夢とまほうに満ちたディズニー音楽を、その物語を紡ぐ映像とともに繰り広げる「ディズニー・オン・クラシック」。日本人ヴォーカリストとオーケストラの生演奏によるステージで、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオとの共同制作による映像や日本初披露のオリジナル組曲など、このコンサートだけの貴重な名曲たちをガラコンサート形式でお届けする。今回はツアーに参加するヴォーカリストの重田栞、牧野元美、新堂由暁、菅原洋平の4人に、ステージへの意気込みやディズニー愛などをたっぷりと語ってもらった。
――本日はよろしくお願いします。自己紹介を兼ねて、好きなディズニーキャラクターを教えてください!
新堂由暁
新堂 テノールの新堂由暁です。好きなキャラクターは、やっぱりアラジンですね。ディズニー・オン・クラシックでたびたびアラジンを歌わせていただいていて、個人的にはすごく思い入れのあるキャラクターです。
牧野 ソプラノの牧野元美です。好きなキャラクターは本当にたくさんいるんですけど…あえて挙げるならば、同じ誕生日のドナルドダック!6月9日なんですけど、ちょうど神奈川県民ホールでコンサートがあるんです。誕生日にも歌えるなんて、すごく楽しみにしています。
重田 ソプラノの重田栞です。好きなキャラクターはシンデレラですね。自分がどういう状況にあっても、夢を捨てないで一生懸命に頑張ろうとする姿は、女性として見習いたいと思います。ちなみに、6月17日が誕生日で、私も東京国際フォーラムでのコンサートの日なんですよ。
新堂 2人は誕生日が近いんだね!コッソリお祝いしようか(笑)。
菅原 いいですね(笑)。私はバリトンの菅原洋平です。好きなキャラクターは、フリン・ライダー!やっぱりかっこいいので憧れます。でも、気になっているのは『ズートピア』のジュディとニック。もともとカワイイものが好きなので、ドストライクなんですよね。
――みなさんディズニーが大好きなんですね。重田さんは、今回が初参加とのことですが、どんなお気持ちでいらっしゃいますか?
重田栞
重田 お客さんとして観に行ったことがあって、オーケストラと歌が会場全体に広がって、エネルギーにあふれていたんですよ。すごく楽しかったので、その舞台に私も立てることにドキドキもしていますが、本当に楽しみで仕方ないです。ディズニー作品が好きだから、という部分もあるとは思いますが、それだけではなくて、オーケストラも歌も、お客様を含めてみんなで一緒になって楽しみましょう、という雰囲気があって、なかなか普段のクラシックのコンサートでは味わえない空気感だったように思います。聴き終えた帰りの電車の中も、ずっと余韻に浸っているようなエネルギーをもらえました。そして、全国を回らせていただくという経験も初めてなので、たくさんのお客様にお会いできるのを楽しみにしています。
――ほかのみなさんは過去のコンサートにも参加されていますが、改めて今年も参加できることへの想いをお聞かせください
新堂 私は2020年から参加させていただき、今回で4回目となります。今回のプログラムを見渡してみると、いつも以上にディズニーの歴史を網羅しているように感じました。『バンビ』のようなオールドな作品から2000年代のものまで、たくさんの時代を一晩で味わうことができるようになっています。ヴォーカリスト、オーケストラ、ディズニー作品の映像が三位一体となって…ここにお客様も加わるので”四位”かな?とも思っているんですけど、それを味わえるのは、このコンサートならではだと思いますね。私は、ちょうど世界がちょっと大変なころにこのコンサートに参加しましたが、ようやくそんな時期が終わろうとしていて、今回が新たなスタートだと思っています。そういうタイミングでこのプログラムを楽しんでいただけることは、とても意味のあること。きっとその意味を、皆さんにも感じていただけると思っています。
牧野 私は本当にディズニーが小さいころから大好きなんです!新堂くんと同じ2020年から参加させていただきましたが、本当に幸せなツアーを経験させていただきました。私たちは二期会のメンバーなんですが、コンサートに参加した8人のメンバーとの仲間としての絆も感じています。そして、以前は海外からのヴォーカリストで開催されていましたが、その時代を知っていらっしゃる方も、今なおこのコンサートを愛して応援してくださっているんですね。その温かさに包まれて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。今年はディズニーも100周年。その記念すべき年に、このコンサートに参加させていただけることは、本当に素晴らしいご縁をいただいていると思っています。今回のプログラムは、ディズニーがだんだんと成長して100周年を迎えたんだな、ということをひしひしと感じられるものになっています。お客さまへの感謝と、ディズニーへのリスペクトを込めて歌いたいですし、これから先もこのコンサートがずっと続いていけばいいなと思っています。
