「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」開催中

伊藤若冲、鈴木其一、岩佐又兵衛など豪華顔ぶれが大集結!

2/9(土)より東京都美術館(東京・上野)で「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」が開催されます。今回、開催前に行われた内覧会の様子をお届けします。

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本展覧会は、美術史家の辻惟雄さんが1970年に著した『奇想の系譜』で取り上げた6名の絵師である岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳のほかに、白隠慧鶴、鈴木其一を加えた8名の絵師たちの代表作品を一堂に会する展覧会です。

 

伊藤若冲《象と鯨図屏風》 寛政9年(1797)滋賀・MIHO MUSEUM

 

内覧会では、近年発見された伊藤若冲の最晩年の作品《象と鯨図屏風》の前で、本展覧会の監修を務めた山下裕二教授(明治学院大学)による特別解説が行われました。

山下教授は、最初に「皆様、ようこそ奇想の系譜展へお越しいただきました。この『奇想の系譜』というタイトルは、ここにいらっしゃいます辻惟雄先生による1970年に刊行された著書の名前です。こういう一冊の本の名前が展覧会の名前になるというケースは、これまで僕が記憶する中でちょっとなかったのではないかと思いますけども、日本美術においては、これはもう画期的な機会だと思います」と挨拶。

続けて「この部屋は伊藤若冲のフロアです。今や日本美術史におけるトップランナーと言ってもいいような大人気の画家になりました。この展覧会も冒頭は若冲にしましたけども、実はこの展覧会で僕が込めたメッセージは、“若冲だけじゃないぞ”っていうのを多くの観客の皆様にわかっていただきたいと思っています」と本展覧会の思いを語りました。

伊藤若冲は、『奇想の系譜』が刊行された1970年当時は世間に知られておらず、教科書にすら名前が載らない無名の絵師でした。しかし、2000年に京都国立博物館で開かれた展覧会『没後200年 若冲』にて大ブレイク。以降、頻繁に伊藤若冲の名に冠した展覧会が開催され、2016年の生誕300年記念に東京都美術館で行われた『若冲展』では、最長320分待ちの大行列ができ、来場者数約45万人という、社会現象となりました。

同席していた『奇想の系譜』(1970年刊)の著者である辻惟雄さんも一足先に展覧会を観たようで「(展覧会を観て)満腹になったような、豪華な顔見世興行というような感じで非常に満足していただけるんじゃないかと自負しております。よろしくお願いいたします」と興奮気味にコメントしていました。

伊藤若冲のフロアから始まり、曽我蕭白、長沢芦雪、岩佐又兵衛、狩野山雪、白隠慧鶴、鈴木其一、歌川国芳と8名の作家の代表作品が一堂に会する本展覧会。伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪は“奇想三羽烏”と山下教授は紹介しています。3人とも生きた時代が重なる18世紀の京都で活躍していた画家です。

伊藤若冲の《旭日鳳凰図》は、生気溢れる緻密な描写は若冲代表作のひとつ「動植綵絵」を凌ぐほどであり、サイズも一回り大きい。「動植綵絵」制作が始まる2年前の作品です。サイズもさることながら、圧倒的な色鮮やかさをぜひ会場でご覧いただきたい。

 

伊藤若冲《鶏図押絵貼屏風》個人蔵

近年見出された初公開作品。82才の落款があり、最晩年の制作であることがわかる。

 

伊藤若冲《梔子雄鶏図》 個人蔵

初公開作品。本展に向けた調査において見出された作品。落款の書体などから30歳代の希少な初期作と思われる。

 

 

また、本展覧会では新発見作品ほか初公開作品、海外から里帰りする作品などが展開されています。そのほか会場内の一部分をご紹介します。

 

岩佐又兵衛《山中常盤物語絵巻 第四巻》静岡・MOA美術館(3/10まで展示)

 

