【インタビュー】伊東たけし＆エリック・ミヤシロ＆鳥山雄司（JAZZ FUSION SUMMIT 2025）

2025/9/15(月・祝)

フュージョンの歴史を一夜で体感！

渡辺貞夫（as）の「カリフォルニア・シャワー」（1978年）を皮切りに、1970年代の日本を席巻したフュージョン・ブーム。あれから約半世紀を経た現在、当時の良質な音楽が国内外で再評価され始めている。一連のシティ・ポップからすればフュージョンがひとつのルーツ・ミュージックとあって、当時リアルタイムで聴いていた世代だけではなく、20代、30代の新しいリスナーがブームを下支えしているのも特徴的だ。

そんなJフュージョンの歴史を一夜で体感できるコンサート『JAZZ-FUSION SUMMIT』が今年も開催される。出演はT-SQUARE、BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA、そしてPYRAMIDという3バンド。シーンを創り、牽引し、そして今なお進化させ続ける三者が一堂に会するまたとない機会だ。

中でもT-SQUAREは今年で3回目の出演となる。結成から49年という長い歴史を振り返れば、バンドは常に新しいDNAを取り入れ、その化学反応によって時代を象徴するサウンドを生み出してきた。そして今年また新たに20代の若き才能を新メンバーとして迎え、ニュー・アルバム『TURN THE PAGE!』をリリース。リーダーの伊東たけしは「ひとつのバンドが長く続けてこられた秘訣は、メンバー・チェンジがあったからこそ」と語る。

一方、結成から12年。いまや日本を代表するビッグバンドに成長したBLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA。リーダーのエリック・ミヤシロは「フュージョン・ファンは耳が肥えているから……正直、怖い」と本音を漏らす。しかしこのイベントにかける想いは特別で、「リスナーの期待に応えるために、『あの名曲をビッグバンドで!?』という驚きも用意している」と話す。

そして鳥山雄司、神保彰、今は亡き和泉宏隆という高校時代のバンド仲間で結成されたPYRAMID。彼らのサウンドは、70年代のクロスオーヴァーへのリスペクトに満ちている。「僕らが影響を受けた音楽を、今の自分たちが表現したらどうなるかという純粋な興味から始まった」と鳥山は振り返ったうえで、今回は「和泉くんが残してくれた音源と共演するような趣向も考えている」と明かしてくれた。

しかし、ここでひとつ疑問が湧く――フュージョンはジャズやロック、ポップスなどさまざまな音楽を飲み込みながら進化してきた。では今を生きるミュージシャンにとってのフュージョンとはなんなのか？そう問うと、三者三様の答えが返ってきた。

「正直、フュージョンが何者かは未だによくわからない。生まれた時から自然にミクスチャーしてきたからね。それが僕にとってのフュージョン」と語る伊東。

「先達の“完成されすぎたJフュージョン”には少しアレルギーがあった」という鳥山。そこから「僕らの音楽は『オルタナティヴ』なんじゃないかな」と分析する。

そして「常になにかを融合させ、新しい“なにか”を生み出すこと」と表現するエリック。

彼らの言葉からわかるのは、フュージョンという音楽が単一のジャンルではなく、時代と共に変化し続けるスピリットのようなものであること。そのスピリットを軸に展開される“JAZZ-FUSION SUMMIT”では、この日、この場所でしか聴けないアンサンブルが生まれる。ステージが終わる頃には、誰もが「やっぱフュージョンっていいな」と、その愛慕を再認識しているだろう。