クラシック

【インタビュー】DOS DEL FIDDLES(石田泰尚、崎谷直人)|7STAR ARTISTS in 浜離宮朝日ホール ドス・デル・フィドル

【インタビュー】DOS DEL FIDDLES(石田泰尚、崎谷直人)|7STAR ARTISTS in 浜離宮朝日ホール ドス・デル・フィドル

DOS DEL FIDDLES(石田泰尚、崎谷直人)

ともに神奈川フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターを務めている石田泰尚、崎谷直人の2人によるユニットDOS DEL FIDDLES(ドス・デル・フィドル)。唯一無二のカリスマ的サウンドで聴衆を魅了する石田、日本の室内楽シーンを第一線で牽引している崎谷という、スペシャルなヴァイオリニスト2人がタッグを組んだ奇跡のようなユニットが8月、浜離宮朝日ホールにてコンサートを開催する。2人が奏でる音は、どのようなものになるのだろうか。話を聞いた。


――ユニット立ち上げのきっかけは崎谷さんからだったそうですね。

石田 最初、何かやりませんか? って言われたときは、ビックリだったよ。俺でいいの? って、まず確認して(笑)、やるんだったら本格的にやろう、って感じだったな。ビックリした、っていうのは、やっぱり同じオケにいるんだけど、同じ立場(コンマス)なのでなかなか会わない相手でもある。僕が頭をやっているときはいないことが多いしね。それでも、同じオケではあるから、それなのに俺とやりたいんだ、って思って。俺と2人で、他でもやりたいんだ、っていうことにちょっと驚いた。


崎谷 同じオケの2人が外で一緒にやるのって珍しいかな、と。神奈川フィルでやっているときと、ユニットでは、やっぱり感覚が違います。自分もコンサートマスターをやったり、Verus String Quartetをやったり、いろいろやってるんですけど、クラシック界での評価って頑張っていればついてくる。もちろん、すごく頑張っているからなんですけど。そうやって、ヴァイオリニストとして認知していただいて、大きな場に呼んでいただいたりもしました。それはそれとして頑張るんですけど……でも、そうじゃないな、と思う部分もあって。僕にとっては、神奈川フィルに入って、そこに石田さんが居たことは結構大きなことだったんです。石田さんにしか無い何かがあって、それをオケ以外でも観たいと思ったんですよね。


――お互いの印象やイメージってどういう感じですか?

崎谷 石田さんのことは神奈川フィルに入る前からもちろん知っていましたし、最初の頃は緊張しましたよ。うちのオケはわりと和気あいあいとしてるんですけど、そういう中に石田さんが入ってくるとピリッとするみたいなところはあって。でも今、案外怒らせるとめんどくさいって思われてるのは俺の方。石田さんの方がキャパシティーが広いんですよ。逆に見えてそうですけどね。


石田 僕とタイプは違うんだけど、崎谷ちゃんは、死ぬほどキレイな音を出すんですよ。それは初めて一緒にオケで弾いた時から、めっちゃいい音出すな、と思ってました。僕はどっちかというと、本能というか、感覚的に弾くタイプなんだけど、そこも違う。理論派って言うのかな? 本人は違うって言うかもだけど、僕から見るとそう。そんな感じで全然タイプが違うんだよ。だから逆にすごい勉強になる。崎谷ちゃんのいいところは盗もう、っていう気になるね。なるべく吸収するようにしています。


――音楽的な信頼があるからこそ、本格的にやろう、と応えられたわけですね。

石田 たまになんですけど、オーケストラで2人が並ぶことがあるんです。そういう時って、すごく面白い。どんなジャンルでもそうなんだけど、やっぱり俺は楽しく仕事をしたい。彼は上手いし、いろいろ考えていて、だから横に並ぶと楽しくてね。でも、オーケストラの中だと、それ以外にもアンテナを張っていないとダメなんです。だから2人でやるっていうのは、そういう楽しいことだけを純粋にやる感覚。楽しみすぎちゃって、ちょっとふざけちゃう部分もあるんだけどさ(笑)。


