演劇
こまつ座『円生と志ん生』

こまつ座『円生と志ん生』

チケット情報

こまつ座 第119回公演『円生と志ん生』

 これは「語る」ことに命をかけ、ピカピカに芸を磨き上げた人間の喜劇です。

 

我が国が誇る話芸として長く庶民に親しまれてきた落語。近年はマンガ・アニメで落語が話題になり、若者にも広く親しまれ「落語ブームふたたび」と言われています。

昭和の大名人と呼ばれるなかでも三遊亭円生と古今亭志ん生は、昭和を代表する国民的落語家といえましょう。この二人、戦中は連れだって満州各地を流浪していましたが、ついに迎えた8月15日、強大なソ連軍によって占領された満州南端の大連市に、とうとう二人して封じ込められてしまいました。…実はこれは史実です。

実直勤勉な円生と、気ままで大酒呑みの志ん生。正反対の性格の二人のおかしな共同生活が始まりました。…占領軍によって閉ざされた港湾都市大連。閉じこめられた二十万の日本人。いつ祖国へ帰れるのか。それは誰にもわかりません。

混迷の大連で、円生と志ん生は異なる境遇の五組の女性たちと関わります。心豊かで個性にあふれ、人生の壁に直面している女性たちを、ふたりの噺家は結果的に救っていきます。

戦後の日本人を大いに楽しませてさらに励ましもすることになる名人円生と志ん生。彼らが人生との戦いを通じてその話芸をピカピカに磨き上げた狂騒の一時期を、虚実交え趣向を凝らして描いた井上ひさしの傑作音楽喜劇、10年ぶりの上演です。

<とき>昭和二十年夏から、二十二年春までの600日間。
<ところ>旧満州国南端の大連市の市内あちこち、伊勢町の旅館「日本館」二階座敷、逢坂町遊郭の「福助」、町外れの廃屋、委託販売喫茶「コロンバン」、カトリック系女子修道院の物干し場など。全十場。

 

【あらすじ】

円生と志ん生、共に「昭和の名人」といわれる域まで芸を作り上げた噺家。
リズムとテンポで軽妙な芸を得意とする兄弟子の志ん生と心に沁みる人情話を得意とした円生。
性格の違う二人は戦時中の大連巡業から、戦後の生き方まで常に一緒、笑いとともにその奇想天外な行状行脚が史実をもとに展開する、命を懸けた珍道中。
戦争という時代にあって笑いの芸や日本人の心の情感を忘れなかった二人の修業は、それを忘れている私たちへの反戦の唄だった。
噺家として日本人の心の話術を打ち出した天才噺家二人の大人気評伝劇が、新キャストを迎え堂々の上演。

 

作:井上ひさし
演出:鵜山仁

出演:
大森博史、大空ゆうひ、前田亜季、太田緑ロランス、池谷のぶえ、ラサール石井

演奏:朴勝哲

 

 

【スペシャルトークショー】
9月11日(月)1:30公演後 樋口陽一(比較憲法学者)―井上ひさしにとっての笑い―
9月14日(木)1:30公演後 大空ゆうひ、前田亜季、太田緑ロランス、池谷のぶえ
9月17日(日)1:30公演後 大森博史、ラサール石井
9月21日(木)1:30公演後 雲田はるこ(漫画家)―『昭和元禄落語心中』ができるまで―

※アフタートークショーは開催日以外の『円生と志ん生』のチケットをお持ちの方でもご入場いただけます。ただし、満席になり次第ご入場を締め切らせていただくことがございます。
※出演者は都合により変更の可能性がございます。

 

『円生と志ん生』9/21のアフタートークにご登壇いただく、雲田はるこ先生よりコメントを頂きました。
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「円生と志ん生」実在の二人の満州落語慰問時代のエピソードが好きすぎて、
落語漫画の作中でそのまま使ってしまおうかとすら思っていたんですが、
井上ひさしさんの「円生と志ん生」という戯曲があるらしいと知って、
その時は戯曲本を読んだ訳ですが、この物語が面白すぎたので、

実在のエピソードを使う事を思いとどまった、という経験があります。 
落語の資料を探していた時に、文章でしか読めなかったものが、
こうしてまた「落語ブーム」の時代に再上演され、
演劇として拝見できるチャンスに巡り会えること、
こまつ座の皆様に呼んで頂けました事、
勝手にご縁を感じております。

「円生と志ん生」ふたりのエピソードの愛らしさを、
今の落語好きの皆さんと一緒に楽しめる日をたのしみにしております。

雲田はるこより
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