【インタビュー】cero[FUJI ROCK FESTIVAL'21]
2021/8/6(金)
全員が"当事者"であるフジロック、ceroが語る記憶とこれから
ceroといえば、ジャズ、ソウル、ヒップホップ、アフロビートなど、肉感的でグルーヴィな音楽要素を取り込んだエクスペリメンタルな音作りと、文学的な日本語詞とキャッチーなメロディを兼ね備えたボーカルミュージックとして、音楽マニアを中心に絶大な人気を誇る3人組だ。ということは音楽的な寛容度とボーダーレス度の高いFUJI ROCK FESTIVALとの相性がいいのは当然で、2011年のROOKIE A GO-GO出演を皮切りにFIELD OF HEAVENやWHITE STAGEなどで出演を重ね、その都度記憶に残る演奏を繰り広げてきた。そんな懐かしくも楽しいいくつかの思い出を、メンバーはこんなふうに語る。
橋本翼(G) 2011年のROOKIE A GO-GOでは、出番直前に客席のエリア上空でサーカス的な派手なパフォーマンスが行われていて、この後にやるの大丈夫かなと思っていました。
荒内佑(Key,Sampler) 2012年のFIELD OF HEAVENでのことです。その時も炎天下でした。ライブ中に、当時のサポートドラマーである、あだち麗三郎のドラムのネジが緩んできたそうです。演奏しながら、彼がスタッフにジェスチャーで訴えると、飛んで来たスタッフがあだちくんの首をタオルで冷やし出しました。熱中症になったと勘違いしたそうです。シュールな瞬間でした。
ceroのファンと同じく、メンバー自身もステージを下りれば幅広く熱心な音楽ファンの一人。オーディエンスとして体験したライブパフォーマンスにも、記憶に残る名演があるという。
橋本 2012年のWHITE STAGEで見たJames blakeが凄かったです。音の壁を体に受けて気がついたら涙がこぼれてました。2011年のGREEN STAGEで見たYOUR SONG IS GOOD先輩のステージも、バンドの総力結集という感じで最高にグッときました。
そんな3人が、今年もFUJI ROCK FESTIVAL ’21のステージに立つことが決まった。8月22日日曜日、午後12時50分からのステージは、ceroにとって初めての大舞台となるGREEN STAGEだ。昨年は新型コロナ禍のために中止/延期を余儀なくされたFUJI ROCK FESTIVALだが、今年は日本国内アーティスト中心のラインナップで、入念なコロナ感染対策のもと、アルコール禁止など様々な特別ルールが設けられている。そんな例年とは異なる環境の中、FUJI ROCK FESTIVALにおける最大規模のステージで、ceroがどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。期待せずにはいられない。
高城晶平(Vo,G,Flute) 本来、祭りというのは日常の制約を忘れられる場として機能するものだと思うけど、このコロナ禍においてはハレとケの線引きが希薄になっている。ハレの場でも、たくさんの約束事が付きまとうのが現状です。開放と抑制、安全とリスクがアンビバレントに共存する状況というのは、正直、演者にとってもお客さんにとっても複雑なもの。でも、色んな意味で記憶に残る時間になるだろうという確信はあります。僕が言えるのは、全員が起きていることの当事者であるという視点を忘れないでいてほしい、ということぐらいですかね。
荒内 この2年ほどバンドとして、とても良い状態にあります。ですので、ステージの大きさに呑まれず、いつも通りの演奏がお聴かせ出来ればと思います。
続けて「ほかに見てみたいアーティストはいますか?」とたずねたところ、返ってきたのは意外な答え。FUJI ROCK FESTIVALに集うのは音楽アーティストだけではなく、様々なワークショップやトークショーに出演するジャーナリストや文化人も含まれる。少し足を延ばせば未知の知的体験のスリルが待ち構える、FUJI ROCK FESTIVALはそうした出会いの場所であるとも言える。
高城 自分の出演日だったら斎藤幸平(経済思想家)さんのトークが聞いてみたい。ちょうどNHKテキスト「100分de名著・資本論」を読んでたので。別日だったら坂本慎太郎さんのライブ。
GYPSY AVALONで開催される「アトミック・カフェ トーク 津田大介・斎藤幸平」のステージはceroの出演時間とかぶっているので、残念ながら見られないとは思うが、バンドの興味の広がりを感じさせる興味深いエピソードだ。そんな多様な楽しみに満ちたFUJI ROCK FESTIVALへの存在は、ceroにとってどういうものか?という問いかけには、ユーモアあふれる答えを返してくれた。
高城 定期的にバンドに与えられるご褒美の打ち上げみたいな…。
ceroは現在新曲制作の真っ最中で、新しい音がどんどん生まれているという。8月6日に配信リリースされた「Nemesis」もその一つで、ceroの音楽がこれからどこへ向かうのかを指し示す、指針のような曲になっているはずだ。
高城 現在、ceroでマンションの一室を作業部屋として借り、定期的に集まって共同で曲を作っています。良い楽曲が出来たらシングルとしてリリースし、曲数が溜まったらアルバムにしたく思っています。(配信リリースされる)「Nemesis」は、みんなで作業できる場を借りたことによって、誰が作ったともいえない曲がフワーッと出来ました。なので未だに自分たちの曲という感じが全然しません。そんな曲です。
特別な状況だからこそ、生まれる音楽体験がある。間違いなく後年に語り継がれる3日間になるだろうFUJI ROCK FESTIVAL '21と、ceroのパフォーマンスに注目してほしい。
プロフィール
セロ
2004年結成。メンバーは高城晶平、荒内佑、橋本翼の3人。3人それぞれが作曲、アレンジ、プロデュースを手がけ、サポートメンバーを加えた編成でのライブ、楽曲制作においてコンダクトを執っている。8/6(金)に「Nemesis」を配信リリース。
公演情報
FUJI ROCK FESTIVAL'21
- 8/20(金)~22(日) 新潟・苗場スキー場
- ★ceroは8/22(日)GREEN STAGEに出演
国内最大級の野外ロックフェス「フジロックフェスティバル '21」開催!
今年は海外からのアーティストの出演はなく、国内アーティストのみが出演する「特別なフジロック」。
注目のヘッドライナーは、初日8/20(金)がRADWIMPS、8/21(土)はKing Gnu、そして最終日8/22(日)は電気グルーヴ!
他にもmillennium parade、METAFIVE(高橋幸宏×小山田圭吾×砂原良徳×TOWA TEI×ゴンドウトモヒコ×LEO今井)、CORNELIUS、NUMBER GIRL、平沢進+会人(EJIN)、秋山黄色など、豪華アーティストが出演!
- ※コロナ感染症影響によっては、公演が中止・延期になる可能性がございます。詳細は公式HPをご確認ください。
- [FUJI ROCK FESTIVAL'21 公式HP]https://www.fujirockfestival.com/
リリース情報
Digital Single『Nemesis』(KAKU-139)
- 2021/8/6(木) Release
- Label: KAKUBARHYTHM
インタビュー・文/宮本英夫