ネクライトーキーが7月23日に初の試みとなるライヴ生配信『デジタルビリビリ演奏会』を開催した。ネクストブレイクの筆頭株として注目を集め、今年1月にメジャーデビューアルバム『ZOO!!』を発表。2月23日に満員御礼となったCLUB CITTA'川崎からリリースツアーをスタートさせ、一気にファイナルのZepp Tokyoまで駆け抜けていくかと思いきや、新型コロナウイルス感染拡大防止の為、その後の日程は中止。実に約5ヶ月ぶりのライヴではあったが、自粛期間中も前へ進んでいたという姿をしっかりと見せつけてくれた。
まずはポップかつ骨太な「めっちゃかわいいうた」からライヴはスタート。カズマ・タケイ(Dr.)が力強くショットを繰り出せば、呼応するがの如く、朝日(G.)や中村郁香(Key)も飛び跳ね、もっさはど真ん中でまっすぐに歌を響かせる。終盤は一気にテンポアップして駆け抜け、もっさの「ネクライトーキーです。よろしく!」という短い挨拶から続くのは『ZOO!!』の顔役の1曲でもある「夢みるドブネズミ」。必要以上にお互いを感じようとせずとも一体となるサウンド。ライヴ前、いつもとは違う緊張感を口にしていた朝日もギターを振り上げ、おもいっきりかき鳴らす。始まってしまえば、ライヴはライヴなのだろう。小気味よいサビを彩る藤田(Ba)のコーラスも実にいい。
ひと呼吸おいて、もっさが手振りでカウントをとって「放課後の記憶」へ。思わず胸が締めつけられるようなメロディーが沁みる1曲だ。もっさの絞り出すような歌声、ノスタルジックなムードをより醸し出すキーボードのフレーズも絶妙に絡み合い、どんどんその世界観へ引きずりこんでくれる。そんな空気そのままに続いたのは、朝日のタイトルコールから始まった「音楽が嫌いな女の子」。おもちゃ箱をひっくり返したようなアレンジはもちろん、中盤でメインヴォーカルをとる藤田の存在感も秀逸だった。
照明が落ち、暗がりのまま中村が優しくイントロを奏で、もっさが透明感のある歌声を響かせたと思いきや、屈強なバンドサウンドが重なっていき、そのコントラストがたまらなかったのが「渋谷ハチ公口前もふもふ動物大行進」。スピーディーに踏み込みまくっているというわけでないが、薄明かりの中、音を強く強く重ねていく様は破壊力抜群。
さらに異世界へ誘うべく、繰り出したのは「ぽんぽこ節」。ブレないもっさの歌声、中盤でタケイが強烈なリズムを叩き出し、メンバーそれぞれがカオティックなプレイを炸裂させたのも素晴らしかった。より気持ちが高まった藤田は大きく手を振り上げ、歌詞を口ずさむ。その姿にそれぞれの環境でライヴを見つめていたファンも気持ちを重ねたに違いない。
ここで表情を一変させ、快活でキャッチーな「こんがらがった!」をドロップする。様々な色味の曲を持つネクライトーキーだからこそできる技のひとつだろう。気持ちよく翻弄される感じがたまらない。心弾むキーボード、キレの良いドラム、いいうねりを持ったベース、小気味良いギター、可愛らしいハイトーンのヴォーカルが渾然一体となって耳に飛び込んでくる。ステージにもいいグルーヴが生まれてるのだろう。中村は朝日やタケイをチラッと見てはほくそ笑む。ライヴならではのやり取りはやはりグッとくるポイントだ。
後半戦に差し掛かったところで「あの子は竜に逢う」を鳴らした後、ゆったりと歌を響かせる「深夜とコンビニ」と「朝焼けの中で」と続けていく。ささやくようでありながら、遠くへ遠くへ届くようもっさが歌い上げ、他のメンバーも大切にひとつひとつの音を紡いでいき、曲の雰囲気は倍増。5人の想いが揃ったテンポ感もたまらなかった。
そして、この日のハイライトと断言したいのが「許せ!服部」。もともと、ネクライトーキーは曲にライヴならではのアレンジを組み込むことが多いのだが、その最たる存在がこの曲。まずは通常バージョンでワンコーラス披露した後、赤い照明がメンバーを包み込んだ瞬間からスピードアップ。普段であれば巧妙なアレンジをどんどん加速させ、そのまま会場全体を引っ張っていくのだが、この日はひと味違った。再び通常バージョンのテンポになり、もっさが"CD"と"ライブ"とそれぞれに書かれたフリップを手に持ち、その掲げた方のアレンジへ瞬時に切り替えていくという離れ業。
ステージを駆け回りながらもっさはフリップを掲げ、藤田と中村が手練のソロを見せれば、タケイも切れ味鋭いドラムを披露。最後の最後でタケイがスティックを落とし、メンバーから笑みが溢れる場面もあったが、それもライヴだからこそ。その瞬間にしか生まれないテンションとノリはやはり格別なのだ。
ここで朝日から改めて9月に大阪城音楽堂と日比谷野外音楽堂で開催される『ゴーゴートーキーズ! 2020 野外音楽堂編』のアナウンス。「トンチキ演奏家集団バンドを応援しようと奇特な方がいれば(チケットを)買ってください」と朝日は自嘲気味に語ったが、ライヴの良さが詰まった「許せ!服部」の後なこともあって、足を運びたいと思ったファンは多かったはず。
フィナーレへ向かうべく、ここでギアを上げるかと想いきや、届けられたのはこの日が初披露という新曲だった。少年が広い世界へ旅立っていくような壮大な世界観をもっさが真摯に歌い上げる。身動きが取れない自粛期間中、楽曲制作することによってモチベーションを上げていった成果のひとつだろう。
現在進行系の姿を見せつけてから、卓越したイントロを付け加えた「北上のススメ」で観る者すべてを揺らし、そこから繰り出すのは朝日が大きな雄叫びを上げて始まったキラーチューン「オシャレ大作戦」だ。いよいよライヴはクライマックスだということがありありと伝わってくる。
ラストはメンバーも絶大なる信頼を寄せる「遠吠えのサンセット」だった。もう止まらないメンバー。破綻する寸前まで攻めまくり、その爆発力が素晴らしい。飛び跳ね、全身をしならせ、時には拳を前へ突き出したりしながら、しゃかりきになってライヴに没頭していく。歌声も叫び混じりになっていくが、それがまた心を打つのだ。人間が本気になった姿はいつ見ても美しい。
初となった配信形式でのライヴ。当然、いつもとは勝手が違うところもあっただろう。だが、何事にも全力で挑み、全力で楽しむというネクライトーキーらしい光景だけが映し出された全15曲だった。
text by ヤコウリュウジ