【インタビュー】宇都宮隆

2025/7/15(火)

有機的な化学変化を楽しみにしてほしい

TM NETWORK40周年イヤーを駆け抜け、日本の音楽シーンに新たな輝きを刻んだヴォーカリスト宇都宮隆が、ライフワークとするソロ・プロジェクトU Mixをアップデートする。2025年9月27日、横浜からスタートする全国ツアー『Takashi Utsunomiya Tour 2025 U Mix #3』では、ボーカル宇都宮隆、バイオリンNAOTO（10月4日公演のみ、加賀谷綾太郎）、キーボードnishi-kenの3人組で、音楽的かつクリエイティブなコンサートを繰り広げていく。

「U Mixを作った時のコンセプトは、オーケストラ＝クラシックと電子音楽の融合でした。そこで、どの楽器を生音にするかと考えた結果、バイオリンに辿り着きました。毎回、音楽的に広がりを感じられることを大事にしています」

U Mixのコンサートは、宇都宮隆ソロ作品はもちろんTM NETWORKの曲などを新たにアレンジメントして演奏されるのが魅力だ。本プロジェクトにおいてアイコンである、NAOTOのバイオリンによってサウンドメイクされる自由度の高いコンサートは、プレイング・プロデューサーである彼にとって大きな刺激になったという。

「U Mixは、可能性の広がりが見えやすいと思います。3人組だし、どんな広がりにもなれる自由さがありますね。とはいえ、自分としても毎回バイオリンなど新たな楽器を練習することもあるので、大変だと思っています(苦笑)。特にクラシック系は生半可ではできないので。それこそ、専門的な先生について何カ月も練習していますからね。でも、サウンドの中心にNAOTO君がいるので安心感は強いんです」

以前、“楽器まで自分の役割に入れるのがU Mix”と話されていたのが印象的だった。まさに新しさへの挑戦を感じられる聴き逃せないポイントだ。さらに気になるのがライブのセットリストだ。

「選曲の基本は、僕のソロ曲をいかにU Mixとしてアレンジしていくか。前回は3人で曲も作ったので、新曲も余裕があればやりたいよねえ。まあ、わからないかな(苦笑)。ツアーの選曲案は、僕からもあるしNAOTO君やnishi-ken君からもあるんです。作品のアレンジをする2人が、この曲は面白そうだねって考えてくれたり。それは僕も楽しみだったりします」

そもそも、主軸のひとつとなるクラシックへの興味は、いつくらいから持っていたのだろうか。

「子どもの頃はそんなに興味がなくって、気になりはじめたのは高校時代にキングクリムゾンやEL&P、イエスなどプログレッシブ・ロックにハマってからかな。その後、数年前にふと本物のクラシックを体験するべきだなと思ったんです。そこで受けた感動がU Mixにはあらわれていますね。なので、U Mixには巡り巡ってプログレの要素もあるんですよ」

U Mixでは、音楽的要素はもちろん、総合芸術的に映像、照明、衣装などもプロデューサー宇都宮隆によるこだわりが詰め込まれている。

「アイディアは考えています。前回、ストリングスが大勢いるんだよということを映像で表現しました。たぶん、それを観た小室（哲哉）がTMのコンサートでも、そんなシーンを取り入れたんじゃないかな(笑)」

U Mixは3人組だが、バイオリンのNAOTO、キーボードnishi-kenは、プロデューサー宇都宮隆にとってどんな存在なのだろうか。

「NAOTO君は、ポップフィールドにおいて、クラシックを背負ってきた方だと思うので、そんなことをU Mixでも担ってもらっています。nishi-ken君は、作曲家、プレイヤーとしても信頼しているし、アレンジが特にすごいよね。そこにNAOTO君が融合することでU Mixになるんです。そんな有機的な化学変化を楽しみにしていてほしいです」