今年のクリスマスは南米の風が吹く――スペインで確かな伝統と技術を学び、フラメンコの新たな可能性を追求するダンサー、中原潤とFarolito、アルゼンチン・タンゴの名手である三浦一馬と初共演を果たす!
『Flamenco Christmas ~南米のクリスマスナイト~』は、フラメンコの伝統的な踊りを交えつつ、ポピュラーなクリスマスソングや、アルゼンチン・タンゴの名曲などをフィーチャー。また、子供時代のクリスマスを思い出すような、物語的な演出も組み込まれているとのこと。
フラメンコもアルゼンチン・タンゴも、友情や愛情、家族、恋人など、人々のつながりと感情に根ざした踊りだ。活動シーンは違えど、多くの共通点を持つアーティストたち――中原、Farolito、そして三浦の3名に、公演への意気込みを聞いた。
◆それぞれのバックボーンを持ち寄って◆
――『Flamenco Christmas』に向けた、今の気持ちを聞かせていただけますか?
中原 初めての楽器、新しい音楽とコラボレーションできる機会に、ドキドキしています。
Farolito 大阪『ザ・フェニックスホール』や東京『王子ホール』の広い空間で、フラメンコの熱さを届けたいです。本場・スペインでは、フラメンコの劇場公演も多いんです。何より、今回は三浦大先生とご一緒するので……
三浦 先生はやめてください(笑)。
Farolito 僕の周りにも三浦先生のファンがたくさんいらして、すぐ反応してくれましたよ。フラメンコとアルゼンチン・タンゴ、それぞれの面白さをお届けしたいですね。
三浦 互いに自分のバックボーンを持ち寄ってブレンドする、刺激的な時間になるはずです。独立したジャンルなのに、どこか通じるものがあって、影響しあっている。これから知らないところに行くけれど、道中で懐かしさを感じる……そんな感覚が生まれそうです。しかも、東京公演は聖なるクリスマスイブに上演するわけですから、非常にわくわくしています。
◆同じ曲でも、同じ踊りにはならない。毎回が“新曲”の、フラメンコの面白さ◆
――クリスマスにフラメンコというと、一般的には少し意外な印象がありますよね
中原 実はスペインの、いわゆるフラメンコの家系に生まれた人たちにとって、クリスマスは親しいものです。『ビジャンシーコ』というクリスマスにまつわる民謡があって、それらを取り入れたフラメンコの作品が、毎年上演されています。
――今回は、そういった伝統的なフラメンコのクリスマスともまた、異なるものになると
中原 僕とFarolitoくんは、『フラメンコをたくさんの人に見てほしい、まだ知らない人たちにも知ってほしい』という思いを、強く持っています。フラメンコを見やすく、楽しみやすい形で、みなさんにお届けしたいです。
Farolito フラメンコは、同じ曲でも自由に構成できるところが醍醐味です。例えば『アレグリアス』という曲なら、僕が踊るアレグリアスと、中原くんが踊るアレグリアス、それぞれ全く違う内容になるかもしれない。いってしまえば、フラメンコはいつも“新曲”なんです。
中原 今回は、フラメンコの伝統的な曲集をベースに、アルゼンチン・タンゴやクリスマスソングなど、他のジャンルの音楽を混ぜつつ、踊りを乗せていくイメージです。有名なクリスマスソングも、スパイスのように隠されていますよ。
Farolito 古典的なフラメンコにより親しんでもらうために、『ここはバンドネオンの力を借りてみよう』とか、『弦楽器の3人をステージに配置したら面白そう』とか、新しい試みをしています。
三浦 ネタバレに気をつけないといけませんが(笑)。 中原さんが作ってくれた構成を拝見したとき、実際の舞台が浮かんでくるようでした。ストーリーや選曲、全体の流れがとても綺麗に組み立てられています。タンゴの古典とフラメンコをどう掛け合わせるか、アイデアを出し合っているところで、私も今までにない経験をしています。
中原 フラメンコは、パルマ(手拍子)や楽器を打って、踊り手も細かな足のリズムを合わせながら演奏します。バンドネオンも、リズムの刻みがくっきりしていて、打楽器的な側面があると思うので、以前から『きっとフラメンコに合うはず』だと考えていました。
――実際、フラメンコとタンゴはそう遠くないイメージがあります
三浦 フラメンコがパルマでリズムを作るように、タンゴも、バンドネオンやヴァイオリンといった楽器を叩いてリズムを生み出していく。そして、どちらも人生の悲哀や激情を歌い、踊っています。これだけ近い世界観で、合わないはずはありませんよね。アルゼンチンという国自体、移民が作り上げた新しい国です。夢破れ、自分の祖国を捨てて新天地に飛び出す人々の悲しみや叫び、嘆き……それを表現するための音楽と踊りが、アルゼンチン・タンゴの始まりですから。
◆今回のみどころ◆
――あらためて、今回の見所を教えていただけますか?
中原 フラメンコというと、ひらひらした衣装をたなびかせて踊る、女性ダンサーのイメージが強いかもしれません。『Flamenco Christmas』のダンサーは男性2人。ズボンを履いて踊るので、脚の形や体のラインがよく見えるし、鋭いタップ音や直線的な動きも多い。きっと、イメージがガラッと変わるはず。踊りだけど楽器でもある、フラメンコの二面性を味わっていただきたいです。
Farolito 実際に生のフラメンコを観ると、歌に踊りに楽器にと、視線が散らばりやすいです。だから、五感全部で空間を受け取って、舞台の全体を見てください。終演したときには、いい意味で疲れてくれたら嬉しいです。『なんだかいろんなことが起きて、あっという間に終わっちゃったけど、いったい何が起きたんだろう?』と思ってもらえるぐらいが、僕は理想的です(笑)。
――ライブならではの迫力は凄まじいですね!
Farolito 出演者はもちろん、お客さんも疲れますよね(笑)。だからこそ、飽きない方向性をいつも試行錯誤しています。
――中原さんたちの熱意が伝わってきて、期待が膨らみます! 最後に、ご来場のみなさんへのメッセージをお願いします
中原 フラメンコを初めて見る人、たくさん見ている人、どちらの方も楽しんでいただける舞台です。さまざまなジャンルの相乗効果で生まれる魅力を、堪能してください!
Farolito 今回は、いつものフラメンコとは違い、踊り手が音楽に合わせていく場面も! 僕たちの振り付けや足音が、より繊細に音楽と融合する瞬間を味わえます。寒い冬の日に、ぜひ温まりに来てください。
三浦 大きな一つのショーを観にいく、そんなつもりで来ていただけたら嬉しいです。何より、新たなコラボレーションが生まれる瞬間を、ぜひ目撃してほしいです。きっと熱いステージになりますよ!
取材・文/加藤綾子
「中原潤 Farolito Flamenco Christmas~南米のクリスマスナイト~」公演情報│ローチケ[ローソンチケット]