クラシック

【インタビュー】クレセール・アンサンブル(鈴木大介・堀沙也香・三宅依子)│伸和コントロールズ株式会社 創業60周年記念CONCERT -未来に愛を-

【インタビュー】鈴木大介・堀沙也香・三宅依子(クレセール・アンサンブル)│伸和コントロールズ株式会社 創業60周年記念CONCERT -未来に愛を- 写真左から、堀沙也香・三宅依子・向山優樹・鈴木大介

クレセール・アンサンブル(鈴木大介・堀沙也香・三宅依子)

精密空調装置などの開発製造などを手掛ける伸和コントロールズが創業60周年を迎え、記念コンサートを開催する。九州事業所のある長崎県・大村市で開かれるこのコンサートには、ギターの鈴木大介、チェロの荒井結、堀沙也香、三宅依子、宮坂拡志、ピアノの川田健太郎と個性的な編成での演奏が予定されている。果たしてどのようなコンサートになるのか、鈴木、堀、三宅と、伸和コントロールズ経営企画部の向山優樹の3人に話を聞いた。


――今回、長崎でのコンサートとなりますが、伸和コントロールズにとって長崎はどのような場所になるのでしょうか。

向山 長崎は1992年にできた拠点で、伸和コントロールズにとって、モノづくりの大きな拠点の1つとなっています。当社は80年代から半導体製造用の装置をつくり始めましたが、ビジネスの利便性を高めるために九州での拠点を模索し、創業者のふるさとでもある長崎県大村市を選択したと聞いています。その時から、長くこの場所で事業を続けさせてもらっていますので、会社にとっては大切な場所ということに尽きると思います。


――それぞれ長崎の印象はいかがですか?

 私の高祖父が建築家で、以前の長崎県庁を建築したそうなんです。なので、勝手に親近感を感じていて、今回訪れるのをすごく楽しみにしています。演奏家という仕事をしていると、日本全国にお邪魔する機会が多く、九州にも何度も伺っているのですが、長崎は初めてなので、とても楽しみです。

三宅 私はありがたいことに、伸和コントロールズさんが創業50周年を迎えられた10年前からお世話になっており、コロナ禍の年を除き、8年間ほど毎年長崎にはクリスマスコンサートでお伺いしていました。お伺いする度に、ハウステンボスや軍艦島、グラバー園などに連れていっていただき、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。コンサートが開催される大村市は、長崎空港の置かれる場所で、通り過ぎてしまいがちな場所ですが、歴史の深い街だと思います。今回訪れた際には、歴史に触れる場所にも伺ってみたいです。

鈴木 僕も、大村市でのコンサートに参加するのは初めてなんですよ。というのも、長崎には素晴らしいギタリストがたくさんいるので、あんまりお呼ばれすることも無いんですね。それが昨年12月に長崎大学での演奏にお呼ばれしまして、こんなに続けて長崎に呼んでいただけるのはすごく嬉しいですね。これが最後にならないように、精一杯演奏したいですね。


――伸和コントロールズのコンサートは長野など、これまでもゆかりのある場所で行われています。以前にも出演されている皆さんは、演奏の手ごたえなどはいかがでしたか。

 今回で3回目になりますが、やはり今までと違うところでコンサートをさせていただくので、最初はちょっと怖さもあったんです。でも伸和コントロールズさんにもともと根付いているお客様にすごく楽しんでいただけて、よかったです。今年の8月に、本社のある神奈川・百合ヶ丘で演奏させていただいたときには、本当にお客様との距離が近くて。なんだかこちらも安心できて、楽しく演奏させていただきました。

三宅 コンサートではトークを挟みながら進行しておりますが、トークを聞いていただいているお客様の表情や雰囲気が、ホワっと暖かかな感じに変化する瞬間があり、ああ!今日も沢山の温かいお客様に来ていただいてるんだな。と、感謝の気持ちでいっぱいになります。

鈴木 コンサートには地元の方や、伸和コントロールズの社員の方、そのご家族とかが多くいらっしゃるんですが、なんとなく音楽が好きで、好奇心のある方が多いそうなんですね。そういう方々が会場に集まって、一体感が出てくる感じがすごく素敵なんですよ。会場のみなさんとのコミュニケーションが取れているような感じがして、すごく優しい時間でした。

向山 長野の演奏会で、年配の女性の方から、帰り際に「とても良かったです」というひと言を頂いたんです。私が演奏したわけでもないですし、何か特別なことが出来たとも思っていないのですが、何だかその方のひと言がとてもうれしくて、感動してしまいました。


