THE ドラえもん展 TOKYO 2017 出展作品
<近藤智美さん/画家>
作品タイトル:『ときどきりくつにあわないことするのが人間なのよ』
近藤 智美
ときどきりくつにあわないことするのが人間なのよ
©Satomi Kondo ©Fujiko-Pro
グッズも集めていたほどドラえもんが大好きという近藤さんは今回、『映画ドラえもん のび太と鉄人兵団』(1986 年公開)に登場する鏡面世界を表現した作品を制作。
作中でのしずかちゃんの『ときどきりくつにあわないことするのが人間なのよ』という言葉が作品のハイライトになったといい、“人間の矛盾”を掘り下げたこの作品。作品上部は2045年、下部は映画公開の原作のマンガがスタートした1985年をテーマにしており、鏡面世界と現実の中で、誰もが感じるノスタルジーの部分に働きかけるため、自身のドラえもんの記憶など思いついたモチーフが描き込まれています。
<篠原愛さん/画家>
作品タイトル:『To the Bright ~のび太の魔界大冒険~』
篠原 愛
To the Bright ~のび太の魔界大冒険~
©Ai Shinohara ©Fujiko-Pro
古典的な油彩の技法により、独自の絵画世界を描き出す篠原さん。今回は、『映画ドラえもん のび太の魔界大冒険』(1984年公開)より、人魚たちが歌でドラえもんたちをおびき寄せ、危うくツノクジラに食べられそうになったシーンをモチーフに制作されています。
原作のツノクジラはドラえもんたちを惑わせようとしていますが、作品ではツノクジラや人魚の造形を少し変え、敵対するイメージを和らげています。
皮膚や鱗の表現、人魚の質感、ドラえもんとのび太の浮遊感など、原作との違いやリアルさを感じられる仕上がりになっています。
<山口英紀さん/水墨画家 伊藤航さん/ペーパーアーティスト>
作品タイトル:『ドラえもん ひみつ道具図典 ~タケコプター~』
山口 英紀 + 伊藤 航
ドラえもん ひみつ道具図典 ~タケコプター~
©Hidenori Yamaguchi ©Wataru Ito ©Fujiko-Pro
山口さんと伊藤さんが共作で『映画ドラえもん のび太と雲の王国』(1992年公開)に登場するひみつ道具をモチーフに制作。伊藤さんが制作したペーパークラフトのひみつ道具を、山口さんが水墨画で細密模写し、説明文を付けています。紙でリアルに目の前に具現化された未来のひみつ道具と、そのひみつ道具が懐かしいものであるかのような説明描写で、時空の不思議な関係性が導き出されています。
<山本竜基さん/画家>
作品タイトル:『山本空間に突入するドラえもんたち』
山本 竜基
山本空間に突入するドラえもんたち
©YAMAMOTO Ryuki ©Fujiko-Pro Courtesy of Mizuma Art Gallery
山本さんは、タイムマシンが故障する設定がある『映画ドラえもん のび太の恐竜』(1980年公開)をベースに制作しています。 故障したタイムマシンが、山本さん自身の自画像が増殖した異次元空間に迷い込むという設定で、浮遊するドラえもんたちやエフェクト効果により、迫力のある作品に仕上がっています。
<渡邊希さん/漆造形家>
作品タイトル:『タイムドラベル』
渡邊 希
タイムドラベル
©Nozomi Watanabe ©Fujiko-Pro
「漆」を用いて、乾漆技法を主体に作品を制作する渡邊さん。今回の作品は、『時間軸を超える』というテーマのもと、古代から未来に生き続ける、時代を超越した「漆」の力で未来へと繋いでいく願いを込めた、ドラえもんオマージュ制作となっています。異次元の不思議に揺らめく奇妙な雰囲気は、どこか漆のイメージと似ていると思ったことから、“漆黒”の揺らぎを感じる異次元空間を表現した作品。乾漆の黒光る鏡面は、内側へ吸い込まれるような錯覚を生み、タイムマシンによる時空間移動を彷彿させる。造形の表面には、誰もが思い描くドラえもんの名場面が描かれています。ドラえもんの記憶へトリップしながら、ぜひタイムトラベルを体感してみてください。
≪本展監修者・山下裕二さん(美術史家・明治学院大学教授)コメント≫
この展覧会には、28組の作家が参加する。私はその選定に携わった。約半数は、村上隆をはじめとする、だれもが納得する、現時点での現代美術のトップランナーたちである。残りの約半数はこれから大いなる可能性がある若き作家たち。彼らが懸命に「あなたのドラえもんをつくってください」という依頼に応えて、素晴らしい作品をつくってくれた。私はむしろ彼らの作品こそ観てほしいのである。
ここ15年ほど、『美術の窓』という雑誌で、「山下裕二の今月の隠し球」という連載を続けてきた。ほとんど知られていない、しかし私が瞠目した作品をつくっている作家を世に出そうとして続けてきた連載である。
この展覧会には、近藤智美、篠原愛、中里勇太、山口英紀、山本竜基、渡邊希の6人に参加してもらった。彼らはいずれも「ドラえもん世代」。トップランナーたちの作品はもちろん素晴らしいだろうが、それに負けない作品をつくってくれたと確信している。