『日本書紀』成立1300年記念 特別展「出雲と大和」

日本国最古の正史『日本書紀』から圧倒的な数の青銅器、謎多き最古の石仏まで日本古代史料らが展示

特別展「出雲と大和」 特別展「出雲と大和」が3/8(日)まで東京国立博物館平和館にて行われる

 

東京国立博物館平成館(東京・上野)で特別展「出雲と大和」が開催中です。

日本最古の歴史書のひとつ『日本書紀』が編纂(=へんさん 色々な材料を集め、整理・加筆などして書物にまとめること)された年から、2020年(令和2年)で1,300年を迎えます。それを記念し、本展は祭祀と政治を象徴する地、島根県(出雲)と奈良県(大和)の共同開催で行われる展覧会です。東京国立博物館が2020年の令和になって初めて迎える同特別展では、古代日本の成立やその特質に迫ります。

 

 

『日本書紀』とは?

神代から持統天皇11年(697)までを記した歴史書。舎人親王(676~735)が中心となって編纂し、養老4年(720)、元正天皇へ奏上されました。全30巻で、巻一・巻二は神代、巻三の神武天皇から巻三十の持統天皇までは編年体でまとめられています。

『日本書紀』の写本は、古本系統と卜部家本系統に分類されてきました。和銅5年(712)編纂の歴史書『古事記』よりもたくさんの記事が収められ、現代までさまざまな視点から研究が続けられてきています。

 

『日本書紀』の冒頭に記された国譲(くにゆずり)神話によると、出雲大社に鎮座する神様のオオクニヌシは「幽(ゆう)」、すなわち人間の能力を超えた世界であり、神々や祭祀の世界を司ると記されています。

一方で天皇は、大和の地において「顕(けん)」、すなわち目に見える現実世界や、政治の世界を司るとされています。古代において出雲と大和はそれぞれ「幽」と「顕」を象徴する場所として、重要な役割を担っていたということがわかります。

本展は4章構成で、「幽」を象徴する出雲大社から、「顕」を築いた大和の名宝の数々までが展開されていきます。

巨大本殿「出雲大社」と伝来の神宝が展示

 

特別展「出雲と大和」 模型 出雲大社本殿<平成11年(1999)島根・出雲市 所蔵>
模型は10分1スケールにもかかわらず、その巨大さは目を見張ります

 

特別展「出雲と大和」 重要文化財 宇豆柱<鎌倉時代・宝治2年(1248)島根・出雲大社 所蔵(島根県立古代出雲歴史博物館保管)>
鎌倉時代に遷宮された出雲大社本殿の柱材と考えられる柱のひとつ。表面を削った痕跡などが残っています

 

前述した「幽」の世界を司るオオクニヌシをまつる出雲大社は、古代には48メートルもの高さを誇っていたと言われています。

第1章では鎌倉時代に本殿を支えた巨大な柱「心御柱(しんのみはしら)」や「宇豆柱(うづばしら)」をはじめ、当時の設計図とされている「金輪御造営差図」や「口遊」などを参考に作られた復元模型(10/1スケール)とともに、出雲に伝来するご神宝の数々が紹介されています。

また、入口付近には本展の開催起因となった『日本書紀』をみることができます。前期(1/15(水)~2/9(日)まで)は卜部兼夏写の「神代巻(乾元本)下」を、後期(2/11(火・祝)~3/8(日)まで)は愛知・熱田神宮所蔵の「日本書紀 巻二」が展示されています。

出雲 古代祭祀の源流を探る

 

特別展「出雲と大和」 国宝 銅鐸<弥生時代(前2~前1世紀)文化庁 所蔵(島根県立古代出雲歴史博物館保管)>

 

古代から出雲は、日本海を通して他国との交流があり、独自の文化へと形を作っていきました。弥生時代には銅鐸など青銅器を用いた祭祀が盛んに行われていましたが、弥生時代後期になると、ほかの地域に先駆けて青銅祭祀をやめ、新たに巨大な墳墓を舞台とした祭祀へと移り変わっていきます。

第2章では、弥生時代の祭祀に用いられた品々の移り変わりを通して、出雲における古代祭祀の源流を探ります。

 

特別展「出雲と大和」 模型 加茂岩倉遺跡銅鐸埋納状況復元<令和元年(2019)島根県立古代出雲歴史博物館 所蔵>
こちらは写真撮影OK。他章に撮影可能作品がもう1ヶ所あります

 

こちらでは、国宝「荒神谷遺跡出土青銅器(銅剣・銅鐸・銅矛)」から計189点、国宝「加茂岩倉遺跡出土銅鐸」内30個もの銅鐸が展示されています。これだけの数が東京で出展されるのはおよそ20年ぶりなのだそうです。