崎谷 2人だけなんだから、ちゃんとやってくださいよ(笑)。でも、本当に並んで弾くのは楽しいんです。こうくるだろうな、っていうのもなんとなく分かる。僕、割とちゃんとキャッチしますよね? でも、それをキャッチできない相手もいる。それって音楽的にどうこう以前の、感覚的、本能的な部分。石田さんとの演奏は、そこが気持ちいいですね。そういう気持ちよさを、このユニットでももっともっと出せたらな、と思います。


石田 ヴァイオリン2人のユニットって、他であまり存在していないし、そういう部分でも、やるからには知名度を上げたい。だから本格的にやろうと思ったんだよ。全国展開していきたいです。いろんな人に聴いてもらう、僕はそれだけですね。


――お話を聞いていると、DOS DEL FIDDLESはクラッシックを飛び越え、音楽のいろいろな垣根を取っ払ってしまうような印象ですね。

崎谷 そうですね、そういうきっかけになれば。もちろん、普段クラシックを真面目にしっかりとやっているからこそ言えることですけど。やはり賞歴を重ねていくと、そういう部分を期待されてしまうんです。それはすごくありがたいことなんですけど、僕は普段、ロックとかも聴きますし、クラシックだけじゃないところもたくさんある。


石田 クラシックはもういいんですよ、このユニットではね。


崎谷 (笑)。例えば、僕らに加えてギタリストやドラマーを入れたりとか……一緒にやりたい人はたくさんいるんですよ。頭の中に何人か、浮かんでいます。今後はそういうことも考えていきたいので、まずは石田さんもおっしゃっているように、2人での知名度を上げていきます。やっぱりやるからには、尊敬しているその楽器のトップ奏者とやりたいので。絶対にカッコいいと思うんですよね。


石田 僕はもう、言われたことはなんでもやりますよ。ロック? フェスで? ライブハウスも? よし、何でも来い、って感じですよ。


崎谷 やりましょう! なんていうか、ギターだと、エリック・クラプトンとか、ジミ・ヘンドリックスとか、ギター1本で駆け上っていったギターヒーローみたいな存在が昔は居たんです。今はそういうヒーローがだんだん居なくなっていて。バンドって言う形式はいいんだけどね。クラシックだとヴァイオリンもオーケストラで聴くものみたいな感じになっている。でも本当はヴァイオリン1本でギターヒーローみたいに、ヒーローにもなれるはず。なのに、お金持ちじゃなきゃできない楽器とか、そういう堅い考えがあるんですよね。もっとラフにも楽しめる楽器なのに、奏者にそういうマインドの人が多いんです。例えばベートーヴェンを弾き始めた瞬間、奏者がカチッと構えちゃったりね。聴く方がそうなるのは、そういうものだと思って聴き始めるからわかる。でも奏者側はそうじゃないはず。そういう違和感はありました。


――ベートーヴェンもすごくロックですよね。

崎谷 そう! 本当にそうなんですよ! 東京事変をカッコいいって思う人は、ベートーヴェンのカルテットを聴いてカッコいいと思わないワケがない。ベートーヴェンも後期の作品になるとオルタナティヴみたいなサウンドだったりするんですよね。以前、坂本龍一さんが何かのインタビューで、ベートーヴェンの楽曲について「もう俺がやっていること250年前にやられちゃってるんだ」というような主旨のお話をされていたんです。弦楽四重奏のメロディに、コンピューターミュージックのようなものがあるんですよ。その話を聞いて、本当にそうだな、と思ったのを覚えています。


――ジャンルに囚われずに解釈したサウンドがどのようになるのか楽しみです! コンサートを楽しみにされている方にメッセージをお願いします。

石田 今年、初めての公演ということで、楽しみにしていただければと思います。舞台で弾くのが仕事なんで、それでお客さんが喜んでいただければ最高です!


崎谷 もう、石田さんと同じです。楽しんでいただきたいですね。今は東京近郊でしか出来ていないんですが、地方でもできるように頑張っていきます!




インタビュー・文/宮崎新之


【インタビュー】DOS DEL FIDDLES(石田泰尚、崎谷直人)|7STAR ARTISTS in 浜離宮朝日ホール ドス・デル・フィドル
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