クラシック

【インタビュー】ピアノ・デュオ176|7[7STAR ARTISTS in 浜離宮朝日ホール] ピアノ・デュオ176「プレイズ・ジョン・ウィリアムズ」

【インタビュー】ピアノ・デュオ176|7[7STAR ARTISTS in 浜離宮朝日ホール] ピアノ・デュオ176「プレイズ・ジョン・ウィリアムズ」 ©TakafumiUeno

ピアノ・デュオ176

ピアノ・デュオ176

©TakafumiUeno
(左)高橋優介 (右)山中惇史


山中惇史と高橋優介の2人によるピアノ・デュオ176(アン・セット・シス)。ピアノ2台の鍵盤の数をその名に冠したこの2人のデュオが、映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムズの楽曲をアレンジしたCD「ジョン・ウィリアムズ ピアノ・コレクション」を10月13日にリリースする。そして、10月15日には、これらの楽曲を披露するコンサートを開催。2人の考えるジョン・ウィリアムズの魅力とはどのようなものなのだろうか。話を聞いた。


――今回のコンサートは、映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムズの楽曲をピアノ・デュオで演奏するという企画になっていますが、はじまりはどのようなきっかけだったんでしょうか。

山中 ジョン・ウィリアムズを弾きたいという気持ちはずっとあったんです。好きな音楽家って、その時々で変わってくると思うんですけど、彼だけはずっとスゴイなと思い続けられる作曲家でした。それで、あるレコーディング現場の休憩中に、たまたまジョン・ウィリアムズの曲を弾いていたら、レコード会社の方が聴いていて「ピアノで聴くジョン・ウィリアムズって、あまりないからCDを作ってみない?」と声をかけてくださったのがはじまりです。まずはCDを作ってから、今回の演奏会もさせていただくことになりました。


――ジョン・ウィリアムズの魅力ってどういうところだと思いますか?

高橋 僕は、ジョン・ウィリアムズについては先に曲を知っていて、あとから作曲家の名前を知りました。「ハリー・ポッター」シリーズや「E.T.」「ホーム・アローン」など、子どものころから好きだった映画のほとんどをジョン・ウィリアムズが作曲していたと後に知って、それ以来ずっと大好きな作曲家です。ジョン・ウィリアムズの曲って、キャッチーなのにとても難しいんですよ。キャッチーだから、鼻歌とかではすぐメロディが出てくるんですけど、いざピアノで弾こうと思うとあれ?と思わされるところがとても多くて。そこが、僕はとても好きですね。

山中 今回CDに入れた曲のほとんどはメインテーマで、それだけで曲として成立しているものなんです。それが素晴らしいのはもちろんなんですが、映像に合わせて作った音楽の部分もすごいんですよ。映像先行なので、そこだけを切り取ると成立していないかもしれないんですが、映像に寄り添って書かれている音楽が……映像を超えてくるというか。映像が、ジョン・ウィリアムズの音のおかげで何倍も膨れ上がって見えてくるんです。チャイコフスキーやプロコフィエフのようなクラシック音楽を踏襲しつつ、現代音楽のエッセンスを混ぜつつ、映画を進めていく手腕はものすごいと思います。メインテーマもキャッチーなんだけど、コード進行やメロディが一筋縄ではいかない。そういう部分は本当にすごいと思います。ほかには居ない作曲家ですね。


――今回、2人での演奏としたのはなぜでしょうか。

山中 大編成の曲が多いので、ピアノ1人で演奏するとなるとちょっと指10本じゃ足りない。弾けるようにアレンジもできるんですが、そうすると原曲のサウンド感や映画の世界観が出にくくなってしまう。ピアノ2台のほうがいいんじゃないか、と思ったものに関しては、2台で演奏しています。


――アレンジについてはどこにこだわりましたか?

