【インタビュー】INSPi
2022/5/15(日)
ハモる喜びと向き合うINSPiの真骨頂ライブ
昨年は20周年イヤーということで、同期のRAG FAIRと記念コラボライブを開催するなど、コロナの影響下で模索しつつも実りある一年となったINSPi。デビュー以来、最大級のプロジェクトを終えたあとも燃え尽きた感はなく、その余熱を保ったまま2022年を迎えられたというのが、リーダー・杉田篤史の実感だ。
コラボライブ用の新曲を作るにあたり、杉田はメンバー一人ひとりと改めてコミュニケーションをとり、心に刺さったりインスピレーションを駆り立ててくれたりした言葉を抽出し、歌詞を紡いだ。その経験は、今後にも生かせるものとなった。
「その過程の中で、みんなの素直な心が聞けたのは大きかったですよね。『俺は死ぬまでINSPiをやるぞ!』という意志を、リアルな言葉として聞けたので。じっくりと話を聞くインタビューというものが、今後の表現方法において重要なものになってくる気がしました。夏のツアーでも、メンバーの40数年の人生を掘り下げていって、出てきたものを音楽として皆さんに伝えられたらというのがあります」
愛媛大学の羽鳥剛史准教授とハーモニーが集団にどのような影響を及ぼすかの研究を続け、論文も書いた杉田はインタビューをもとにした音楽作りに価値を見いだしている。それを21年目に突入したINSPiでも生かすのが、自分の役割という認識だ。
夏のツアータイトル「INSPi Café」は、デビュー時に続けていたシリーズ名を復刻させたもの。何度か浮上しては消えながら、今回に関してはメンバーから反対意見は出ず、自然に受け入れられた。これも20年という一つの区切りを迎えたことによる心境の変化なのかもしれない。
「当時のコンセプトが、お客さんとのコミュニケーション、そしてお客さん同士のコミュニケーションだったんです。まさにカフェでお喋りするような、そこで初めて会った人同士が仲良くなったり、いろんな話をしてより相手のことを知ったりする楽しさという意味で、具体的には終演後も会場へとどまっていられるようにDJタイムを設けたりして、コミュニケーションができるような空間を提供しました。ただ、今の状況では難しいので、終演後すぐにお喋りタイムを配信し、皆さんが感想を書き込んで、それを見ながらあれこれ語り合うような形を考えています」
いわばアフタートークのようなもの。ライブを終えた直後のメンバーの気持ちをファンとともに共有できるのは画期的だ。
この2年間は、アカペラグループでありながらハモる時間が減った。日々の中で心の澱(オリ)のようなものが溜まってしまいがちだったが、そこでハーモニーを奏でるとリフレッシュできた。
「自分の心がこう変わるんだというのをハッキリと体験できたんです。やっぱりハモるってすごいことなんだな、自分たちの力であり、生き甲斐になるのは間違いなくハーモニーなんだって感じられたので、今回のツアーは〝ハモる喜び〟をキーワードに、ハモり甲斐のある曲をやりたいと思っています。久々のツアーなので、旅のワクワク感も伝えられると思うし」
その意味ではINSPiの真骨頂的なステージであり、またハモる喜びと改めて向き合うことで原点回帰にもなる。足し算ではなく、ブラッシュアップされた引き算のアカペラが体現されるライブをこの夏、体感していただきたい。
プロフィール
インスピ
2001年メジャーデビューの6人組アカペラグループ。メンバーは写真左から北剛彦、大倉智之、杉田篤史、奥村伸二、吉田圭介、渡邉崇文。
公演情報
INSPi Café 2022夏
- 6/26(日) 14:00 兵庫・神戸煉瓦倉庫 K-wave
- 6/26(日) 17:00 兵庫・神戸煉瓦倉庫 K-wave
- 7/2(土) 14:00 愛知・SPADE BOX
- 7/2(土) 17:00 愛知・SPADE BOX
- 7/3(日) 15:00 東京・表参道GROUND
- 7/3(日) 18:00 東京・表参道GROUND
- 7/9(土) 15:00 宮城・誰も知らない劇場
インタビュー・文/鈴木健.txt
構成/月刊ローチケ編集部 5月15日号より転載