――皆さんの手ごたえからも、とてもあたたかなコンサートになっているんですね。今回のプログラムはどのようなものになっていますか。

三宅 私は、東京チェロアンサンブルの主宰を務めさせていただいていることから、長崎のみなさまにも、チェロアンサンブルの響きをお届けしたいという気持ちがありました。今回、その願いが叶い、とても嬉しいです。また、ギターの鈴木さんにも長崎に来ていただきたいと、以前より思っておりましたので、ダブルで夢が叶っています。大好きなメンバーがそろったので、そこからプログラムを考えまして、今回は日本の歌のメドレーもありますし、本来はチェロの曲を鈴木さんや東京チェロアンサンブルでもお馴染みの小林幸太郎さんが編曲してくださった楽曲も演奏します。「カルメン」はもともとチェロに書かれている曲もありまして、それを小林さんに再アレンジをしていただいたのですが、ギターのアレンジは初めてだったそうで…。そういうチャレンジのあるプログラムになっています。また、ピアノの川田健太郎さんは、長崎で子どものための活動もされているそうで、今回ぜひご参加いただきたいと思いました。川田さんと、NHK交響楽団のチェリスト・宮坂拡志さんのお二人で演奏される「白鳥」はとても有名な曲で、私も聴けるのをすごく楽しみにしているんですよ。いわゆるヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ピアノといった編成のスタンダードな室内楽に聞き馴染のある方も、チェロとギター、ピアノという、目新しい編成も楽しんでいただけたらと思います。こういう編成ならではの和声感を感じていただきたいですね。

――鈴木さんは編曲もされたそうですね。

鈴木 バロック時代の楽曲を手掛けたんですが、チェロのパートが2つあって、低い方のパートに自由に和音をつけるという習慣は当時からあったんです。以前に、バロックギターが和音をつけている録音なども聴いたことがあったので、バロック時代のサウンド感が感じられるよう、チェロの音色をギターの音色とともにお届けでいるようにしました。


――日本の歌メドレーは、多くの方に耳馴染のいいプログラムになりそうですね。

三宅 コンサートという場にあまり馴染みがないお客様にも馴染みのある曲を、ということで日本の歌を演奏させていただきます。それに、日本の歌については、自分自身も演奏したい、残していきたいという気持ちがあるんです。メドレーもいろいろな曲を選んでいて、一瞬だけのフレーズがあったり、いつもとは違う印象に聴こえたりするんじゃないでしょうか。日本の四季をめぐるようなメドレーになったらと思っています。


――そのほかにも、個人的に楽しみにしているプログラムなどはありますか?

三宅 本当に個人的なんですけど、ギターソロの「アルハンブラの思い出」が楽しみで。鈴木さんがいつも演奏していらっしゃる曲で、私も良く聴いているんですけど、長崎のお客様には初めての方もたくさんいらっしゃると思うので、どんなふうに聴いてくださるのか楽しみなんです。

鈴木 ギターでは有名な曲で、まさにチェロの「白鳥」のような曲。トレモロが印象的なんですよね。

三宅 もう、千手観音みたいな感じですよ。

鈴木 聴いている方はフワッと素敵な印象になりますが、弾いているほうは大忙しです。

三宅 そこもまさに「白鳥」ですね(笑)

鈴木 スペインの音楽っていうのは、ヨーロッパの音楽の中でもイスラム文化が混ざり合っているんです。イスラム文化は中央アジアから西のほうに広がっていった文化で、東洋の雰囲気もあるんですね。だから、西洋の音楽ではあるんだけれども、日本人にも何か親しみというか、響くところがあるのかもしれませんね。歴史的にイスラムの人がスペインから追い出されてしまう訳ですが、アルハンブラ宮殿という場所は、最後までイスラムの人が居た宮殿というか砦なんです。そういう背景もあって、イスラムの要素がすごく入っているんですよ。あと、16世紀に鉄砲やキリスト教が日本に入ってきますが、それと一緒に入ってきたのがスペイン音楽だとも言われているんです。そういう意味でも、日本にとっては割と昔から馴染みやすいメロディなのかもしれないですね。長崎という場所は、そういう文化の玄関口だったわけですから、日本の音楽、西洋の音楽とが一緒になったプログラムというのは、すごくいいんじゃないかな。

 私はギターと一緒に弾くこと自体が初めてなんです。今回のコンサートには、私をはじめ東京チェロアンサンブルから4人が参加させていただくんですが、東京チェロアンサンブルのコンサートでも、プログラムの中に小編成の曲を必ず入れているんですね。でも、今回の4人で編成したことがないので、これも初めての組み合わせなんです。私にとっては初めてのことがたくさんなので、ドキドキしていますが、楽しみです!

