幼少期に習得したクラシックから、独学で会得したポップスやジャズまで、ジャンルを飛び越えてピアノを色鮮やかに奏でる、よっしーこと善岡慧一。2020年からは大人気バンド・Official髭男dismのライブを支えるツアーメンバーとしても活躍している。
そんな話題のピアニストが、2025年10月に沖縄から始まった全国ツアーのファイナル「YOSHI's Piano SOLO TOUR LIVE 2025-2026 -FINAL-」を、2026年1月9日(金)に東京・品川区立五反田文化センター 音楽ホールで行う。いままさに開催中のツアーのファイナルならではの見(聴き)どころはもちろんのこと、2026年に向けての展望までを語ってもらった。
©Motomi Mizoguchi
――現在、回られている全国ツアー「YOSHI's Piano SOLO TOUR LIVE 2025-2026」はどのようなライブなのですか?
今までのツアーなどでもオリジナル曲を演奏していましたが、カバー曲などの比重も多かったんです。もちろん演奏者としてカバー曲を演奏することの楽しさ、面白さもありますが、ツアーを重ねるうちにだんだんと「オリジナルをメインに据えたワンマンライブをやりたい」と思うようになりました。そこで、今回のツアーではオリジナル曲を軸にセットリストを構成し、リクエストコーナーでお客さんの要望に応えてカバーなども演奏するという形にしています。
――オリジナル楽曲はどのようにして制作されるのですか?
まわりのスタッフには申し訳ないのですが、僕はかなり仕事が遅い人間で…。例えば「レコーディングするよ」と決まったら、その直前に「やばい、書かなきゃ」と焦って譜面に書き出したりしています(笑)。あとは、ピアノを弾きながらその場で思いついたものを展開させていくことで曲が形作られていくこともありますね。
僕は、曲のテーマやコンセプトをかっちりと作りこんでからそれに合わせて曲を作るというよりも、緩やかに曲のテーマなどを頭で思い浮かべたり、指先が鳴らす音に導かれていく中で曲が生まれるという感じです。いずれにせよ、僕の中から湧き上がってくるものなので、そのときどきの自分の心情や好みなどを映し出しているところはあると思います。
――オリジナル楽曲を通して、よっしーさんのお人柄まで伝わってきそうですね。ご自身の作られた楽曲をライブで演奏するときに意識していることや、大切にしていることは?
僕のオリジナルは、1曲を通してすべてを譜面にしているものもありますし、一部だけを譜面にして他の部分は即興で弾くものもあります。どちらのタイプの楽曲でも、毎回同じ演奏にならないようにということは強く意識していますし、特に、すべてを譜面にしている楽曲でも即興性を感じていただけるような演奏を大切にしています。
というのも、僕は「予定調和」の音楽をお客さんに聞いてほしくないからです。ありがたいことに、同じツアーのなかで複数のライブに足を運んでくださるファンの方々もいらっしゃいます。その方々から「会場ごとに違うので楽しいです」と喜んでいただけると、すごくうれしくなりますね。
――ライブならではの即興感を大切に音楽を届けているのですね。ファイナルはどのようなライブにしたいとお考えですか?
天井が高く、雰囲気がある会場なので、音が心地よく響きそうですよね。あまりに会場が広すぎると、場合によっては客席でピアノの生演奏の聞こえ方にばらつきが出てしまうことがあります。五反田文化センター・音楽ホールは、程よい広さのためそうした心配もなさそうです。普段のライブでは、50名ほどでいっぱいになる小ぢんまりした会場で演奏することも多いのですが、ファイナルでは音響の良いホールならではの響きや音色を存分に堪能していただけると思います。
――ファイナルということで、サプライズも期待したいところですが…
もちろん、計画しています!単純な理由ですが、2025年は5年に1度の「ショパンピアノコンクール」が行われましたよね。なので、僕もそれにあやかって1曲くらいは披露したいと思っていて。すでに、ファイナルに向けて練習中なんです(笑)。
――プロであっても、日々の練習は欠かせないのですね
はい。ですが、正しい練習をしなければ意味がないなと思うんですよ。というのも、2023年7月に「よっしーのピアノ@浜離宮」(東京・浜離宮朝日ホール)を開催するにあたって、毎日8時間練習しました。ですが、今思うと練習方法が間違っていたんです。
とにかくプレッシャーに押しつぶされそうだったので、練習しないといられないような焦燥感に駆られており、余裕がないせいで力が入りすぎていたため、指がガチガチになって…。一度ついた癖は直すまでに時間がかかるので大変でした。今は、生涯現役で演奏を続けたいという気持ちもあり、程よく力が抜けた演奏を意識した練習を行っています。
――よっしーさんの、ピアノやライブに対する真摯な姿勢が伝わります。そんなストイックなよっしーさんが、演奏活動を続けてきてよかったと感じるのはどんなときですか?
自分の指先から生み出された流れが、波に乗っていく時は格別な楽しさがありますね。即興は、瞬時に様々な選択をしていくため、うまくいくこともあれば「こっちに行ってみたけどちょっと違ったかも」という時もあるんです。おそらくプロの皆さんは経験があると思うのですが、「こっちで正解だ!」と思えたときは特別な高揚感があります。
もちろん、お客さんに心から楽しんでいただけることも大きなやりがいです。この夏、中目黒GTプラザホールで「よっしーのピアノ」公演を開いたとき、すべてのプログラムを演奏し終えた瞬間、会場から「すごい!」と大きな声援が飛んだんです。その声のほうを見たら、僕がよく行く居酒屋のママさんでした(笑)。すごく元気なご婦人で、お仲間と一緒に聴きに来てくださったんですよ。僕の演奏をとても喜んでくださったのだなと肌で感じられ、とてもうれしくなりました。
©Motomi Mizoguchi
――小さなお子さんから高齢の方まで、垣根なく楽しめるのも音楽の魅力かもしれませんね
以前、イタリアを旅したときにストリートピアノがあったので弾いてみたら、地元の方々がたくさん集まってくださったんです。聴衆を前にしてついついうれしくなり、イタリアにちなんだ楽曲をいろいろと演奏していくと、皆さんが僕を「マエストロ!マエストロ!」って褒めてくださったんです。イタリア語はよく分からなかったのですが(笑)、音楽で繋がれた感覚がありましたね。
――よっしーさんのピアノ演奏が、心弾む時間や空間を創り出している様子が目に浮かぶようです。では、改めて「YOSHI's Piano SOLO TOUR LIVE 2025-2026 -FINAL-」への抱負をお聞かせください
今回はオリジナル曲を大切に、ツアーを回っていますが、ファイナルではそれに加えてもう少しクラシックも演奏しようと考えています。先ほども言ったように、ショパンを頑張って練習していますので(笑)楽しみにしていてください。それと、実はファイナル用に新曲を用意しているので、そちらもぜひ期待していてください。
なので、今回のツアーに既に足をお運びくださった方も違った面白さを発見していただけると思いますし、バラエティーに富んだプログラムなので初めての方も楽しんでいただけると思います。僕自身も素敵なホールで演奏できることに今からワクワクしていますし、どこまで表現の幅を引き出せるかというチャレンジもしたいと思っているんです。ですから、僕の奏でる音楽と戯れに、ぜひ会場に遊びに来ていただきたいですね。
インタビュー・文/橘川有子
掲載日/2025年12月24日