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【インタビュー】松田華音│クラシック・キャラバン2023 大阪公演

松田華音

【インタビュー】松田華音

6歳のときにロシアに渡り、グネーシン音楽学校で名教授として知られるエレーナ・イワノーワ先生に師事し、やがてモスクワ音楽院に進んでロシア作品をはじめとするさまざまな音楽を学んだピアニストの松田華音。現在は日本に拠点を移し、ソロ、室内楽、コンチェルトと幅広い活動を展開している。
そんな彼女が、「クラシック・キャラバン2023 クラシック音楽が世界をつなぐ~輝く未来に向けて」と題し、10月9日(月)に大阪・シンフォニーホールで開催される「華麗なるガラ・コンサート」に出演する。プログラムは、飯森範親指揮スーパー・クラシック・オーケストラとの共演によるグリーグのピアノ協奏曲全曲である。


松田華音

クラシック・キャラバンは3年目になります。これまでチャイコフスキーやベートーヴェンのピアノ協奏曲の一部の楽章を演奏しましたが、今回はグリーグのピアノ協奏曲を全楽章演奏する予定になっています。グリーグは大好きな作曲家で、小品も数多く演奏していますので、とても楽しみです。クラシック・キャラバンは、ふだんあまり聴くことのできない作品を他のアーティストの演奏で聴くこともできますし、なかなか共演などで会えない音楽家に会うこともでき、打ち上げなどもすごく楽しいです(笑)。


ロシアでは、グリーグのピアノ協奏曲はとても人気が高く、グネーシン音楽学校では中学生のころに多くの生徒たちが演奏して楽しんでいるという。

みんなが弾いているのを聴いていましたが、のちに自分が演奏するようになると、こんなにもビッグな作品で、空気感や世界観が壮大で、美しい北欧の自然を映し出している作品だとわかり、思いを新たにしました。人類すべてを描き出しているというか、自然の一部が人間なのだという不思議な世界、魔法の世界とでも表現するべきなのか、そういう空気を感じます。


グリーグのピアノ協奏曲は、第1楽章、第2楽章、第3楽章と各楽章がとても個性的で、まさに魔法の世界へといざなわれていく。

第1楽章は壮大な自然を感じ、自然の大きさにより人間はなんて小さい存在なのかと意識させられます。こういう世界があるのかと新たな感覚を抱き、澄んだ空気やいろんな香り、光も感じ取ることができます。それらが絶妙に混じり合っている。第2楽章は風景が浮かびますね。エネルギーと緊張感もみなぎっています。そして続く第3楽章もエネルギッシュで、舞踊に根差した独特のリズムが印象的です。民族色豊かな楽章だと思います。


こう語る松田華音のグリーグのピアノ協奏曲、どんな空気が生まれるだろうか。そんな彼女は、実は大変な読書家である。

私は読書が好きで、ドストエフスキーやゴーゴリ、プーシキンなどをよく読みますが、《枕草子》もロシア語訳で読み、とても深い印象を受けました。


これはロシア留学時代に語っていたことばである。いまでも日本の書籍は日本語で読むより、ロシア語で読んだ方が楽なのだという。そうした本から得たさまざまな感動が演奏に反映し、音楽を肉厚なものにしていく。

エレーナ・イワノーワ先生からは、本当に多くのことを学びました。本を読む大切さもそのひとつです。先生は自分のなかから湧き出てくる感情が大切で、それを突き詰めていって、すべてがいま演奏している作品の真意を伝えるようにしなければならないということの大切さを教えてくれました。音楽に対する姿勢ですね。最初はいろいろ加えていくのですが、究極的にはいろんなものをそぎ落として、削り込んで作品の芯の部分を伝えていく。そういう精神性を伝授してくれました。


ロシアでの生活が長かったため、現在は日本の歴史、伝統、文化などをより深く知るため、「茶道」の教室に通っている。

お茶を点てること以外に、日本のあらゆる伝統や文化を学ぶことができます。季節に関することから千利休のことばまで本当に学ぶことが多く、世界が広がります。


イワノーワ先生は、「人間性を磨くことがいい音楽を奏でることにつながる」ということを教えてくれた。いま、松田華音はそれを実践している。今後は、スクリャービンの前奏曲を演奏していきたいと語る。そしてリストの作品も視野に入っている。今回のグリーグは、そんな彼女の熱き想いが凝縮した演奏になるに違いない。その空気感を全身に纏いたい。



取材・文/伊熊よし子


クラシック・キャラバン2023(大阪)公演情報|ローチケ[ローソンチケット]

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【インタビュー】松田華音│クラシック・キャラバン2023 大阪公演