ディズニーの名作やテーマパークの音楽を、オーケストラの演奏と、オペラやクラシック音楽を専門とする二期会所属の実力派歌手たちの歌唱、大スクリーンの映像で楽しむことができる、「ディズニー・オン・クラシック ~夢とまほうの贈りもの」。2024年も東京・J:COMホール八王子公演を皮切りに、その全国ツアーがスタートした。
今年の公演のコンセプトは、「My First & My Best」。人がそれぞれ心に記憶する、初めての思い出、最高の経験に関連させて、日本公開から10周年を迎える『アナと雪の女王』をはじめ、『モアナと伝説の海』や『カールじいさんの空飛ぶ家』など、人気のディズニー作品がアニメーションと生演奏で届けられた。
オープニングを飾ったのは、『モアナと伝説の海』。「どこまでも ~How Far I'll Go~」、「俺のおかげさ」、「シャイニー」など全10曲で、海に選ばれた少女モアナの勇気と冒険の物語の名シーンが次々と届けられた。
田谷野望さんのモアナ、鹿野浩史さんのマウイ、後藤春馬さんのタマトアをはじめ、歌手たちは、映像とリンクするような表情豊かな動きとともに歌い上げる。普段は大きなコンサートホールで、オーケストラの生音とともにマイクを使わず歌っている彼ら。オーケストラの音と溶け合わせながら、豊かで伸びやかな声を客席のすみずみまで飛ばしていた。
続いて披露されたのは、東京ディズニーシー®新テーマポート「ファンタジースプリングス」のグランドオープンを記念して、ポート内に誕生するエリアに関連した演目の数々。
『ピーター・パン』の「メインタイトル」では、8人の歌手たちの極上のハーモニーが心地よくふくらむ。『塔の上のラプンツェル』より「輝く未来」では、ラプンツェルの牧野元美さんとフリンの新堂由暁さんによるロマンティックなワンシーンが目の前で展開されて、思わずうっとりしてしまう。
そして、パンデミック中の休止を経て帰ってきたディズニー・オン・クラシック恒例の時間、ステージとスタンディングの客席が一体となって盛り上がる時間へ。客席に下りてきた歌手たちに促され、手拍子をしたり、ディズニー・オン・クラシックのオリジナル・ペンライト“ファンシーカラー★ダイヤモンド・ライト”を振ったりと、まるでテーマパークに出掛けているかのような気分で楽しめる。
初登場となった大人気のダンスプログラム、「ジャンボリミッキー!」では、オーケストラの生演奏に合わせてダンスするという、心も踊る貴重な体験ができた。
加えてここで、テーマパーク好きなら喜ぶこと間違いなしの「シークレット曲」も入るので、会場での演奏を楽しみにしてほしい。
休憩をはさんで後半の冒頭には、ナビゲーターのささきフランチェスコさんと指揮者の辻博之さんが、「My First & My Best」をテーマにしたトークを届けてくれた。公演中、辻博之さんも、オーケストラ・ジャパンのメンバーたちも、自ら存分に演奏を楽しんでいることが伝わってきていたが、辻さんのディズニー作品愛を聞いてその理由がわかった。
そして演奏は、組曲『カールじいさんの空飛ぶ家』へ。幼馴染だった妻エリーに先立たれたカールじいさんが、妻との約束を果たすため、思い出の家に風船をくくりつけて空に飛び立つ。約8分ほどの映像と音楽で、心温まる切ないストーリーが存分に伝わる。夏にはオーケストラの生演奏で全編を上演するフィルム・コンサートがあるということで、その公演への期待も高まった。
プログラムの最後に用意されていたのは、公開から10年経った今も不動の人気を誇る『アナと雪の女王』。「レット・イット・ゴー~ありのままで~」、「生まれてはじめて」、「雪だるまつくろう」など人気曲の数々が披露されていく。
アナの井出千尋さん、エルサの今井実希さん、オラフの菅原洋平さん、ハンスの新堂由暁さんら、個性豊かな面々が「アナ雪」の人気キャラクターを歌いわける。オペラ歌手といえば普段の舞台で、王や王妃から騎士や町娘、時には神々の役まで演じ分けているのだから、歌唱力だけでなく演技力も優れているのは当然と言えば当然だ。さらに、熱量の高いオーケストラの音から、楽団員にも「アナ雪」ファンが多いらしいことが伝わってくる。起伏のあるドラマと登場人物たちの繊細な心の動きが見事に描かれ、映画を観たときと同じような余韻とともにフィナーレを迎えた。
そして盛大なアンコールの拍手に応えて届けられたのは、「星に願いを」。コンサートマスターの青木高志さんのヴァイオリンが歌い、それに続いて歌手たちも、優しく美しいメロディを歌い上げ、あたたかい感情を呼び起こしてくれた。
客席参加型で盛り上がる仕掛けもたっぷりと用意された、盛りだくさんのコンサート。日本人キャストによる日本語の歌唱はストレートに心に染み込み、夢のひとときをより一層心温まるものにしてくれる。イマジネーションを大切にして夢を持ち続けること、そのために美しいもの、心を動かすものに触れ続けることの大切さを改めて感じる時間になった。
取材・文/高坂はる香
「ディズニー・オン・クラシック ~夢とまほうの贈りもの 2024」公演情報│ローチケ[ローソンチケット]