イベント

【記事】特別展 恐竜図鑑 ー失われた世界の想像/創造

【記事】特別展 恐竜図鑑 ー失われた世界

幼い頃に楽しみにめくった“恐竜図鑑”のような展覧会を

2023/3/4(土)~5/14(日)まで兵庫県立美術館にて特別展「恐竜図鑑ー失われた世界の想像/創造」が開催される。
本展は、これまで美術館で取り上げられる機会があまりなかった恐竜に着目し、パレオアート(古生物美術)の名作や珍品を「恐竜誕生ー黎明期の奇妙な怪物たち」、「古典的恐竜像の確立と大衆化」、「日本の恐竜受容史」、「科学的知見によるイメージの再構築」という4つの章で紹介する。
本展開催を前に兵庫県立美術館 学芸員 岡本弘毅氏に話を聞いた。




■美術館で「恐竜」は縁が遠いものでした。

幼い頃、夢中になって見ていた「絵」は図鑑だった、というところから本展を企画しました。
多くの人にとって、「美術」に親しむ前、最初に出会う「絵」は、絵本や図鑑に載っている「絵」ではないでしょうか。子供のころから図鑑で絵に親しんでいる、そういう経験を美術展として企画しても面白いんじゃないかと思いました。
今はもう滅びてしまった恐竜のイメージはすべて絵なので、子供の頃に図鑑で見ていた絵を集めた展覧会をやっても面白いんじゃないかと。

恐竜展は、夏休みなどの大型連休に一大イベントとして、化石など理系の自然科学系博物館でやるものであり、美術館では恐竜は縁が遠いものでした。

コロナや紛争など様々な世界事情があり、運輸コストも上がるなど、絵を集められないかもしれないという状況もありましたが、絵を借りられる予定も目途が立ち、開催にこぎ着けることが出来ました。


■各章の見どころ

第1章:恐竜誕生ー黎明期の奇妙な怪物たち



恐竜が“発見”されたのは19世紀前半のことです。それまでも化石は人々の目に触れていましたが正体不明でした。

自然科学が発達した結果、巨大な未知の生物の骨ということが分かり、恐竜という概念が生まれました。当初の数少ない骨を元にかんがえられた恐竜の絵を中心に展示いたします。
また、この章では、恐竜のイメージが形成される下地あるいは副産物として、近世から近代にかけて出版された博物誌の書籍や美術作品に登場する幻獣や怪物のイメージを紹介します。

第2章:古典的恐竜像の確立と大衆化



19世紀後半にベルギーの炭鉱で、イグアノドンという恐竜の骨がたくさん見つかりました。それにより、リアルにどんな姿をしていたのか研究が進みました。アメリカでも恐竜の骨が出てきて、恐竜のイメージがもっとはっきり確立されていきます。アメリカで活躍したチャールズ・R・ナイトとチェコで活躍したズデニェク・ブリアン。二人の卓越した画家の作品を中心に、20世紀に大きな発展を遂げた古生物画の代表的な作例を紹介します。

第3章:日本の恐竜受容史



日本でどう扱われてきたかということをまとめて紹介いたします。本展では、国内有数の恐竜アイテムの収集家であるジャズピアニストの田村博氏のコレクションによって、明治から昭和にかけて我が国の文化史に登場する様々な恐竜を紹介します。
古生物学者・横山又次郎による、英語の「Dinosaur」、直訳すると“恐ろしいトカゲ”に「恐竜」と名付けた書籍や、初期の絵などと、恐竜が一般的な美術、いわゆるファインアートの領域でもしばしば象徴的なモチーフとして登場した作品を展示いたします。

第4章:科学的知見によるイメージの再構築



60年代から70年代に恐竜ルネサンスとして、研究が進んで、蛇やトカゲといった爬虫類とは違って、哺乳類や鳥類に近い恒温動物だという考えが提唱されて、機敏に動き回るイメージに変わっていきます。
19世紀の初めから、200年間で恐竜がどのように姿を変えてきたか。実際に恐竜はなにも変わっていないが、人間の頭の中がどのように変わってきたのかを追う展覧会となります。


■時代毎の恐竜の姿を通じて、人々のイマジネーションを感じてもらえれば

「恐竜」というコンテンツは、今まで美術館では扱わず、博物館の領域として扱われてきましたが、今回は科学ではなく、美術館でアートとして、絵画として取り扱ってみたらどうなるかという楽しみがあります。科学の進歩とともによって恐竜の姿は変わっています。博物館で展示されるのは、最新の恐竜の研究結果の姿が出ていますが、知識や科学が発展していない過去の姿はあまり出ません。でも、過去の姿も間違いではなく、数少ない素材を元に、当時の人が想像力を羽ばたかせて恐竜の世界を作っています。そういった流れを、タイトルの“想像・創造”に込めたのですが、時代時代に恐竜がどのように取り扱われてきたか、歴史を追うことが出来る展覧会にもなると思います。時代毎の恐竜の姿を通じて、人々のイマジネーションを感じてもらえればと思います。


【記事】特別展 恐竜図鑑 ー失われた世界
【記事】特別展 恐竜図鑑 ー失われた世界の想像/創造