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「海の中道芸術花火2017」ピアニストジェイコブ・コーラーインタビュー
ピアニスト ジェイコブ・コーラー インタビュー
公演日:2017/5/13(土)~2017/5/13(日)
昨年にメジャーアルバムをリリースし、日本のみならず韓国でも人気が高まっているピアニスト、ジェイコブ・コーラー。ピアノ王を決めるTV番組に出演したことでブレイクし、全曲においてミスタッチを一桁に抑えた突出した演奏技術が話題となった。一方で、自由な発想から生まれる個性的なアレンジは、クラシックからポップス、ロックまで幅広いジャンルの楽曲をジェイコブ流に変貌させていく。今年は日本だけでなく韓国や故郷アメリカでもライブを敢行し、精力的なステージ活動を続けている。そんな彼が5月13日に開催される博多・海の中道芸術花火でも演奏を行うことが決定した。本人にとっても初めてとなる花火大会会場での演奏を前に、その胸中と、日本を拠点に活動する理由などパーソナルな部分に迫る。
音楽はコミュニケーション
言葉で表現できないものを表現できる
――ご出身はアメリカ・アリゾナ州フェニックスとのことですが、2009年に来日されて以来、日本を拠点に活動をされています。日本に来たきっかけは何だったのでしょうか。
2004年頃に半年くらい日本に来たことがあって、その時は知り合いに誘われて一緒にバンドをしていました。その時に東京が大都会でびっくりして。すべてが新しくて僕の世界とは本当に違う感じがしました。すごく刺激になったんです。妻は日本人なんですが、その時に妻と出会って、結婚当初はアリゾナで住んでいたのですが、ちょっと飽きてきて(笑)。アリゾナでの音楽活動に限界を感じていたことと、いつか日本に住みたいという気持ちとがあって、2009年に日本で住むことを決めました。音楽活動という面ではニューヨークも魅力的な街ですが、暮らすという部分では音楽仲間の間でもあまりいい印象はなくて。日本は音楽と暮らすことの両方が充実できるところですね。素晴らしいミュージシャンにも日本でたくさん出会いましたが、まだまだ会いきれないほどいると思います。
――そもそもピアノを始められたきっかけは?
兄がピアノを習っていて、僕にとって兄は神様のような人だったから(笑)、真似をしたくて始めました。父もプロではなかったけれど、ずっと趣味でピアノをやっていたので音楽ではすごくいい環境でしたね。最初はクラシック・ピアノだけをやっていたんですが、高校のジャズバンドの先生が僕の演奏を聴きに来てくれて。それでジャズバンド誘われて、1年ちょっとくらい新しいチャレンジをやってみるか、という気持ちだったんだけど、もう一生やりたいなと思うようになりました。それまではピアノは趣味と考えていたし、野球もバスケも好きだったんだけど、プロのピアニストになることを考えたのもその頃。ジャズ、というよりも自由に弾くことが楽しくて、少しずつジャズを好きになっていった感じかな。いつしか、ジャズの友達とセッションしたりするのは最高だなと思うようになっていました。
――2016年にリリースしたメジャーアルバム「Jacob Koller」では、「白鳥の湖」や「トルコ行進曲」など定番クラシックから、サザン・オールスターズの「いとしのエリー」やマイケル・ジャクソンの「スムーズ・クリミナル」などポップスのアレンジ曲も収録されています。ジェイコブさん独自のリズム感が感じられる作品になっていますが、アイデアなどはどのように浮かんでくるのでしょうか?
以前はほとんど即興演奏を中心にやっていたんですが、数年前からほかのジャンルの曲をジャズにアレンジするようになりました。日本に来てからいろんなプロジェクトがあって、アレンジャーとしてもっと活動していきたいと思うようになっていたんです。みんなが知っている曲を新しく、聞いたことのないような曲にして面白いなと思ってくれると嬉しいですね。アレンジするときはリズムから考えるんです。ボサノヴァとか、いろいろなリズムをつけてみて、そこからメリハリをつけたり拍子記号を変えたり細かくアレンジしていきます。音楽がわからなくても、リズムは誰にでもわかるものだから、一番重要ですね。
――これまでいろいろなところで演奏活動をされてきましたが、日本のオーディエンスの印象はいかがでしょうか
アメリカでは、特にピアノやジャズの演奏は雰囲気で、お酒や話を楽しむためのもの。最初に日本に来てライブをやった時に、一斉に手を止めて丁寧に演奏を聴いてくれて、それに感動したんです。楽しみ方が違うってことなんだけど、すごくいいなと思いました。最近は韓国でもよく演奏しているんですが、韓国の方も真剣に聞いてくれていて、日本よりも少しリアクションが大きい感じ。それも楽しいね。メキシコだと、お客さんがすごい興奮しちゃって(笑)。僕にとってピアノを演奏することは、会話をすることと同じだから観客の反応によって演奏も変わってきますね。
――5月13日に博多・海の中道芸術花火で演奏することが決まりましたが、花火大会の会場で演奏するのは初めてですか?
福岡にはライブで何度か行っていますが、花火大会での演奏はもちろん初めてです! 花火で、みんなきっと気持ちも盛り上がっていると思うので、割とノリのいい曲や、手拍子できるような曲を演奏したいと考えています。アメリカでは花火は独立記念日だけ、7月4日あがるものなんです。僕にとって花火は毎年、その日に家族で見に行くものでしたね。日本に来てからは、家族で多摩川の花火とかを観に行ったりもしました。でも観ていて、日本の花火の技術はすごいなと思いますね。
――今後もクロスオーバーなアレンジやライブ活動を続けていかれるかと思いますが、ピアニストとしてどのようなことを伝えていきたいですか?
ピアノは言葉と同じように自由に表現できる楽器です。僕のレッスンでは最初から即興演奏を教えているんですが、子どもは既成概念がないので即興演奏が難しいという考え方もない。ただ音符を弾くだけだとどういう気持ちかわからないけど、そういう教え方だと音楽の意味も理解できるようになる。音楽はコミュニケーションなんです。言葉で表現できないものが音楽で表現できる。誰でもできるんです。大人になると既成概念の壁が厚いですが(笑)。そういうのが演奏で伝わっていけばいいですね。
ジェイコブ・コーラー Jacob Koller
1980年生まれ、アメリカ・アリゾナ州フェニックス出身。高校入学までアリゾナ・ヤマハ・ピアノ・コンクールなど10以上のクラシック・ピアノ・コンクールで優勝。高校でバンドに出会いジャズに傾倒、アリゾナ州立大学に進学後もジャズ作曲コンクールで高い評価を得る。2009年に来日、TOKUのバックなどジャズ・ピアニストとして活躍。「STARS」「ショパンに恋して」などインディーズCDをヒットさせた。2015年のTV出演をきっかけにさらに広く知られるようになり、2016年にアルバム「Jacob Koller 」をメジャーリリース。全国各地で精力的にライブ活動を展開するほか、ピアノ・レッスンも行っている。
■開催期間:5/13(土)
■会場:国営海の中道海浜公園「博多湾パノラマ広場」