【インタビュー】中村佳穂
先入観を持たずにいろんな人を招き入れていく人生でありたい
昨年発表の『AINOU』が絶賛され、歌の力と先鋭的なサウンドの融合で一躍「次世代アーティストの筆頭」となった感のあるシンガーソングライターの中村佳穂。3年ぶりに出演した『FUJI ROCK FESTIVAL'19』では、初日のFIELD OF HEAVENのトップバッターながらオーディエンスが会場を埋め尽くし、「今年のベストアクト」という声も聞こえるほどの盛況だった。
「3年前に出たときに自分に足りないものを感じて、じっくりとサウンドを作ってきたので、今回お客さんがたくさん来てくれたことには感動したんですけど、地に足をつけて、冷静にライブができた気がします。前はライブになると『いつもは出せない力を出してやろう』みたいな感じだったんですけど、いまはバンドのみんなと作ったサウンドに気持ちよく歌を乗せることが、遠くまで届けるためのひとつの答えかなと思っています」
『FUJI ROCK FESTIVAL'19』では他の出演アーティストからも刺激を受け、特にグラミー賞にノミネートされたこともあるオーストラリア出身の4人組ハイエイタス・カイヨーテとの交流は、大きな気付きを与えてくれたという。
「彼女たちと仲良くなって、ライブを舞台袖で観させてもらったりしたんですけど、楽屋でもずっと踊ってて、その延長線上に演奏がある感じがしたんですよね。サウンドは冷静に考えられてるんだけど、本質的にはただ楽しんでる。そのバランスが絶妙で、私もそうありたいと思ったし、自分がもともと思ってたことに対して、『やっぱりこれで大丈夫なんだ』という気持ちにもなりました」
今年の夏は『FUJI ROCK FESTIVAL'19』以外にも、『Sweet Love Shower』や『新木場サンセット2019』といった数多くのフェス/イベントを経験。自らのライブのあり方を見つめ直す機会にもなった。
「私はどんなジャンルであれ、人に興味があって、先入観を持たずに『いい人はいい』と素直に思う自分であり続けたいし、同じことを思ってくれる人たちと一緒にいたい。自分が豊かであるために、自分を強く持ちながら、いろんな人を招き入れていく人生でありたいと思ってます」
7月からは馬喰町バンドとコラボレートした配信シングル「LINDY」、「q」、「Rukakan Town」を3ヶ月連続でリリースし、10月からは主催イベント『うたのげんざいち』をこちらも3ヶ月連続で開催中。
12月には自身最大規模となる新木場STUDIO COASTでの公演が控えている。
「『うたのげんざいち』は、私がそのときに興味を持ってる一番近しい人、気になる人たちをパッと集めて、『私の現在の位置はこちらでございます』というような私の今を切り取った一日にしたいと思っていて。なので、会場ごとにいろんな人を呼びたいんですけど、12月は一番大きな会場なので、とにかく何でもやりたい。今年最後のバンドでの公演になると思うし、総決算を見せつつ、新しい要素も入れながらやれたらなって」
さらに、来年の2月と3月にも東阪でのホール公演が決定。濃密な2019年を経て、さらなる高みを目指す彼女の姿が目撃できるはずだ。
「ホールは生音を意識して、フィルを入れたいなと思っていたり、照明も工夫したくて、最近はダンサーの人からアイディアをもらったりもしてます。まだもう少し近づいてみないとわからないことも多いんですけど、これから自分で自分がどんな曲を作るのかが楽しみだし、いろんな意味で挑戦的なライブになると思います」
プロフィール
中村佳穂
ソロ、デュオ、バンド、様々な形態で、その音楽性を拡張させ続けている京都出身のミュージシャン。'16年、'19年『FUJI ROCK FESTIVAL』に出演。'18年11月2ndアルバム『AINOU』をリリース。
公演情報
うたのげんざいち2019
12/10(火)19:00 東京・新木場STUDIO COAST SOLD OUT
タイトル未定
'20/2/24(月・休) 大阪・サンケイホールブリーゼ
'20/3/20(金・祝)ヒューリックホール東京
インタビュー・文/金子厚武
構成/月刊ローチケ編集部 11月15日号より転載