『奇想の系譜』の著者・辻惟雄さんのライフワークであり、研究対象でもある岩佐又兵衛。修士論文のテーマの中心的な題材となった《山中常盤物語絵巻》も展示されています。同絵巻は源義経伝説のなかの母親である常盤御前の仇討ちを題材とした極彩色絵巻で全12巻から構成されています。本展覧会では、物語の前半クライマックスにあたる一番迫力ある場面が展示されています。

 

鈴木其一《百鳥百獣図》 天保14年(1843)米国・キャサリン&トーマス・エドソンコレクション

 

鈴木其一は、2016年に行われた初の単独展覧会「鈴木其一 江戸琳派の旗手」において再評価をされつつあります。こちらはアメリカから初めて里帰りとなる鈴木其一の奇想を代表する作品。細密極まりない筆致で、様々な鳥と獣を描き出しており、この構図は伊藤若冲から感化された可能性が高いのでは、と研究者の中で言われております。

 

歌川国芳《宮本武蔵の鯨退治》 弘化4年(1847)頃 個人蔵

 

展覧会の最後を飾るのは、浮世絵師として近年大人気の歌川国芳です。役者絵の歌川国貞、風景画の歌川広重と並ぶ武者絵の歌川国芳として第一人者となる。発想豊かな近代感覚を取り込む一方で、機知に富んだ作品は庶民の支持を博しました。こちらの作品は剣客・宮本武蔵の鯨退治伝説に基づいた、三枚続の画面いっぱいに大鯨を配した大胆な構図。「武者絵の国芳」を象徴する作品となっています。

 

ミュージアムショップ

 

奇抜な色合いと、江戸時代に描かれたとは到底思えないような革新的、前衛的な作品を集めた「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」は東京都美術館で4/7(日)まで開催です。

 

開催概要

 

奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド

 

開催期間

2019/2/9(土)~4/7(日)

時間

9:30~17:30(最終入室は閉室の30分前まで)

※毎週金曜日、3/23(土)、3/30(土)、4/6(土)は20:00まで

休室日

毎週月曜日、2/12(火)

※2/11(月・祝)、4/1(月)は開室

会場

東京都美術館

公式ホームページ

https://kisou2019.jp/ ※外部サイトへ移動します

 

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【そのほかの画像】

 

曽我蕭白《雪山童子図》 明和元年(1764)頃 三重・継松寺

18世紀京都画壇の鬼才たちのなかで最も激烈な表現を指向した曽我蕭白。漢画を学び、中国の仙人や成人といった伝統的な故事を多く描く。その表現は独創的で狂気に満ちている。

 

長沢芦雪《猿猴弄柿図》個人蔵

大胆な構図と才気あふれる奔放な筆法で独自の画境を切り開いた長沢芦雪。こちらも本展覧会初公開作品。大切そうに柿の実を抱え込んだ岩の上にいる猿のとぼけたような表情は、まさに長沢芦雪の真骨頂といえる。

 

岩佐又兵衛《伊勢物語 梓弓図》 文化庁(3/10まで展示)

 

狩野山雪《梅花遊禽図襖》 寛永8年(1631)京都・天球院

狩野山雪は伝統的な画題を独自の視点で再解釈し、垂直や水平、二等辺三角形を強調した理知的な幾何学構図で知られている。こちらは狩野山雪の冷徹な形態感覚を象徴する作品。

 

白隠慧鶴《達磨図》大分・萬壽寺

通称「朱達磨」。画風から最晩年の作と推定。白隠慧鶴、80才を超えての縦2メートル近くある大作です。下書きの線はそのまま残したり、何度も線を引き重ねるなど従来の筆法をくつがえす表現は斬新。

 

歌川国芳《相馬の古内裏》 弘化2-3年(1845-46)頃 個人蔵

山東京伝による読本『忠義伝』に取材した作品。歌川国芳は全体をワイド画面として意識し、思い切った独創的構図を展開。

 

(文・写真:工藤明日香/ローソンチケット)

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【東京都美術館 周辺地図】