山中 もとはオーケストラの曲がほとんどなので、オーケストラで聴いた方がいいのは事実なんです。それをピアノで演奏する意味を考えました。原曲よりいい、ではなく、オーケストラでは聴こえない部分、違う風景が見えてくるような部分を念頭に置いてアレンジしました。音色感として、ピアノはどう弾いてもピアノの音になるので、その中でいろいろな変化をつけるように意識しています。あと、オーケストラって編成によっては100人くらいになるんですよ。でも今回は2人なので、変化をつけるときにも合わせやすい。その分、より自由に表現ができるという部分もあると思います。良し悪しじゃなく、そこがオーケストラとは違う点なので、そこを活かした演奏をしています。

高橋 今回のアレンジはすべて山中さんがやっているんですが、僕は今回で初めてジョン・ウィリアムズの楽曲のスコアを見たんです。メインテーマって、いわば序曲のようなものですが、実はその中にヒロインのテーマや悪役の主題がけっこう入っていたんだな、と気付きました。ただ楽曲を聴いていただけでは気付かなかったことを、スコアで目で見て気付いて、驚きと喜びを感じました。メロディの意味に気付けたので、より弾きやすくなりました。


――ちなみに、ピアノ・デュオ176自体は、どういう経緯で結成することになったんですか?

山中 知り合うきっかけになったのは、2年ほど前の仙台クラシックフェスティバル。もともとお互いに名前は知っていたんですが、その時に楽屋が隣になって、話すようになりました。お互いに、演奏者だけでなく、作曲や編曲もやるという部分で割と気が合ったんです。分かり合える部分が多くて、しっくり来たんですよね。それで、彼とならピアノ2台で演奏できると面白いんじゃないかな、と思いました。

高橋 山中さんと話した時に、全部受け止めて返してくれる人が初めてだったので、すごく嬉しかったんですよ。今まで誰かに話したかったけれどできなかったような話を100%で聞いてくれて、答えてくれた。その日、ほかのスタッフさんなども含めてランチをご一緒したんですが、短い時間ではあったんですけど、たくさん話をしました。そもそも、お会いしたいと思っていた人ではあったんですが、ここまで求めていた人だとは思わなかったので、お会いできてすごく嬉しかったのを覚えています。今後も何か繋がりがあれば、と思っていたところに、帰りの新幹線の中で、一緒に演奏会をしないか、とお声かけのメールをくださって……すごく嬉しかったですね。

山中 なんかツボが合うというか……”そうだよね”って思えるんですよね。今まで、創作もやるピアニストとして、心の芯から”そうだよね”って思えたことって、そういえばあんまりなかったかもな、と思いました。そこが、高橋くんとの話では、芯から”そうだよね”って思えるんです。


ピアノ・デュオ176

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――音楽性の部分でのお互いの印象はいかがですか?

高橋 山中さんの曲の進め方や曲に対するこだわりは、割と一緒だなと感じることが多いです。でも、山中さんの方がしっかりと作曲などの創作をされているので、曲の構成はすごく勉強になりますね。音色の作り方やこだわり方など、山中さんの曲から学ぶことはとても多いですね。

山中 (高橋さんの演奏は)単純に、上手いな、と思います。すごく音楽を大事にしているんですよね。音楽家の中には、スポットが音楽じゃなくて”音楽をしている私”に当たっているような印象の人っているんですよ。そういう部分がまったくない演奏なんですね。そういうエゴを感じさせない、音楽の良さだけを感じさせるところが、すごくいいと思っています。


――最後に、今回のコンサートへの意気込みをお願いいたします。

高橋 ジョン・ウィリアムズは映画音楽の作曲家ではありますが、クラシックの作曲家のように、いつもと変わらず取り組もうと思っています。そして、山中さんが楽曲に施している工夫をしっかりと演奏していきたい。ピアニストって”ショパン弾き”とか”モーツァルト弾き”とか言われたりしますよね。”ヤマナカアツシ弾き”としては、僕は上位にいると思っているので、山中さんの工夫を120%出せるように演奏していきたいと思います。

山中 ジョン・ウィリアムズの曲って、1曲1曲がすごくキャッチー。彼の楽曲は、いろいろな編曲やバージョンが世の中にたくさんありますが、僕たちのCDのバージョンが1番だと自負しています。単にピアノで弾いてみました、というものではないので、十分に期待していただいてOKです! そして、例えば「スター・ウォーズ」の曲なんて、もう誰でも知っているじゃないですか。だからと言って、有名な曲を箇条書きにしたようなよくある演奏会にはしたくない。曲の良さは誰でもわかることなので、曲と曲のつなぎを工夫して、演奏会を通してジョン・ウィリアムズの作品となるように構成しています。寄せ集めではなく、最後まで聴いていただいて納得感のあるプログラムにしたいと思っていますので、ぜひ楽しんでください!




インタビュー・文/宮崎新之


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