【インタビュー】クレイジーケンバンド
ライブはお客さんと音で密着できる唯一の機会
一昨年は結成20周年、昨年はデビュー20周年、今年はダブルジョイ・インターナショナル発足10周年。アニバーサリー続きのクレイジーケンバンド(以下CKB)が1年ぶりの新作『PACIFIC』を8/7(水)に発売する。今回も16曲18トラック(ジングル×2とリミックスを含む)の大ボリュームだ。
「毎回12~13曲でスッキリ、というのが目標で、頑張って減らすんですけど、なかなか減らなくて、19~20トラック以上になっちゃうんですね。今回も曲はこれ以上減らせないから、ジングルを2トラックに減らして、18トラックという奇跡の少なさになりました」
と、毎度のこととはいえ舌を巻くクリエイティビティ。取材の時点で聴けたのは1曲だけだが、「KARAOKE International」「北京」「風洞実験」「エルヴィス顔のタイムトラベラー」「南国列車」などなど、見るだけで想像力を刺激されるタイトルが並んでいる。
「コンセプト立てをしてから曲を作ることは絶対にないんですね。これはもう始まって以来。考えるより先にポップコーンが弾けるみたいに曲が浮かんできちゃうんで、とにかく片っ端から録っていくんです。ひと通り録ったら、“この曲はやめた”とか“これは改造しよう”という感じで微調整しながら、アルバムが出来上がっていく感じですね」
タイトルやテーマは、曲を並べたときの傾向や共通性、あるいは横山の心に引っかかったワードから生まれるという。今回は「いざ出来上がってみたら、新山下とか、本牧とか、野毛とか、横浜を舞台にした曲ばっかりだったんです。ハナからそうしたかったわけじゃないんですけど」という気づきがきっかけになった。
「いつも家から東京に行くときに本牧埠頭を通るんです。毎日見ている当たり前の景色なんだけど、急に“なんでこれを描いてこなかったんだろう?”と思ったんですね。横浜の港から太平洋にイメージが膨らんでいって、それをいまさらながら表に出してみました」
映画『影に抱かれて眠れ』に提供した蔵出し曲の「場末の天使」を除けば最初にできたという「Tampopo」は、真夏の産業道路を舞台に過去と現在を思いが往来する、まさにアルバムのイメージを牽引するような一曲だ。
「港にはいっぱいコンテナがありますけど、子供のときにすごく興味を惹かれて調べたことがあるんです。“Wan Hai”とか“Evergreen”って書いてあるのは台湾から来たんだなとか、“Hanjin”は韓国からだとか、“Maersk”はデンマークだとかね。大人になってからも貿易の検査会社で働いていましたし、メンバーにも港関係の仕事をしていた人が多くて、新しく入ったアイシャちゃん(ボーカル)はいまも現役で中古建機の貿易会社を経営していたりするんですよ。そういういろんなことが積み重なって、爆発した感じです」
『PACIFIC』を引っさげ、8/24(土)には全国ツアーがスタート。公演数は過去最多だそうだ。ファン各位はよくご存じの通り、アルバムで聴かせる世界とライブで見せる世界がまた違うのもCKBの強みのひとつである。
「アルバムは録音物としての完成形ではありますけど、楽曲の完成形は実演しているうちにできるんです。ところがなかなかコンプリートしなくてね。やってもやっても難しかったり、また違う味が出てきたりして。例えば『タイガー&ドラゴン』はいちばん演奏する機会が多い曲ですけど、いまだに全然飽きないですよ。“なんでこんなキーのキツイのを出しちゃったんだろう?”って毎回イチかバチかでやっています(笑)。こなれた演奏をしないように、いつもフレッシュに、と心がけていますけど、そうならざるを得ないですね」
セットリストが最新作中心になるのはどのアーティストも同じだが、アイデアとサービス精神を総動員して新旧の曲を巧みに組み合わせ、最新作の世界をさらに立体化、耳慣れた曲を新鮮に響かせる懐の深さはCKBならでは。ワクワクしながら足を運びたい。
「ニューアルバムが出るとどうしてもその曲ばっかりやりたくなっちゃうんで、抑えるのが大変です(笑)。ライブはお客さんと音を通して密着できる唯一の機会なんですよね。僕らにとっては25回のなかのひとつでも、その人にとっては一回きりなんで、“今日はダメだった”ってわけにはいかない、というプレッシャーはあります。客席には小さなお子さんからおじいちゃんまでいて、そういう客層を理想として描いていましたけど、本当にそうなるとは思っていなかったので、嬉しいですね」
プロフィール
クレイジーケンバンド
横山剣を中心に1997年結成。翌年にデビュー、“東洋一のサウンドマシーン”を標榜して大車輪の活躍を続ける。
公演情報
CRAZY KEN BAND TOUR PACIFIC 2019 Presented by NISHIHARA SHOKAI
8/24(土)17:00 東京・福生市民会館
9/7(土)17:00 秋田県児童会館 子ども劇場
9/8(日)17:00 岩手・田園ホール(矢巾町文化会館)
9/15(日)17:00 茨城・常陸大宮市文化センター ロゼホール
9/16(月・祝)17:00 群馬・太田市民会館
9/20(金)18:30 広島JMSアステールプラザ 中ホール
9/22(日)17:00 NHK大阪ホール
9/27(金)18:30 愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
10/2(水)18:30 北海道・中標津町総合文化会館(しるべっと)
10/4(金)18:30 北海道・帯広市民文化ホール 大ホール
10/5(土)17:00 札幌市教育文化会館 大ホール
10/11(金)18:30 レクザムホール(香川県県民ホール) 小ホール
10/12(土)17:00 神戸国際会館 こくさいホール
10/14(月・祝)17:00 福岡国際会議場 メインホール
10/18(金)18:30 岡山・倉敷市芸文館
10/26(土)17:00 東京・中野サンプラザ
10/27(日)17:00 仙台電力ホール
11/4(月・休)17:00 兵庫・赤穂市文化会館ハーモニーホール 大ホール
11/6(水)18:30 石川・北國新聞赤羽ホール
11/8(金)18:30 ロームシアター京都 サウスホール
11/9(土)17:00 静岡・長泉町文化センター ベルフォーレ
11/16(土)17:00 神奈川県民ホール
11/17(日)16:00 神奈川県民ホール
11/22(金)18:30 鹿児島CAPARVOホール
11/24(日)17:00 沖縄・ナムラホール
インタビュー・文/高岡洋詞
写真/山本倫子
構成/月刊ローチケ編集部 7月15日号より転載