なお、第2章エリア内で唯一、「模型 加茂岩倉遺跡 銅鐸埋納状況復元」は、写真撮影が可能となっています。ただし、フラッシュ撮影や動画、自撮り棒や三脚、望遠レンズでの撮影はご遠慮ください。

大和 王権誕生の地にて王権成立の背景に迫る

 

特別展「出雲と大和」 重要文化財 円筒埴輪<古墳時代(4世紀)奈良県立橿原考古学研究所附属博物館 所蔵>
古墳・前方後円墳の上に並べられた高さ約2.5メートルもある世界最大の円筒埴輪

 

大和に出現した古墳・前方後円墳は、実は政治権力の象徴であるとともに、王権の儀礼が繰り広げられた舞台でもあります。そのヤマト王権は、百済や高句麗、新羅をはじめとした大陸との交流を通して、様々な文物や技術を獲得。そこで得られた品々を各地方の豪族たちに与えることで、王権の基盤を堅固なものとしていきました。

第3章では、埴輪や副葬品から見る古墳時代の多彩な造形や豊かに展開するさまを辿りつつ、ヤマト王権の成立の背景に迫ります。

 

特別展「出雲と大和」 国宝 七支刀<古墳時代(4世紀)奈良・石上神宮 所蔵>
『日本書紀』に記載されている刀ではないかと古くから提唱されており、当時の東アジア情勢を知る上で一級史料となっています

 

特に注目すべきは、東京国立博物館への出展は約7年ぶりとなる国宝「七支刀」です。刀身の横から枝刃が左右3つと、本体の刀身を合わせて7つの枝のように見える珍しい形状の刀。形状だけではなく、前述でも紹介した日本最古の歴史書である『日本書紀』では、百済の国王から同名の刀が献上されたという記述があります。古墳時代から伝世され、『日本書紀』にも書かれている物が実物で見ることができる唯一無二の一級史料となっています。

仏と政 国家の安泰と人々の安寧を祈り誕生した造形を紹介

 

特別展「出雲と大和」 重要文化財 持国天立像<飛鳥時代(7世紀)奈良・當麻寺 所蔵>

 

古墳時代~飛鳥時代へと移り変わる6世紀半ばには、伝来した仏教など先進的な文明により社会に大きな変化を生じました。その1つとして、古墳が果たしていた政治や権力の象徴としての役割は、寺院が担うようになっていったんだそうです。

飛鳥時代後期には、全国各地で寺院が造られるようになり、朝廷は遣隋使や遣唐使がもたらした最新知識を受け入れながら、新しい国の形を整えていきました。

第4章では仏教を中心とした国づくりについて、また、国の安泰と人々の生活の安寧を祈り誕生した造形について紹介しています。

 

特別展「出雲と大和」 重要文化財 浮彫伝薬師三尊像<飛鳥~奈良時代(7~8世紀)奈良・石位寺 所蔵>

 

こちらでは1300年ものの間、大和の地でひっそりと守り伝えられた石仏・重要文化財「浮彫伝薬師三尊像」が寺外初公開となります。奈良時代以前の石仏は大変珍しく、風化せず現存する日本最古の貴重な石仏が見られます。

 

特別展「出雲と大和」 ミュージアムショップ

 

本展の音声ガイドは俳優の橋爪功さんが担当。古代日本の歴史を物語る宝物や史料の魅力を『日本書紀』の内容にも触れながらわかりやすく解説されています。

特別展「出雲と大和」は東京国立博物館平成館で3/8(日)まで開催中です。

 

 

特別展チケットで鑑賞できる! 併せて観ておきたい東京国立博物館平成館の常設展「考古展示室」

 

特別展「出雲と大和」

 

東京国立博物館で行われている特別展のチケットで、実は、常設展も鑑賞できることをご存知でしょうか? 常設展であれば全施設がご覧いただけます。

今回は、東京国立博物館平成館の常設展「考古展示室」をご紹介! 特別展「出雲と大和」に展示されている作品と同じ時期に作られた銅鐸や埴輪、土偶など全国各地から発掘された品々が展示されています。

 

特別展「出雲と大和」

 

縄文・弥生時代などの出土品や、実物大の土偶や銅鐸などの模型に触れる体験コーナーもあるので、特別展を鑑賞した後に併せて見てみてはいかがでしょうか?

 

 

開催概要

 

日本書紀成立1300年 特別展「出雲と大和」

特別展「出雲と大和」

 

開催期間

2020/01/15(水)~3/8(日)[47日間]

時間

9:30~17:00

※金曜・土曜日は21:00まで開館

※入館は閉館の30分前まで

休館日

月曜日、2/25(火)

※ただし2/24(月・休)は開館

会場

東京国立博物館 平成館(上野公園)

公式ホームページ

https://izumo-yamato2020.jp/ ※外部サイトへ移動します

 

 

(文・写真:工藤明日香/ローソンチケット)

 

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