「地元・栃木でのコンサートでは、地元ならではの良いサプライズが起きるかも(笑)」
早くから第一線で活躍し続けているチェリスト宮田大が、7月に日本ツアーを開催する。毎年ツアーで共演し、宮田が最大限の信頼をおくピアニスト、ジュリアン・ジェルネとともに、練られたプログラムを用意。この7月には宮田が40歳を迎えるとのことで、彼自身の節目としても意気込みは強い。特に彼の地元である「栃木県総合文化センター メインホール」のステージへの想いは特別だという。
――毎年開催されているツアー、ピアノはジュリアン・ジェルネさん。共演は長いのでしょうか
ジュリアンとのツアーはもう15年以上になります。彼は大切な盟友であり相棒で、彼との日本ツアーを本当に毎年楽しみにしていますし、自分の地元の栃木県のホールでまた一緒に演奏できるのもとても楽しみです。実はジュリアンの誕生日が7月3日で、私が7月5日なんです。お互いの誕生日を迎えながら一緒にコンサートをするスケジュールで、しかも今年は自分が40歳になるので、40代同士でツアーができるのも感慨深いものがあります。
ジュリアンは私が2009年のロストロポーヴィチ国際コンクールに出たときに聴いていたらしくて、そのときには会っていなかったけど、その後にフランスの音楽祭で彼と共演することになり、そこですごく相性が良かったので、次はぜひ日本でとなって、日本のツアーがスタートしました。そこから長く続けてきて、もう阿吽の呼吸で演奏できます。リハーサルはピアノの方を向いて弾くんですけど、弾きながら目が合ったり、色々と音で仕掛けたりするとちょっとウインクしてくれたりとか、彼とは音で対話できて自由な感覚になる。長く続けていないとできない相棒なのかなと思います。
――その節目に組まれたプログラムは、フランスとアメリカものですね
今回は前半がフランスものになります。ジュリアンがベルギー生まれで長くフランスにいる人なので、フランス語の作品も取り上げたいと思い、最初にサン=サーンス「白鳥」、次にフォーレの「5つの歌」を選びました。フォーレのすばらしい歌曲集から、ピアノとチェロに合いそうな「秋」「蝶々と花」「ゆりかご」「愛の歌」「マンドリン」の5曲を選んで、歌詞のストーリーをどう描けるのかという挑戦になります。そしてサン=サーンスのチェロ・ソナタ第1番を弾きます。過去にもジュリアンと一緒に弾いた曲で、勢いがあって若々しい曲なんですけど、自分たちが歳を重ねてきてどういう風に音楽が変わるのか、40代ならではの味というものが出てくるのかなと。
ジュリアンとの共演は、2人で物語を描くような演奏会になります。私が登場人物を描くとすれば、ジュリアンは景色や情景を描いてくれるピアニストです。ジュリアンの母国語でもあるフランス語といえば、以前彼とサン=サーンス「サムソンとデリラ」のアリアを録音したときに、フランス語歌詞の発音とイントネーションを一つ一つ教えてもらったことがあります。音楽の流れとか、どういう風に歌えばいいのか、というのを全部こと細かく。すると、フランス語に聞こえるようになったよ、と言ってもらえたんですね。今回のフォーレ「5つの歌」も自分としては挑戦で、フランス語のちょっとしたニュアンスや意味、イントネーションをチェロで表現してみたいですね。
――後半のアメリカものは、オーケストラ作品の編曲ものでもあります
後半はガーシュウィン「パリのアメリカ人」の小林幸太郎さんによる編曲、ジョン・ウィリアムズの音楽を山中惇史さんが編曲した「ファンタジー・トリップ」をセレクトしました。前者はガーシュウィンがパリに行った経験をイメージした作品なので、フランスからだんだんアメリカ寄りになってくるプログラムの流れとしてもいいと思います。この曲はクラクションの音とか変わった音をどうチェロとピアノだけで表せるのかもありますし、ちょっと即興性のある場面もあって、オーケストラじゃなくてチェロとピアノの2人だからこそ生まれる空気を出したい。ジョン・ウィリアムズ「ファンタジー・トリップ」は山中さんに編曲をお願いして、ジョン・ウィリアムズの作品を、メドレー形式というよりはいろいろミックスしたもので、ある意味「ジョン・ウィリアムズ=山中惇史」作みたいな雰囲気です。「E.T.」「ホームアローン」「スターウォーズ」「ジョーズ」とか、ファンタジーをモチーフにした作品をたくさん取り上げて、違う話のメロディが同時に出たり意外な形で現れたり、本当にワクワクする曲です。
ジュリアンとの演奏会は、音で旅をすることをイメージして作っています。今回はフランスからだんだんアメリカに、そのアメリカに着いたらファンタジーの世界に、一緒に旅をできたらと思います。
宮田の故郷である宇都宮での公演は、毎年ツアーで開催しているステージだが、今年は40歳という節目と重なったこともあり、ひときわ思いが深い。
どの公演も大切なのはもちろんですが、自分の地元の栃木県でのコンサートは特別なものです。ツアーではできるだけ公演前日に現地に入って、そこのカルチャーに触れたり、ご飯を食べたりするようにしています。それで演奏会の時にトークで昨日何を食べたんですよとか話をすると、お客さんと距離感が縮まります。それが栃木県となると、自分のことを「大ちゃん」って呼ぶような関係性のお客さんが多いので(笑)、距離の縮め方は全然問題ないというか、むしろトークが長くなるとか地元ならではの良いサプライズとかが起きるかもしれません。小さい頃から見てもらっていた方々に、40歳を迎えたところで自分の成長を見ていただく、聴いていただくのも嬉しいことです。
チェロはステージにエンドピンを刺して演奏するが、宮田は栃木県総合文化センターのホールのステージはどこに刺したか覚えていて、「自分の根跡が残っています」という。「地元のものを食べて、地元の人と一緒になれる。他の町から聴きにきてくれた方は、ぜひ餃子を食べて帰ってほしいです」と笑う宮田の“ホーム”での公演。特別な時間になるに違いない。
取材・文/林昌英
【掲載開始日】2026年6月24日
「宮田大チェロ・リサイタル2026 with ジュリアン・ジェルネ」公演情報│ローチケ[ローソンチケット]