ロシオ・モリーナ
1984年、スペイン・マラガ生まれ。3歳から踊りを始める。2001年にマリア・パヘス舞踊団へ入団し、世界各地で活躍。2002年、マドリッド王立舞踊高等学校を卒業。2005年、ビトリア中央劇場にて処女作『Entre Paredes(壁の間)』を発表。翌年以降も次々と精力的に新作を発表し、ヨーロッパ・北米など各地で好評を博す。
2010年には、26歳という若さで、「自由な発想による多彩な表現力」を評価され、スペイン芸術界でもっとも栄誉ある「Premio Nacional de Danza 2010(スペイン国家舞踊賞)」を受賞。
伝統的なフラメンコを尊重しつつ、映画や哲学、文学といった他ジャンルの影響を受けて作り出される作品は、挑戦的な振り付けと高度なテクニックを駆使しており、世界各国を魅了し続ける。常に実験と挑戦を続ける、若手最高峰の舞踊家である。
ロシオ・モリーナの登場は衝撃的だった。どんなジャンルでもスターが生まれにくい時代に、突然現れた二十歳そこそこの小柄な女の子は、抜群の身体能力と卓越したそのテクニック、生まれ持ったカリスマ性で観客を圧倒した。26歳の若さでスペイン国家舞踊賞を受賞。これまでに十を超える話題作、問題作を世に送り出してきた。彼女の一挙一動は常に注目の的だ。2016年に初演された『カイーダ・デル・シエロ』は、「この作品の力は私の卵巣、子宮から生まれた」とロシオが語るように、今までの作品以上に、女性であること、を意識したものとなっている。伝統的なフラメンコやスペイン舞踊をきちんと学んだ人だが、伝統の枠にとらわれることなく、演劇やコンテンポラリーダンスなど、様々な要素を取り入れて、自由な発想でロシオ・モリーナならではの世界を描き出していく。驚きと感動、そしてユーモア。ロシオを見ることなくして、フラメンコの今は語れない。勇敢で力強く、前を向いて歩き続けるロシオの世界を間近に感じてほしい。(フラメンコ研究家 志風 恭子)