向山 どのコンサートでも馴染みのある曲を必ず入れてくださっているので、それを聴くのも楽しみなんですが、いろいろな選曲をしてくださるので新しい発見もあるのではないかと思います。


――2022年も後半に入っていますが、コロナ禍からの復調も実感されているのではと思います。今の時点での今年の印象はいかがでしょうか。

鈴木 今の手ごたえとしては、すごく忙しい年になりました。でも、だからと言って、これをスタートにしてこのまま突っ走っていくぞ、という感じでもないんですよね。まだまだいろんなことがあって、いろいろな方向から対応していっているような感じです。その中からこれからの生涯、これを軸にしよう、信じてやっていくようなものが見つけられているか、というとそうじゃない。コロナ禍があって、演奏の機会が減った時、できることをいろいろやってみよう、という流れにはなりました。それが落ち着いてきたときに、何が残るのか、どの方向性になるのか、というのはまだ見えてないというのが本音ですね。闇雲状態です(笑)

 演奏する機会がだんだん増えてきて、コンサートを聴きに行く側としても機会が増えてきました。それで、1つ1つのコンサートの大切さはすごく感じるようになりました。今までももちろん大切にしてきたんですが、その1つ1つをよりかみしめるような気持ちが強くなりましたね。

三宅 本当に、その時の風の流れによってコロコロ変えていくしかないんですよね。コロナ禍以前から、流れに身を任せているタイプではあるんですけど、今年になっていろいろと復活できたものもたくさんあって、私としては希望を感じられる年になったと思っています。コロナ禍で頑張ってきたことも、これは辞めてもいいかな、これはもうちょっと違う形にしてみようか、といったフレキシブルな対応ができるようになったんじゃないかな。それは音楽業界に限らず、ほかの皆さんもそうなんじゃないかと思っています。だから、そういう柔軟さを持ちたいと思いますし、チャレンジできることはこれからもどんどんチャレンジしたいですね。私はとにかく楽しく演奏がしたいし、みんなと楽しい時間を過ごしたい。今回の長崎に来てくださったお客様にも、本当に良かったね、楽しかったね、と言っていただけるようなそういうコンサートにしたいと心掛けています。


――伸和コントロールズの2022年はどのような年になりましたか?

向山 弊社はおかげさまで前期も目標を達成することができました。そして今期はさらに上の目標を掲げて頑張っているところです。弊社が関わっている半導体というものは、今全世界で必要とされているもので、業界全体に勢いがあります。この波の中で、会社は更に変化していこうという方針ですので、前へ前へと進んでいる年、と言えると思います。そして、2022年は創業60周年ですので、コロナの状況も変わってきているなかで、イベントも多くありました。コンサートもそのひとつとして、この節目の年を楽しんでいければと思っています。


――最後に、コンサートを楽しみにしている皆様にメッセージをお願いします。

鈴木 まずは、これだけチェロがいると、本当にすごい音がしますから、それを聴きに来ていただきたいですね。知っている曲もいっぱいあると思いますし、そのメロディがこういう路線になるのか、こんな豪華なサウンドになるのか、という驚きもあると思います。そこに、ギターやピアノのよく聴く楽器も入ってきます。ちょうど3連休なので、ぜひ大村まで足を運んでいただきたいですね。

 チェロを中心に、ギターやピアノといった珍しい編成での演奏をさせていただきます。知っているメロディも違ったアンサンブルに聴こえると思いますので、ぜひ楽しんでくださいね。私たち自身も初めてのアレンジ、初めての音がありますので、その新鮮さを私たちが楽しんでいる雰囲気も含めて、皆さんにお伝えできればと思います。

三宅 私自身は50周年から携わらせていただいていて、もう10年になりますが、激動の10年でした。普段はクリスマスコンサートの時期にお邪魔していましたが、今年は少し早めの10月にお邪魔しますので、大村の皆さんにはそこも楽しみにしていただきたいです。また、このコンサートは学生さん500円と非常にお手頃に聴きに来ていただけるんですね。これは本当に伸和コントロールズさんの素晴らしい取り組みのひとつだと思います。たくさんのお子様にも楽しんでいただきたいですね。この10年、ずっと聴いていただいている社員さんやお客様もいらっしゃるので、成長を感じていただけるように頑張りたいと思います!

向山 創業60周年コンサートとして開催させていただきますが、九州の拠点を大村市に設立してから30年という節目でもあります。また、大村市においても市制施行80周年ということで、いろいろな記念が重なっているこの年に、久しぶりにコンサートが開催できることを嬉しく思っています。素晴らしい演奏をお楽しみいただけると思いますので、沢山の皆さまの来場をお待ちしています。



インタビュー・文/宮崎新之

【インタビュー】鈴木大介・堀沙也香・三宅依子(クレセール・アンサンブル)│伸和コントロールズ株式会社 創業60周年記念CONCERT -未来に愛を- 写真左から、堀沙也香・三宅依子・向山優樹・鈴木大介
【インタビュー】クレセール・アンサンブル(鈴木大介・堀沙也香・三宅依子)│伸和コントロールズ株式会社 創業60周年記念CONCERT -未来に愛を-