【インタビュー】シド
15周年のグランドファイナルは未来を見せるライブにしたい
ポップなものからハードなものまで多岐に渡る楽曲と、そこに紡がれた珠玉のメロディーで多くの人を魅了してきたシド。2018年に結成15周年を迎えた彼らは、現在、3月まで続くアニバーサリーイヤーを駆け抜けている。バンド初の元日ライブに始まり、5~6月は各日異なったコンセプトを設けたワンマンツアーを開催。さらにはアニメ作品に提供した楽曲をコンパイルしたベスト盤『SID Anime Best2008-2017』や、意外なことにキャリア初となるミニアルバムの発表など、精力的な活動を繰り広げてきた。
今回はバンドを代表してヴォーカルのマオに話を訊いたのだが、9月からスタートした全31公演に及ぶバンド史上最大規模のライブハウスツアー『いちばん好きな場所』については、「普段なかなか行けていなかった場所まで会いに行きたかった」という目的と、もうひとつ、大きな理由があったそうだ。
「今のシドに泥臭さみたいなものがあると、すごくよくなるんじゃないかと思ったんです。ホールでライブをやるときは楽屋が別々になるときもあるけど、ライブハウスの場合は縦長の机がひとつあって、“ここに4人座ってください”とか(笑)。そこに4人で座っていると自然と話すし、ライブ当日だから当然音楽の話になったりして、すごく良い効果があって。そこを狙ったところもあったんですよね。今みたいなすごく良い環境ではなく、結成当時のような、良い意味で足りていない環境でやらせてもらったときに、4人はどうなるのかという。そういう武者修行的なことを15周年の今やることが、バンドを長く続けていくために必要だと思ったし、シドは誰かが“やりたくない”と言ったら納得するまで話し合うバンドなんですけど、そういう話も出なかったから、みんなそれをやりたかったのかなと思いますね」
しかし、なぜ彼らは泥臭さを求めたのだろうか。
「今の時代って簡単に音を足すことができるけど、バンドの立ち位置として、そうじゃないところにいたほうがかっこいいなというのが、4人の中にあったんです。実際に今はライブの音も減らしているんですよ。今までずっと同期を流していた曲も、“この音、いらなくない?”ってギターで補うようになったりしていて。もちろん今後そういうことを一切しないという話ではなくて、“やろうと思えば4人でもやれる”というところを持っているのと持っていないのとでは全然違うじゃないですか。だから、どんな状況でも4人でやれるバンドでありたいと思っていたところはありました」
バンドとしてのタフさを増したシドは、2月に5年ぶりのアジアツアーを開催した後、3月10日にアニバーサリーイヤーを締め括るワンマンライブ『SID 15th Anniversary GRAND FINAL at 横浜アリーナ ~その未来へ~』を開催する。会場である横浜アリーナは、2011年、東日本大震災の影響を受けて予定していた公演を中止せざるを得なくなった経緯がある場所だ。
「次に横浜アリーナでやるときはリベンジだなと思っていたんですけど、なぜか不思議とワンマンをやる機会がなかったんです。会場が取れなかったり、別の場所でやることになったりして。でも、15周年というこのタイミングでできること、しかもそれが3月10日だというのは、なんだか運命的だなと思いました」
横浜アリーナは「これまでを振り返るのではなく、未来を見せるライブにしたい」そうだ。
「もちろん昔の曲もやると思うんですけど、それをただなぞるのではなく、今の一番かっこいい形でやろうと思っています。ただ、自分がシドのファンだったとして、やられたら嫌なことはやらないようにしたい。たとえば、ギターソロって変えてもいい曲と変えちゃダメな曲があるんですよね。そこを(ギターの)Shinjiがちょっとでもイジってきたら、みんなそこを聴きに来てるから変えちゃダメだよって。元々4人ともバンドキッズだから、そういうファン心はわかっているつもりなので、そこは忘れないようにしたいです」
横浜アリーナ以降のこともいろいろと考えているそうで、「遠くを見ながら活動したい」と、シドのこれからについて話してくれた。
「常に2年先、3年先のことを4人で話せるようなバンドでいられれば、ここからすごくいい道を歩いていけると思っていて。なんか、ロックバンドが持っている“いつ解散するかわからない危うさ”みたいなものって、かっこいいなとは思うんです。僕もそういうバンドって好きだったし。でも、シドは心の奥から来る安心感みたいなものをファンのみんなに持ってもらいたいんですよね。“今回のライブ参加できなかった、どうしよう”ではなく、“シドはまたどこかで会えるからな”って思ってもらえるような活動をしていきたいです」
プロフィール
シド
'03年に結成したロックバンド。メンバーはマオ(Vo.)、Shinji(Gu.)、明希(Ba.)、ゆうや(Dr.)。'08年に「モノクロのキス」でメジャーデビュー。
公演情報
SID 15th Anniversary GRAND FINAL at 横浜アリーナ ~その未来へ~
2019/3/10(日)18:00 神奈川・横浜アリーナ
インタビュー・文/山口哲生
構成/月刊ローチケ編集部 1月15日号より転載