【インタビュー】布川ゆうじ
「こち亀」「FF」「ガンダム」「クリィミーマミ」など名作のラフ絵が約800点!
秋本治、天野喜孝、大河原邦男、高田明美による展覧会「ラフ∞絵」が、4月2日(火)より2週間にわたって開催される。日本を代表する4人のアーティストの集結を実現させたのは、スタジオぴえろのファウンダーであり、『うる星やつら』をはじめとする数々の代表作を持つ布川ゆうじだ。
「スタジオぴえろをスタートさせて40年になりますが、僕はその前、タツノコプロにいて、4人ともそのときに出会いました。とはいえ、全員が揃ったのは本当にわずかな期間だったので、お互いをあらためて紹介したいと思って、一昨年に同窓会を開いたのです。4人と僕と、声優の平野文さんもいて、6人で食事をしたその会が、今回のきっかけになりました。『せっかくこうして集まったんだから、何かやりたいですよね。布川さん、考えてくださいよ』なんて言われてしまって(笑)」
展覧会のテーマは“ラフ絵”。ラフ絵とは下書きのことであり、作品制作の「最初に自分の閃きやイマジネーションを描く」ものだと布川は語る。
「何もないところに勢いよく何本かの線で創造していくラフ絵は、一番はじめのインスピレーションをぶつけているという面でも線がイキイキしていて魅力のあるものなんです。彼らにラフ絵を残してあるか聞いてみたら、ちゃんと保管していたので、これは公開してあげるべきだな、と」
布川のもとには、膨大な量のラフ絵が集まった。それらを選定し、1作家あたり200点、合計800点ほどのラフ絵を並べる。
「なるべく“現場感”を感じてもらえるように選びました。ラフ絵は何枚も描いて完成に至っていくものなのですが、そこにいろいろなオーダーが入ってくるんですね。たとえば大河原さんなら、玩具メーカーからの注文みたいなものがラフ絵のなかに書き込まれていたりする(笑)。ほかにも何かコメントがついていたり、テープで貼られていたり、そういった修正を重ねていく中で、どういう発想が出てくるのか、そのプロセスを見るのがすごく面白い」
モノ作りの最前線が伝わってくる“現場感”に溢れたラフ絵の数々。それらを並べる展示室では、漫画家、イラストレーター、メカニックデザイナー、キャラクターデザイナーと、異なる才能を発揮する4人それぞれの部屋が設けられる。
「秋本さんの部屋はネーム(漫画のラフ絵)のコピーを展示会場いっぱいに並べて、好き勝手に見てもらえるようにしたいと思っています。それによって『こち亀』を約40年間にわたって連載し、常に週刊少年ジャンプの中心にいたという彼の証を感じてほしい。大河原さんはご存知のように、初めてメカニックデザイナーというポジションに就いた人。『ガンダム』はもちろん、タツノコ時代の『ガッチャマン』とか『キャシャーン』とかのメカニックデザインのラフ絵を多く展示します」
多くの男性ファンに親しまれる秋本治、大河原邦男と、女性ファンから支持を集める天野喜孝、高田明美。4人の作品性のバランスの良さは、展覧会をより豊かなものにしてくれる。
「高田さんの『クリィミーマミ』は今でもコアなファンがすごく多いし、海外での人気も高い。特に女性ファンが多いので、高田さんの作品は、女の子っぽく展示してみようかな。一枚絵を中心に、キャラクターの設定図も一部出しますよ。天野さんはラフ絵なのか完成品なのか区別がつかないくらい素晴らしいものばかりです。1枚1枚の作品が大きいので枚数は少し少なめですけど、それだけ濃度が高い」
さらに4人が、それぞれの代表作を描く企画『チェンジ・アンド・チャレンジ』も行われ、展示会場に全員の作品が並ぶ。
「ラフ絵ばかりではつまらないかなと思って、4人のコラボレーションをしてみようと思いました。それで天野さんに『ガンダムを描いてみたくない?』なんて言ったら、いきなり初挑戦の油絵で描いてきて(笑)。秋本さんもあえてセル画で『ガッチャマン』を描いたり、4者4様のとても面白い作品が集まりました。それらを生原稿で展示するので、見ごたえがあると思います」
デジタルでの作画が一般的になり、紙に描くラフ絵は減少傾向にある現代。しかしだからこそ、ラフ絵から感じ取れるものが数多くある。
「ラフ絵は下書きですから、あまり公開したくないという作家もいます。今回、こうして了解を得られたのは、“こういうラフ絵があって作品が出来上がっているんだよ”っていうのを知ってほしいからだと思うんです。アーティストの発想の源を見て、醸し出されるエネルギー、気迫みたいなものを感じてほしいですね。それがこれから絵を描く仕事をする人のお手本になってくれたら。もちろんそういう仕事をしていなくても、作品ができるまでの裏側を見るっていうのは興味を惹くところだと思いますし、いろいろな楽しみ方があるでしょう。難しい展覧会ではないので、是非どなたも“ラフ”に見に来ていただければ(笑)」
プロフィール
ヌノカワ ユウジ
'67年よりいくつかのプロダクションを経て、'71年にタツノコプロに入社し、『タイムボカン』などの作品を担当。'79年にスタジオぴえろを発足、『うる星やつら』など多数の作品を手掛ける。'12年より、NUNOANI塾の塾長を務める。
展覧会情報
ラフ∞絵
開催日時
4/2(火)~16(火)11:00~20:00
※4/2(火)は14:00から
※最終入館=19:30
会場
東京・3331 Arts Chiyoda
入館料金(税込)
一般¥2,000 大学生¥1,500 高校生¥1,000
プレミアムチケット¥3,000
プレミアムチケットをご購入の方 4カラーチケット4枚セット(台紙付き)を会場でお渡しします
©2019 秋本治・アトリエびーだま/ラフ∞絵実行委員会 ©サンライズ
©2019 YOSHITAKA AMANO/ラフ∞絵実行委員会 ©ぴえろ/YOSHITAKA AMANO・タツノコプロ・SQUARE ENIX
©2019 大河原邦男/ラフ∞絵実行委員会 ©秋本治・アトリエびーだま/集英社
©2019 高田明美/ラフ∞絵実行委員会 ©YOSHITAKA AMANO
入場券(一般・大学生・高校生)をご購入の方 モノクロチケット4種類の中からランダムに1枚を会場でお渡しします
©2019 秋本治・アトリエびーだま/ラフ∞絵実行委員会 ©サンライズ
©2019 YOSHITAKA AMANO/ラフ∞絵実行委員会 ©ぴえろ
©2019 大河原邦男/ラフ∞絵実行委員会 ©秋本治・アトリエびーだま/集英社
©2019 高田明美/ラフ∞絵実行委員会 ©YOSHITAKA AMANO
備考
※中学生以下は無料
※入場券購入者は会場で「特典」をお渡しします。
一般券はモノクロチケット4種類の中からランダムに1枚、プレミアムチケットはカラーチケット4枚セット(台紙付き)をお渡しします。
(いずれも特典のチケットには入場券としての機能はありません。「プレミアムチケット」1枚購入につき入場は1回のみになります。)
※障害者手帳をお持ちの方は入館無料。(介護が必要な場合介護者1名まで無料)
※各種専門学校生は「大学生」のチケットをご購入ください
インタビュー・文/編集部
写真/矢野寿明
構成/月刊ローチケ編集部 3月15日号より転載
※写真は本誌とは異なります