【インタビュー】中村一義
2024/6/15(土)
自分の音楽が生きた音として届けられることが何よりの喜び
中村一義が新バンド「一座」を結成し、今年に入ってから精力的にライブ活動を展開している。
その前身は、Hermann H. & The Pacemakersや100sのメンバーが中核をなす「海賊」だった。10人を超える大所帯となった海賊は、ヨースケ@HOMEの他界や、それぞれの状況や活動が相まって「事実上活動停止になっていた」と中村は話す。
「気づけば、ギターの三井律郎くん(THE YOUTH/LOST IN TIME)と2人だけになっていて。コロナ禍を経て、アコースティックツアーを回りながらも『バンドがやりたいよね』とずっと言っていたんです」
そこで、海賊の後期ドラマーだった吉澤響(セカイイチ)に声をかけ、セカイイチのサポートをはじめ様々なセッションで活躍しているベースの中村昌史、中村一義のサポートを務めた経験があるギタリストの伊東真一(HINTO/SPARTA LOCALS)と、コーラスのあずままどかを誘って一座は6人編成に。東京と大阪ですでに3回のライブを経験し、評判は上々だという。
「このバンドは今までと違ってキーボードがいないんです。鍵盤楽器って曲によって音色も種類も全然違うので、そこは音源から引っ張ってきて同期させ、その上でライブとして絶対に必要なアンサンブルを生で聞かせることが、僕の曲をよく知ってくださっているお客さんに喜んでもらう方法としてベストなのかなと。実際、僕の歴代のバンドを知る人たちからも、『過去一』だと言ってくれてますね。今まではなんだったのかな?という気がしないでもないけど(笑)、でも常に『今』が一番いいと言ってもらえるのはアーティスト冥利に尽きます」
そんな一座を引き連れ、来たる11月16日に中村は東京・大手町三井ホールでワンマンライブを開催。「今できることの全てを詰め込んだライブになる」と、その意気込みを語る。
「三井ホールは初めてなので楽しみです。着席スタイルなら音楽をよりじっくり聴いてもらえる機会になるでしょうし、より表現性の高いコンセプチャルなステージにしても楽しそう。奇しくも会場が三井ホール、一座のバンマスも三井なので、ライブのサブタイトル『三井へようこそ』はすぐに決まりました(笑)」
今年春には新曲「春になれば」をリリースし、前回のライブでも披露した。今回もまた新曲は聴けるのだろうか?
「レコーディングも一座と一緒にやれる曲があったらいいなと思い、デモ作りは始めていますが、体を2年くらい前に壊してからは、若い頃のように徹夜でレコーディングして・・・・・・みたいなことが難しくなってきました。毎日少しずつ作っている曲が良きタイミングで完成し、皆さんに発表する機会があればと思っていますし、それが三井ホールに間に合いそうなら披露したいですね。ただ、僕の曲はいかんせん難しいので(笑)、ライブまでに間に合うかどうか。一座ならやってくれるかもしれないですし、前向きに考えます」
そう笑顔で答えてくれた中村。これまで様々な表現方法を模索してきた彼が、バンドにこだわるのはなぜだろう。
「音源は音源でもちろん好きなんですけど、それをまた人前で披露するとなったとき『肉体性』として、バンドという表現スタイルがとにかく好きなんです。自分の音楽が、生きた音としてお客さんに届けられることが何よりの喜び。それは、僕が初めて組んだバンド100sからずっと変わっていないんですよ」
プロフィール
中村一義/なかむらかずよし
'97年、シングル「犬と猫/ここにいる」でデビュー。バンド、ソロでの活動を経て、'24年より新バンド「一座」を始動。
公演情報
中村一義 BAND LIVE 2024
『中村一座! ~三井へようこそ~』
- 11/16(土)17:30 東京・大手町三井ホール
インタビュー・文/黒田隆憲
構成/月刊ローチケ編集部 6月15日号より転載