【インタビュー】キズ
2024/10/15(火)
武道館は終わりでも通過点でもなく始まりの場所にしたい
「自分が感じ、自分が好きでやっている“ヴィジュアルロック”はいつだって儚く、感情的であるものだと思っていて、決してメイクとか見た目だけのジャンルではない。『令和のヴィジュアルロックが一番かっこいい』ということを僕らが証明したいです」
そう宣言してくれたのは、2025年1月6日、日本武道館単独公演「焔」をおこなうキズで、すべての楽曲の作詞・作曲を担っているフロントマン・来夢(Vo)だ。ここにきて、若手世代がヴィジュアル系というものを再定義することで、新たなムーブメントを引き起こそうと奮闘している現在のヴィジュアルシーン。そのなかで、白塗りなどの奇抜なメイクやド派手なファッション。そして、何よりも聴き手に簡単に寄り添うのではなく、リスナーの思考を呼び起こすような皮肉めいた一筋縄ではいかない歌詞を歌にして、鬼気迫る様相でパフォーマンスするライブが大きな反響を呼び、異例の勢いでいまや文句なしにそこから一歩抜きん出た存在となったキズ。しかし、来夢自身は「そう思ったことはないですけれど(笑)、飾らない一人ひとりのメンバーの言葉だったり意志だったりが皆さんに届いたんじゃないでしょうか」と冷静に自分たちの人気を分析している。
キズはそんな来夢を筆頭に、いまや来夢にとって「全員大切な家族みたいなもの」というreiki(Gt)、ユエ(Ba)、きょうのすけ(Dr)のラインナップで2017年春から始動。メンバーの名前は明かさず「アナタノ傷キカセテクダサイ!」というメッセージと電話番号を記載した声明文を公開し、3日間にわたって悩み、不満、不安などの電話相談をメンバーが受け付けるというバンドの始まり方。その当時から現在に到るまでバンド名の由来を「内緒です(笑)」と一切明かさないこと。
「僕一人で作詞作曲をしていて、1曲に込めるメッセージや内容が活動するにつれて濃くなってきているので、前作「鬼」も1曲に半年かかっているのでアルバムは出ません(笑)」と来夢が言うように、オリジナルアルバムを制作しないリリース形態。さらに「僕が書く内容はいつもいまを生きるにあたっての自分の思いなどを書いていて、ブログのように歌詞とか作品を残しているので、いつだっていまの生きざまをテーマに書いています」と語っている楽曲のなかには、現代の社会情勢や戦争に対して問題提起を思わせるものも多数あり、実際に彼らは広島や長崎で原爆投下があった日にライブをおこなったりもしている。こうしたキズの特異な試みや活動スタイルは、他のバンドとは一線を画している。
このような活動も話題となり、ライブの規模はどんどん拡大。そうして今年6月、国立代々木競技場第二体育館での単独公演のなかで、彼らはついに日本武道館公演を発表した。
「あのときの歓声はいまでも忘れられません」
発表したときの感動をそう振り返る来夢。武道館が決まった瞬間は「夢でもあり目標でもあったので、単純に嬉しかったです」と言いつつ、いまは「この場所は終わりでもなく通過点でもなく、始まりになるような場所にしたいと思っています」と考え、この記念すべきキズ初の日本武道館公演に「焔」というタイトルをつけた。
「武道館のテーマは、ありのままのキズです。いらないものを焼き尽くすのも、新しい時代に火をつけるのも、もうこの4人しかいないと思ったので「焔」というタイトルをつけました」
令和のヴィジュアルロックシーン、その新たな時代の幕開けとなるに違いない彼らの武道館。
「好きに楽しんでくれればいいですよ(笑)」
プロフィール
キズ
'17年に始動。来夢(Vo.&Gt.)、reiki(Gt.)、ユエ(Ba.)、きょうのすけ(Dr.)の4人からなるヴィジュアル系ロックバンド。
公演情報
キズ 単独公演「焔」
- '25/1/6(月)17:00 東京・日本武道館
インタビュー・文/東條祥恵
構成/月刊ローチケ編集部 10月15日号より転載