【インタビュー】Awesome City Club[FUJI ROCK FESTIVAL'21]
何年後かに伝説になる3日間になるかもしれない
Awesome City Clubがフジロックフェスティバルに初出演したのは、2018年のこと。今や「勿忘」(映画『花束みたいな恋をした』インスパイアソング)がYouTube再生回数一億回を超える彼らも、当時はまだ“知る人ぞ知る”存在。明日のブレイクを夢見る若いバンドの一つだった。
モリシー デビュー前の2014年にメンバーと一緒に見に行ったのが、生まれて初めてのフジロック。グリーンステージのアーケイド・ファイアとか、大好きな海外アーティストが出ていてテンション上がりました。自分たちが出た時は意外に冷静だったんですけど、違う高揚感はありましたね。
PORIN デビュー当時はROOKIE A GO-GOを狙っていて、2回応募して2回落ちました(笑)。フジロックとは縁がないかもなと思っていたところに、お話をいただいたので、本当にうれしくて、決まった瞬間に親に電話しちゃいました。RED MARQUEEは憧れのステージで、本当にうれしかったです。
atagi 当日はわりと地に足がついていて、もっと舞い上がるのかな? と思ったらそんなこともなく、楽しくやれた記憶があります。RED MARQUEEは日本人っぽい音楽が似合うステージだなと思ったし、逆にグリーンは、日本人でも外国人でも、飛びぬけた人だけが許される場所というイメージがあって。音楽をやっている側として、フジロックのステージにはそれぞれ聖域というか、立ち入ることを許される場所というものがあるなと感じています。
あれから3年、劇的な成長を遂げたAwesome City Clubがフジロックに還ってくる。転機となった「勿忘」の大ヒットは、バンドにどんな変化を与えたのだろう?
atagi 得たものはいろいろあるんですけど、一番実感しているのは“もう少し音楽を続けられるな”という安心感ですね。商業音楽の世界にいる者として、少し気が楽になる出来事ではありました。ただ僕にとっては、それ以上でも以下でもないというか、それによって僕の性格やキャリアが大きく変わることはなかったです。基本的に心配性で、浮かれ下手なので(笑)。
PORIN 私も、安心感が一番大きいです。バンドを続けてきてよかったと思ったし、その姿を見せることで、少しでもみんなの希望になれたんじゃないかなと思いますね。
モリシー 周りの人たちも何も変わらず接してくれるし“売れたね”とか、変なおだて方はまったくされない。困ったことと言えば、去年の12月から始めたコーヒースタンドが、忙しくて開けないことぐらいで(笑)。何も変わらずに生活しています。
そんな彼らの新曲「またたき」が、絶賛配信リリース中。せつなくドラマチックな「勿忘」のイメージを受け継ぎつつ、これまでなかったテーマに取り組んだ意欲作だ。
atagi 僕たちのような男女ボーカルは、恋愛のストーリーを描きやすいし、ここ1,2年は過去の思い出をモチーフにしたせつない曲が多くなっていたんですけど、そこから抜け出すチャレンジをしてもいいのかなと。男女の恋愛よりももう少し大きい愛情を表現してみたいと思って作ったのが「またたき」です。フジロックでも、幅広い世代の方がいらっしゃって楽しんでいますよね。その方達それぞれが感じることができる大きな愛について書いた曲ですね。
PORIN まだ見ぬ未来を思って書いたんですけど、自分にも当てはまるんですよね。今こうやって、「勿忘」のおかげで輝くことができている自分がいるということを、ちょっと前の自分に知らせてあげたいなという思いも入っているので、バンドとしての歌にもなっていると思います。
モリシー 自分のバンドがこういう曲をやるなんて、大人になったんだなと思いますね。その気持ちに寄り添うようにギターを弾いたので、今の我々を体現している曲だと思います。苗場の広い空の下でやったら、すごく気持ち良さそうですね。
今年のフジロックフェスティバルは、邦楽アーティストのみの特別仕様。エンタテインメントの危機が叫ばれる今だからこそ、唇に歌を持て、心に太陽を持て。広い空の下で演奏する彼らの姿を、ぜひ現地で目撃してほしい。
モリシー 3年もたてば、少しは大人になっていますから(笑)。ただただ大きく見せたいです。メンタルが大事なので、ステージに負けないように頑張ります。
PORIN フジロックの森と共存しつつ、その日のテンション感に合わせながらも、自分たちの世界に引き込んでいきたいなと思います。“3日間見たけど、オーサム良かったね”と言われるようなライブを目指したいなと思います。
atagi フジロックにとって覚悟を問われる年であり、逆に僕らがフジロックに問われているような気もするんです。たぶんお客さんも一緒で、今年しか生まれない空気感や団結力を持って、音楽を愛する者たちの素晴らしい光景を作りたいです。何年後かに伝説になる3日間になるかもしれない、その1日を担う者として、何かを残したいと思っています。
プロフィール
オーサム・シティー・クラブ
2013年東京にて結成。POPS/ロック/ソウル/R&B/ダンスミュージック等、メンバー自身の幅広いルーツをMIXした音楽性を持つ、男女ツインヴォーカルの3人グループ。
公演情報
FUJI ROCK FESTIVAL'21
8/20(金)~8/22(日) 新潟県 湯沢町 苗場スキー場
★Awesome City Clubは8/22(日)出演
インタビュー・文/宮本英夫