【インタビュー】INSPi

2024/5/15(水)

INSPi

アカペラを続けてきたからこそ信じる“声”の伝わる力

INSPiにとって恒例のサマーツアーの季節が近づいてきた。昨年は『Sing A Lot』と題し、ワンステージで歌う曲数の限界に挑戦するも、初日の東京公演を終えた時点でリーダー・杉田篤史が体調不良で休場。名古屋と大阪を残る5人のメンバーで乗り切ったが、本人としては悔いの残る夏となってしまった。

「ピンチの時こそ支えなければ」というオーディエンスの思いが伝わるライブになったことを聞いた杉田は、ファンの温かさに感謝する一方、人生初となるツアー途中でのリタイアを経験し、リベンジを誓った。その中で、今回のツアータイトルを『Let's コエカツ!』とした。

「人の喜びや幸せってなんだろうと考えたときに、誰かと自分の心が通じ合っていると感じられる瞬間がそうなんだと思えて。これからの音楽人生を懸けて、いかにそういう機会を多く持てるかテーマにやっているのですが、その意味でも声が心を通じ合わせるのに、僕にとって一番の方法であると。それをやったらこうなるよというライブを考えています」

昨冬のツアーで観客に歌ってもらい、そこへメンバーが重ねる試みをしたところ、すこぶる幸せな空間になった。「コエカツ」とはアーティストだけでなくファンの声も活用することで、活力を共有する意味がこめられているのだ。

“歌う”の語源は「打ち合う」から来ている。つまり、他者の存在ありきで生まれた言葉となる。それを知った杉田は、その関係性こそがライブにおける究極の目指す形と考える。

「誰かが発した音に対し、誰かがまた音を発し合う『音を打ち合う』から来ているのが“歌う”だとするなら、僕らの行為は聴いてくれる相手に受け取ってもらって初めて、歌うという行為になる。それが自然発生的な声であれば、その人の心が見えるし、聴けたときに通じ合えた嬉しさを味わえる」

INSPiは「能登半島地震支援プロジェクト」を立ち上げ、水10万本という物資だけでなく、ラジオによって伝える応援メッセージを音声ファイルで募集した。スマホで手軽に動画を撮れるこの時代でありながら“声”の伝わる力を信じた。

目に見えるものはきれいにしたり整えたりできても、声は素材のまま届く。メールのように文字だけでコミュニケーションを取りがちな現代だからこそ、杉田はそれを重視する。23年間、アカペラというスタイルで勝負してきたINSPiならではの視点と言えるだろう。

彼らが舵を取ることで、支援したくてもどうしたらいいかわからなかった者たちが参加できる。人前で表現する立場によって得た支持を私欲ではなく他者のために使う――極めて真っ当だと思う。

「むしろ、自分のためだけだったら絶対に続いていなかったです。人間は一人じゃ何もできないから集まってやっていくしかない。音楽もそういう役割を担うものなんだと思います。スポーツやお祭り的なものって、社会の中に人が集いやすい場を作る上での中心を担っていますよね。INSPiを23年も続けさせてもらっているからこそ、社会に対しそういう場を作る使命は間違いなくあると思うんです」

気がつけば、音楽は好きだからやる対象ではなく、使命にまで昇華していた。人々が集まることの意義を実感するためのライブ…ステージ上から「一緒に歌って」と呼びかけずとも自発的ににじみ出るオーディエンスの声によって、そこはコエカツの場となる。

プロフィール

INSPi/いんすぴ

'01年メジャーデビューの6人組アカペラグループ。メンバーは北剛彦、大倉智之、杉田篤史、奥村伸二、吉田圭介、渡邉崇文。

公演情報

Let's コエカツ!

  • 6/22(土)15:00 宮城・誰も知らない劇場
  • 6/29(土)14:00/17:30 愛知・CLUB SARU
  • 6/30(日)14:00/17:30 大阪・ROCKTOWN
  • 7/13(土)15:00/18:30 東京・表参道GROUND
  • 7/28(日)18:30 神奈川・横浜ミントホール

インタビュー・文/鈴木健.txt
構成/月刊ローチケ編集部 5月15日号より転載

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