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【インタビュー】三浦一馬 ピアソラ・ザ・ファイナル

【インタビュー】三浦一馬 ピアソラ・ザ・ファイナル

【インタビュー】三浦一馬

名実ともに日本を代表するバンドネオン奏者の一人である三浦一馬が、2021年の生誕100年、2022年の没後30年と、2年続いたピアソラ・イヤーの締めくくりとして、11月25日(金)に東京・Bunkamuraオーチャードホールで「ピアソラ・ザ・ファイナル」と題するコンサートを開催する。三浦は、自らこのコンサートの音楽監督を務め、ソリストの選定、選曲や構成にも取り組んだ。


――今回のコンサートに「ピアソラ・ザ・ファイナル」というタイトルがついていますが、どういう意味がこめられているのですか?

私は常日頃からアストラ・ピアソラの音楽に向き合っていますが、2021年がピアソラの生誕100年、2022年がピアソラ没後30年にあたり、ピアソラのメモリアル・イヤーの節目が2年連続で運よく訪れたので、そのメモリアル・イヤーの集大成という意味で「ピアソラ・ザ・ファイナル」というタイトルをつけました。もちろん、これをもってピアソラを弾かないという意味ではありません(笑)。


――共演者が、2台ピアノのユニットであるアン・セット・シス(山中惇史&高橋優介)、ヴァイオリン・デュオのドスデルフィドル(石田泰尚&﨑谷直人)、ヴァイオリンの林周雅さん、チェロの笹沼樹さん、ギターの朴葵姫さん、タクティカートオーケストラと、豪華ですね

私と交流のある方を中心に各楽器を代表する方々に声をかけました。今回は、若い方々で結成されているタクティカートオーケストラとの共演が大きな特徴です。


――たくさんの共演者とオーケストラと、どのようなコンサートになるのですか?

コンサート冒頭では、この日の主役たちであるソリスト全員が並んで、オーケストラなしで1曲演奏しようと思っています。そのあと、それぞれのソリストがオーケストラとの共演を交えて、さまざまな組み合わせでピアソラの名曲を演奏していきます。アン・セット・シスには、「現実との3分間」をピアノ2台で演奏していただきます。ドス・デル・フィドルには、「タンゴエチュード第3番」を、オーケストラ伴奏をつけて2つのヴァイオリンのための協奏曲のように弾いていただきます。笹沼樹さんは、ヨーヨー・マの演奏でも知られる「恐怖」、朴葵姫さんはギターとオーケストラ用に編曲した「ブエノスアイレスの冬」です。林周雅さんにはオーケストラのコンサートマスターを務めていただくだけでなく、「バルダリート」でソロも弾いていただきます。

そして最後にソリスト全員とオーケストラで、ピアソラの「螺鈿協奏曲」を演奏します。原曲は、9人のソリストとオーケストラのための協奏曲で、その9人とはピアソラのコンフント9(弦楽器5人、バンドネオン、ピアノ、ギター、パーカッション)の編成によっています。今回は、少し編曲を加えて、出演するソリスト全員がオーケストラと対峙してソロを弾きます。私は、「螺鈿協奏曲」を、東京グランド・ソロイスツと室内オーケストラ版に編曲したものは弾いたことがあるのですが、フル・オーケストラと弾くのは初めてです。すごく魅力的でカッコ良い曲。ある種、ガラ・コンサートのようで、わくわくしています。

コンサートの始まりから終わりまで、一つのストーリーになるように選曲したつもりです。終盤に向けて、プレーヤーだけでなく、聴く方も昂っていくのは間違いありません。会場のオーチャードホールも、新しい何かにチャレンジする場として、今回のようなコンサートに向いていると思います。


――この夏には、CDの録音もされたと聞きました

次のステップに行くという思いを込めて、ピアソラの代表曲だけでなく、なかなか聴かれないけどみんなに知っていただきたい曲も録音して、「天使のミロンガ ~スタンダード&ビヨンド」(12月発売予定)というタイトルにしました。そして来年には、CDの発売を記念して、1月に東京(1月29日:紀尾井ホール)で、2月には大阪(2月4日:ザ・シンフォニーホール)で、三浦一馬五重奏団(キンテート)のコンサートをひらきます。


――最後に今回の「ピアソラ・ザ・ファイナル」に向けて、メッセージをお願いいたします

ピアソラの音楽は初めてという方からマニアの方まで、どなたにもお楽しみいただけるコンサートになるという自負はあります。アニバーサリー・イヤーの節目をかしこまった感じではなく、フェスティバルのようにみんなでお祝いできればと思っていますので、是非、みなさんでお集まりください。



インタビュー・文/山田治生

【インタビュー】三浦一馬 ピアソラ・ザ・ファイナル
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