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【レポート・コラム】熊川哲也Kバレエ カンパニー『白鳥の湖』

【レポート・コラム】川哲也Kバレエ カンパニー『白鳥の湖』

『白鳥の湖』通し稽古見学レポート

巻き込まれ作家Yの「バレエ素人はじめました」

これまで全くバレエに触れてこなかった自分が、ひょんなことからKバレエ カンパニーと仕事をすることになったのが数か月前。そこから持ち前の気合いと勢いでズボズボと首をつっこみ、ぐるんぐるんに巻き込まれた結果、今に至るわけで。

そんな私が、1月末から渋谷のオーチャードホールで開幕する「白鳥の湖」の通し稽古を見学させてもらえることになった。場所がKバレエのリハーサルスタジオ内だったということもあり、手を伸ばせば届くほど近い距離で私はバレエを体感することとなった。

特に自分が驚かされたのが、ダンサーたちが踊りながら「演じていた」ことである。細やかな動きや表情の変化で感情の機微を巧みに表現していたのだ。

私はこれまで「マダムバタフライ」と「くるみ割り人形」を実際に劇場で観てきたが、その時の自分は「物語と音楽に合わせて美しく踊っている」ことに大きく気を取られていたように思う。決められた振付けを皆一様に正確に華麗に踊っているものだと。しかしそれは大きな思い違いだった。

ダンサーたちは与えられた役を、その一瞬一瞬を全力で生きていた。それこそ本当に台詞が聞こえてくるような気さえした。完全に踊ってはいるのだが、それがもはや自然な動きであるように感じられる。これってすごいことですよね?

私が見学したのは「第3幕」。王子ジークフリートが、姫である「白鳥」と勘違いして悪魔に差し向けられた姫そっくりの「黒鳥」を好きになってしまうという、何とも悲哀に満ちた場面。

この日王子役を演じていたのが髙橋裕哉。ちょっと前に白鳥と運命的な出会いを果たし、恋に落ちた彼が、今まさに目の前で黒鳥の誘惑を受けている。
「それは姫じゃない!騙されちゃダメだ!」

感情の揺れ動きをリアルに表現する高橋くんに引き込まれ、ドキドキハラハラさせられる私。一方で白鳥と黒鳥を演じる矢内千夏。さっきまで純粋無垢なお姫様だったのに、今や完全な悪女の顔で王子に迫る。結果、騙されるピュア王子。なんということだ。私の感情はもはや物語の中にあった。

超至近距離でのバレエ見学は、ダンサーたちの身体能力の高さと身体操作の精密さをより一層際立たせもした。ものすごい体の曲がり方。重力どこ行った?みたいな鮮やかな跳躍。まさに白鳥がごとく、水面の優雅さと裏腹に水中では激しく水を掻いているのだ。

 

ダンサー一人一人の踊りや芝居に、それぞれ違った個性があることにも気づかされた。それらが折り重なって作品全体の形をなしている。Kバレエ カンパニーならではの「白鳥の湖」の息づかいが感じられるようだった。

今回の通し稽古は、当然本番で使用する衣裳もセットもない状態で行われた。それでこの「楽しみよう」は伝わっただろうか。きっと本番では、より深く物語の世界へ誘ってくれることだろう。

バレエとは目の前で作り上げられていく『ライブエンタテインメント』だと思っている。その過程をこそ、一緒に楽しむものなのだ。それぞれのダンサーが現在の到達点でもって全力で物語の中を生きる。当日劇場の中でしか、それをリアルタイムで体験することはできないだろう。本公演が本当に楽しみでしょうがない。

米村和洋 (構成作家)

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