【インタビュー】吉乃
2024/5/15(水)
誰もが心の底に抱える痛みに寄り添えるライブにしたい
2019年から「歌ってみた」動画をYouTube等へ投稿し始めた吉乃は、伸びやかでよく通る声と高い歌唱スキルを活かし、展開の激しいボーカロイド(以下、ボカロ)からチルなJ-POPまでを多彩に表現できる歌い手だ。幅広い音楽性は幼少期に育まれたものだという。
「両親揃って音楽が好きで、車移動などではいつも音楽が流れていました。ライブは小学校入学前に父が好きなバンドのライブに連れて行ってもらったのが一番古い記憶です。歌詞にチューインガムが出てくる曲で、お客さんがステージに向かってガムを投げるのが恒例で。子供心に、その光景にワクワクしたし、ガムをもらって帰れるのも楽しい思い出です」
学生時代、たまたま級友が廊下で歌ったボカロ曲に大きく心を動かされた。消化しきれない想いを代弁してくれるかのように感じ、衝撃を受けた。
「ボカロは尖った歌詞や、思春期特有のギザギザした気持ちを表現する曲が多く、当時の私が抱えていたやりきれない気持ちや孤独感を乗せて歌えると思いました。初めて聴いたのがクラスメートの生歌だったので、オリジナルのボカロを聴いたときは『機械なの?』と驚きましたね。それを入口に歌い手さんを知り、どんどんハマっていきました。動画投稿を始めてからは、ミックス師さんのお力を借りながら音源がどんどん自分の納得のいくものに近づける喜びも大きくて。もっといい歌を投稿したい気持ちは増していき、今に至ります」
メジャーデビューも決まったが、現実感が伴わずプロ意識はどこかふんわりとしたものだったという。そんな彼女の意識が変わったのは、今年1月に開催された吉乃 1st COVER LIVE “カサブランカ”だった。
「活動から5年経ちますが、活動の場がインターネットだったため、どこかプロという意識が持ちにくかったです。でも、ファーストライブが決まってからは、『時間や体力、お金などを吉乃のために注いでくださる』『遠方から来てくださる人もいるだろうな』と想像すると、生半可な気持ちでステージに立てないと強く思いました。ライブはやりたいと思いながらも5年が経っていたので、ライブ当日のお客さんの反応が全く想像できず、『本当に私にライブができるだろうか』という不安も募りました。でも、ステージに上がると皆さんの熱量がすごくて、その熱を受け取り、皆さんに支えられながらファーストライブを終えることができました」
7月からは名古屋公演を皮切りに、「吉乃 COVER LIVE TOUR 2024 “爪痕”」の開催が決まった。キービジュアルやツアータイトルにも、吉乃の想いがたっぷりと込められている。
「私は、やり場のない気持ちを吐き出したい思いから歌を始めました。生きていると傷つくし、誰もが心の底に痛みを抱えていると思うので、そうした思いに寄り添えるライブにしたくてタイトルを“爪痕”にしました。祝福がテーマだった『カサブランカ』と対照的にダークな色合いにし、より自分を開放できるよう活動的な衣装デザインになっていると思います。ライブパフォーマンスに関しては、まだ成長過程ですが、そうしたリアルな姿も含めて皆さんに見ていただけたら嬉しいです。ライブはその時限りのもの。見てくださる皆さんはもちろん、私にもその瞬間に起こる爆発的な感情や熱量を交換し、互いにぶつけ合えるライブにしたいと思っています。今度は私が引っ張っていけるよう頑張りますので、ぜひ期待していてください!」
プロフィール
吉乃/よしの
'19年2月より「歌ってみた」動画の投稿を開始。'24年1月に「吉乃1st COVER LIVE“カサブランカ”」を開催。ポニーキャニオンからのメジャーデビューも発表された。
公演情報
吉乃 COVER LIVE TOUR 2024 “爪痕”
- 7/17(水) Zepp Nagoya
- 7/19(金) Zepp Fukuoka
- 8/7(水) Zepp Namba (OSAKA)
- 8/14(水) Zepp DiverCity(TOKYO)
- 8/15(木) Zepp DiverCity(TOKYO)
インタビュー・文/橘川有子
構成/月刊ローチケ編集部 5月15日号より転載