【インタビュー】RAG FAIR & INSPi

2021/11/15(月)

RAG FAIR & INSPi

それぞれのアカペラに対するアプローチが調和する一夜

同じ日、同じステージでデビューしたアカペラグループが20年後のその日にコラボライブをおこなう――これだけでも長い年月をかけた物語だと思える。昨年末からRAG FAIRとINSPiは、20周年プロジェクトをスタートさせた。
両グループの歴史を振り返る特設サイト以外に、土屋礼央(RAG FAIRリードボーカル)と杉田篤史(INSPiリーダー)がYouTubeで曲作りのやりとりを生配信。つまり、作品ができる過程をファンが共有した上でライブ当日を迎えられる趣向となっている。

杉田篤史「僕が曲を作ろうと言って、じゃあそれも全部配信しちゃおうと言ったのは礼央さん。リアルタイムでファンが書いたコメントを拾って歌詞にした部分もあります。そういう意味では僕ら2人だけでなく、両グループのメンバー全員の声とともにファンも含めての共作となります」

土屋礼央「人を好きになってもらうのが一番のプロモーションにもなると思っていたので、だったら杉ちゃんと曲を作る様子でもお互いが出るから、そこも全部見せた方がいいかなと。密室じゃないことでポピュラリティーが増した気がします」

世間的にアカペラは〝楽器を使わない音楽〟のイメージでどのグループも同じに見られるが、RAG FAIRとINSPiは「身内であり、ある時はライバル」という関係性の中で独自のアプローチをしてきた。ライブではお互いのセットリストを事前に知らせぬ形で勝負する。その上で計10人のメンバーがハモる場面は圧巻だろう。

「RAG FAIRにとってのアカペラは、音楽の中でもっとも幸せを感じる楽器として声に勝るものはないという意味で〝手段〟」と土屋が言えば、杉田は「歌い方も趣味もバラバラなメンバー6人が濃い集まりになったのはINSPiだから。つまり、僕らにとってのアカペラは〝理由〟です」と続ける。
きれいにまとまるのがハーモニーではなく、それぞれが持つ尖った部分を削らずにうまく噛み合わせてこそ本当の調和が生まれる。
若い頃はこだわりからできなかったことも、人生経験を積んだ今なら受け入れられるようになった。10周年ではなく、20周年のタイミングだからこそのスタンスが、このプロジェクトにつながった。

土屋礼央「圧倒的にINSPiの方がすごいと思うのは、ハーモニーに対して向き合う時間と情熱。僕らはどちらかというと、お客さんとどうハモるかということに向いていたので。あとは杉ちゃんのロマンを追い求めるところがものすごく純粋。みんなには出せないロマンの部分を20年経っても出し続けられる、ちょっとしたアカペラピーターパンですよ」

杉田篤史「土屋礼央という才能があったからRAG FAIRになったと思うんです。この世の中にヒット作を残すんだという強い意志と、闘っても折れない負けないファイティングスピリット。デビュー当時から僕はずっとあこがれていました。RAG FAIRのことをずっと意識してきて、違うアカペラのよさを出すんだというのが僕らは常にありましたね」

あの頃は一緒にツアーを回り、現在も別ユニットとしてメンバー同士が組んで活動を続ける2つのグループの共通項と、それぞれのカラーを同時に体感できる特別な夜――アカペラという生身の音楽で表現し続けてきた彼らだからこそ、ライブまでの過程においても生身でファンと向き合い、その日を迎えようとしている。

プロフィール

ラグフェア

ミニアルバム『I RAG YOU』で2001年メジャーデビュー。昨年より配信ライブ「RAG FAIRの音楽室」を開催。メンバーは土屋礼央、引地洋輔、加藤慶之、荒井健一。


インスピ

『Cicada’s Love Song』を発表し、2001年メジャーデビュー。11/7にはライブイベント「INSPi ベストテン~ We 20 (need you) ~」を開催。メンバーは吉田圭介、大倉智之、北剛彦、杉田篤史、渡邊崇文、奥村伸二。

公演情報

RAG FAIR & INSPi 20周年感謝LIVE ~Love is here~

  • 12/19(日) 16:00 Zepp Haneda(TOKYO)
  • [出演]RAG FAIR、INSPi

RAG FAIR

インタビュー・文/鈴木健.txt
構成/月刊ローチケ編集部 11月15日号より転載

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