まで、古いところも新しいところも全部を聴いていただけるコンサートになっています。だから、きっとどこか引っかかってくるところがあるんじゃないかと思います。そして、お箏の音楽、日本の音楽は、日本人の感性がもとになっていて、それはDNAレベルで染みついているものだと思うんですね。きっと誰しもそれを持っていると思うので、そこに懐かしさだったり、共感していただいたりして、曲をお楽しみいただければと思います。


楽しみにしています! 本日はありがとうございました。


インタビュー・文/宮崎新之




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