恐竜絵画の歴史をたどる 古生物、アート、歴史ファン必見
遙か昔の地球を支配していた、数々の恐竜たちの姿を、いま実際に見ることはできません。しかし私たちは、過去に絶滅した恐竜が歩いたり食べたりする様子を思い浮かべることができます。それは、化石に基づいて描かれた「復元」、すなわち絵画や彫刻があるからです。「恐竜図鑑-失われた世界の想像/創造」展は、そうした復元図に焦点をあてた展覧会です。
R・ファレン《ジュラ紀の海の生き物―ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)》1850年頃
© 2023. Sedgwick Museum of Earth Sciences, University of Cambridge. Reproduced with permission
太古を生きた動物たちが確かにいた、と考えた19世紀の学者や画家・彫刻家は、少ない手がかりから、彼らの姿を想像しました。そのためには、古生物学の知識だけでなく、現在生きている動物たちの観察から得られる解剖学的な要素も欠かせません。この展覧会では、初期の復元画から、チャールズ・ナイトやズデニェク・ブリアンらによる古典的恐竜像の確立、日本における受容、20世紀後半の科学的知見によるイメージの刷新まで、4章に分けて、恐竜のイメージの変遷をたどります。
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ベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズ《水晶宮のイグアノドン》1853年頃 ロンドン自然史博物館
© The Trustees of the Natural History Museum, London
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C・R・ナイト《ドリプトサウルス(飛び跳ねるラエラプス)》1897年 アメリカ自然史博物館、ニューヨーク
Image #100205624, American Museum of Natural History Library.
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Z・ブリアン《タルボサウルス・バタール》1970年 モラヴィア博物館、ブルノ
© Jiri Hochman - www.zdenekburian.com and Fornuft s.r.o. / Moravian Museum, Brno
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マイケル・ターシック《ダスプレトサウルス・トロスス》1993年 インディアナポリス子供博物館(ランツェンドルフ・コレクション)© Michael Trcic
この展覧会の企画協力者である小田隆氏(画家・イラストレーター・京都精華大学教授)は、生物としてのリアリティを持たせるために、骨格から描き始めます。科学的な復元を行うには、研究者と重ねる議論が重要です。たとえば「丹波竜」の復元画(本展出品作)を描くのに古生物学者と交わしたメールの数は、往復100通を超えるといいます。通称「丹波竜」は、小田氏と二人三脚で復元を続けた故・三枝春生氏(兵庫県立人と自然の博物館主任研究員/当時)によって「タンバティタニス・アミキティアエ」として記載され、新属新種の恐竜であることが分かりました。新しく見つかった恐竜の場合、その姿を世界で最初に見ることができるのは、古生物の復元において最もおもしろいことの一つ、と小田氏は語ります。
古生物学者と芸術家が協力して生み出した復元イメージは、両者の真剣なコラボレーションによるもので、たとえ、新たな事実が明らかになったあとも、その想像/創造の価値が下がることはありません。またそれらは、古生物の発展を物語る資料であるとともに、貴重な芸術作品でもあります。19世紀前半から現代にいたるまで、およそ200年にわたる失われた世界の追求を、ご一緒にたどってみてはいかがでしょうか。
第1章、第2章、第4章では写真撮影が可能な作品も多数あります。恐竜への熱い思いを投稿した10人がSNS恐竜図鑑大賞に選ばれるとのこと。恐竜図鑑展を鑑賞した“恐竜ファン”の投稿を見て反芻するのも楽しいですね。