菅原 僕は2021年から参加させていただいています。ツアーでたくさん参加してきて感じたのは、本当にすごく温かいコンサートだということ。お客様からいただく愛もそうですし、出演者側からお届けするものも、やっぱり温かい愛だと思うんですよね。特に、お客様との一体感はほかのクラシックコンサートにはない大きな魅力のひとつだと思います。昨年は「フレンド・ライク・ミー」でお客様と一緒に踊る場面もありましたが、より一体感が増したように感じました。今年はもっと特別な年になりますし、世の中としても新しい世界になったと思います。もっと一緒に楽しめるものになるんじゃないかと感じていますので、ぜひ楽しみにしていただきたいですね。
牧野 私たちは、このコンサートに関しては、お客様にマスクをつけていただいて、静かに鑑賞していただく世界しか知らなかったんです。それが少しずつ変わってきて、今年は確実にもっと前に進めたと思っています。その前進したことの大切さを、とても大事にコンサートに臨みたいですね。
重田 私、ディズニー・オン・クラシックにお客さんとして参加したときにハートを鷲掴みにされてしまったんですよ。そんなふうに、お客様と一緒になって楽しめるように何か意識していることはないですか?と先輩方に聞いてみたんですね。そしたら、お客様が楽しんでくれるから、そのパワーを受け止めているうちに“一緒に楽しもう!”っていう感じになれるから大丈夫だよ、って言ってくださったんです。もう早く、その”一緒に”を体験したいです!
――お客さんも含めて、みんなが一つになれるコンサートなんですね。今回のプログラムで、気になっているものやお気に入りなどはありますか?
牧野 『バンビ』は、小さいころにみたことがあると思うんですけど、あまり音楽のイメージがなかったんです。バンビの目線で観ていたからか、少し怖い印象もあって…母の姿が見えないまま銃声が聞こえて、子どもなりに何かを想像していたんですね。あと、山火事のシーンも印象に残っています。アニメーションとして、リアルな自然の美しさ、自然の怖さを鮮明に描いていると思いました。そういう印象だったので、音楽の面でこんなに素晴らしい楽曲が使われていたんだと、再発見することができました。自然を表現しているという点では『ライオンキング』もそうですよね。バンビにしても、シンバにしても、王様になる運命を背負っていて、その運命に立ち向かっていく姿って、子ども心にもカッコよかった。今の年齢になってから見ても、そのころの記憶が呼び戻されて、考えさせられますね。時代を切り拓いていくパワーにあふれた作品なので、そのパワーをしっかり発信できたらと思います。
菅原 僕は「Bittersweet Selection」が気になっています。『魔法にかけられて』より「そばにいて」、『トイ・ストーリー2』より「ホエン・シー・ラヴド・ミー」、実写版『美女と野獣』より「ひそかな夢」(菅原がソリストで歌唱)の3曲なんですが、どの曲も切なくて、もの悲しいんです。そこにロマンチックさをとても感じています。節寧けれど愛おしい、というそのぶつかり合い、ぶつかり合うけれども溶け合うような、そんな3曲がとても気になりますね。相手のことを思いやって、1歩引くような、そんな思いやりの愛が伝わってくるんじゃないかと思います。
重田 『バンビ』に関しては、私も今回で再会して、あらためて曲を聴いてみると本当にアンサンブルが美しいんですよ。すごく複雑でとっても難しいんですけど、クラシックを歌っている私たちが歌う意味があるように感じられました。森の春夏秋冬、その季節に合った音楽をオーケストラと歌とで表現されていて、やりがいを感じています。8人のヴォーカリストでアンサンブルできるのがすごく楽しみですし、生演奏だからこそのサウンドがあると思うので、耳を澄まして聞いていただけると嬉しいです。
新堂 私は『バンビ』の「メインタイトル(愛のうたごえ)」と『ライオン・キング』のシンバでソリストをいただいていますが、『バンビ』の場合は役柄として作品の登場人物があてがわれているわけではないんですね。テーマソングとしての歌になるんですが、そこを”シンバが歌ってる”ように聴こえてしまうと変だと思うんですよ。逆にシンバを歌っているときに”バンビのテーマの人”に聴こえてもおかしいですよね。私個人としては、どちらも私がソリストとして歌うんですけれども、別人格として聞いていただけるような演奏にしたいと思っています。『バンビ』では雄大な自然を歌であらわしていますし、シンバはそのキャラクターの生涯と意志の強さを歌っていかなければいけません。そのそれぞれに沿う声を探していきたいですね。
