【インタビュー】錦戸亮

音源ではなく、生音で最初に聴くのも贅沢なんじゃないかって

音楽活動を軸にしつつ、2023年はNetflixドラマ『離婚しようよ』やNHK BSプレミアムでの『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』など、俳優としても良質な作品が公開されてきた。毎年欠かさず行っているライブも、10月から11月にかけて、ファンクラブツアー“Untitled”をおこなったばかり。新曲を2曲披露し、現在アルバムを制作中であることやホールツアーの開催も発表した。

「今、ファンクラブツアーを終えたばかりで、正直、まだ具体的なところまでは考えられていないんです。現状としては、まずグッズを先に作り始めていて。自分が家に置いておきたくなるような、可愛くて、くだらないグッズをね。ちょっとくだらないものって、家に置いとくと、なんか楽しいやん(笑)。これ、いるかなぁ、まぁギリ買わんかなっていうのを作りたくて。実際、買ってくれたら嬉しいし。俺もそういうのを買っちゃうタイプだから(笑)。『Nocturnal』のときに出したマグネットのお札も、筆ペンで何時間もかけて書きました」

前回の『Nocturnal』のときも、「ホラーっぽいグッズが作れたら可愛いだろうな、というところから始まった」と言っていたが、今回もその手法か。

「そう。でも今回は、ツアータイトルとアルバム・タイトルは別になるかもしれない」

2024年のツアーには、『NOMADOFNOWHERE』という不思議なタイトルがつけられている。NOMADは錦戸個人のレーベル名(NOMAD RECORDS)であり、ソロアーティストとして出した1stアルバムのタイトルでもあった。NOMAD(遊牧民)という意味にも、NO MAD(怒らない)という意味にも取れる、絶妙なワードだ。

「もともとは、GODISNOWHEREっていう、アメリカの教会の横とかにある看板というか、そこから来ているんです。スペースなしで、どこで区切るかで全然違う意味になるっていう。GOD IS NOWHERE(神はどこにもいない)なのか、GOD IS NOW HERE(神は今ここにいる)なのか。ものすごい極端なことがひとつの言葉でできてしまうっていうのが、すごく好きだったんです。昔から、いつか、使えたらいいなと思っていた。ライブで俺が出てたら、NOW HEREになるし、どっちに取るかは、あなたが決めてくださいねって感じです」

一般的な流れとして、アルバムを制作、リリースした後にツアー、というパターンが多いが、錦戸亮の場合は変則的だ。ツアーが先だったことも、ツアー途中でアルバムがリリースされたこともある。

「前は、アルバムを聴いて、曲を知っている状態で来るのがいいと思っていたけど、最近は開き直ってきて。初聴きがライブでも良くないか？ ってね。ツアーの途中でアルバムをリリースしたら、(アルバムを)聴かずにライブか、聴いてからライブか、選ぶこともできる。選択肢があるという、可能性の話。目の前で、生音で最初に聴くのも贅沢なんじゃないかなって、俺は思うから。自分を正当化しようとしているわけじゃなくてね。いや、ちょっとはしようとしてるかも(笑)。 曲も、初聴きで一言一句言葉や意味がわかるように歌うことも大事だろうけど、それは難しいから。
新曲に関しては、歌詞がわかったほうがいいだろうと、歌詞を映像の一環として流したりもします。要するに、原作を読んでから映画を観るか、観てから原作を読むかっていうイメージと似ているかもしれない。とにかく、来てくれた人にとって楽しい時間になるよう、がんばります。ファンクラブツアーを終えてから3カ月しかないけど、今よりレベルアップしていたいので。もう少々、お待ちください」