――今回はその他にも『ベイマックス』や『ズートピア』のほか、バレエ音楽「火の鳥」をモチーフにした楽曲など、ラインナップが本当に多彩ですよね
牧野元美
牧野 『ズートピア』は本当に前向きになれますよね。ずっと警察官になりたいという夢を抱いていたジュディが、夢をかなえて実際に警察官になった時の表情が大好きなんですよ! あの細かい仕草が本当にかわいくて、ジュディの姿勢と勇気に元気が貰えます。いろいろな動物がいて、それぞれの長所を生かしあえばもっと社会が良くなるよね、っていう素晴らしいメッセージも、本当に大好きです。『ベイマックス』も涙なしには見られない作品ですよね。ベイマックスを通じて、お兄さんの愛が感じられる瞬間があるじゃないですか。そこにその人はいなくても、思いが繋がれていくというのが、本当に感動的だと思います。
新堂 その素晴らしい物語が組曲になっているんですよ。作品の世界観がみごとに表現されているんです。今回、本当に盛りだくさんで時間が足りる?なんて思っています(笑)。
牧野 それに、ディズニー・オン・クラシックでしか見ることができない素晴らしいアニメーション映像とともに、演奏をお届けできるんです。絶対に感動的な、心温まる時間をみなさんに味わっていただけるんじゃないかと、楽しみにしています。
重田 本当にオーケストラの生演奏で聴いていただきたい、聴く意味のあるプログラムになっていると思います。音楽自体のスケールもすごく大きいので、このオーケストラならではの音楽と映像をたくさん楽しんでほしいですね。
菅原 ベイマックスはぜひツアーに参加して、僕らを癒してほしいな(笑)。本当に、心拍数がすごく上がるので。ワクワクするもの、メランコリックなもの、癒されるようなもの…と、いろんな音楽で感情が揺さぶられると思うんですよね。映像も一緒なんで、この短時間でより激しく感情が動くので、すごいことになってしまうんです。『ファンタジア/2000』より「火の鳥」も、バレエ音楽のものとはまた違ったものになっているんじゃないかと思っていますし、新しい視点、新しいストーリーで映像も描かれているので、楽しみにしています。
菅原洋平
――『ファンタジア/2000』より「火の鳥」のようなチャレンジは、ディズニーが100年を経てもまだ、進化しつづけるという意気込みのようなものも感じさせられますね
牧野 お客様の中には、「火の鳥」を「これ、ディズニーの曲だよね」って感じられる方もたくさんいらっしゃるんじゃないかな。
新堂 それくらいぴったりだし、オリジナリティあふれる映像になっていますよね。普遍的でありながら、古臭くないんですよ。『バンビ』だって1942年公開ですが、今見ても共感できますし、脈々と受け継がれているものは『ベイマックス』とかでも同じなんですよね。友情とかやさしさとか、根底に流れているものはすべての作品に同じくあるように思います。
――そんなディズニーの世界観を存分に味わえるコンサートということですね。楽しみにしているファンに、それぞれメッセージをお願いします!
新堂 ステージに立っている我々も、なかなかコンサートや劇場に足を運びにくい世の中が数年間続いていましたが、そんな中でも私たちはこのステージを通して夢や希望をいただくことができました。その苦しかった時間がようやく終わりを告げて、新しい時代がやってくるという、すごく歴史的な瞬間に私たちは立ち会っていると思っています。その喜ばしい瞬間を、ぜひ会場に足を運んでいただいて、一緒に味わっていただけたらと思います。
牧野 お客様と一緒になってこのコンサートを作り上げていきたいです。今年は特に、その気持ちが強いですね。今までちょっと我慢をしているときがあったと思うんですけど、その分、一緒に楽しみたいという気持ちが一段と強くなりました。やっぱりお客様がいないとディズニー・オン・クラシックにはならないんです。私たちはお客様からパワーをいただいているからこそ、いいものをお返しすることができます。一緒に作っていくつもりで、楽しんでいきたいと思っていますので、演奏会に行くぞ、というよりも、パークに遊びに行くような感覚でお越しいただけたら嬉しいです。
重田 私は今回が初参加で、新しいチャレンジになります。ディズニーも100周年を迎えて、これから新しい1歩を踏み出していく瞬間でもありますし、社会情勢としても新しい希望に満ちた未来に向かって踏み出す時期でもあります。生の音で聴いていただきたい作品がたくさん詰まっていますので、ぜひ会場に足を運んでいただいて、エネルギーや希望にあふれた空間をみなさんと共有したいと思います。
菅原 みなさんと新しい未来へと一緒に行きましょう!という気持ちです。元気に、そして楽しく、みんなで一緒に魔法のひとときを過ごしたいと思っています。会場でお待ちしておりますので、ぜひみなさんでお越しください!
取材・文/宮崎新之
「ディズニー・オン・クラシック ~夢とまほうの贈りもの 2023」公演ページはこちら