【インタビュー】INSPi
2021/10/15(金)
アカペラの枠を越えた調和とハーモニーによる20周年ベストテン
人間の声のみで奏でるアカペラ。通常ならば機材の関係で誰かがフロントに立ち、バックで演奏するメンバーと分けられたステージングとなるが楽器がない分、INSPiは6人全員が横一列となりハーモニーが成り立つ。
新型コロナウイルスの影響で人と人による横の繋がりがとりづらい今だからこそ、デビュー以来20年続けてきたそのスタイルの意義が改めて見いだされる。去る7月11日におこなわれた恒例の夏ライブ「アカペラ・オン・ザ・ビーチ」では、生配信のコメントを通じてファンもステージ上へ並ぶ形となった。
「対等な関係性にメンバー間を越えて、ファンの皆さんを含めてなっていきました。ステージの上と下という垣根が年々なくなってきていますよね。それが僕は心地いいんですよ。グループではなく、一人だったらこの波(コロナ)に飲まれていたかもしれないです。でもメンバーやお客さんとの手を離さなければ、お互いの調和した関係はどこに流されてもどんな状態になっても保てる。手を離さないことで気持ちを繋げるので」
リーダーでもグループの中で突出した存在にならないことにより、杉田篤史は調和の関係性を育んできた。デビュー時はみんなを引っ張らなければとリキんでいたが、ある時、TOKIOのリーダー・城島茂タイプだと助言されお手本にしたところ、自分もメンバーもやりやすくなったのだという。声出し禁止のライブであっても、ハーモニーの関係がオーディエンスと成立している。これこそが20年という年月をかけて培ってきたINSPiの財産。アカペラの神髄を味わった上で、11月の記念ライブへと臨める。
「リーダーとして持った唯一の目標が“長く続けること”だったんです。なので、ありがたいことにその目標はかなっている。デビュー当時に思い描いたサクセスストーリーは叶っていないことの方が多いですが、世界中をまわるなど思っていなかったこともいっぱいある。INSPiというバンド名は、インスピレーションとスピリチュアルから来ていて、人の魂に感銘や希望の光、生きる力を起こすような歌声をハーモニーで奏でたいというのがこめられている。この時代だからこそ、改めてそれを思いますよね。そういう名を背負っている以上は役割がある気がするんです」
20周年記念ライブでは事前にネットでアンケートをとり、ファンが聴きたい曲をベストテン方式で発表し、歌う企画が用意されている。そこにプラスし、その時点でメッセージとして伝えたい曲をセレクトする。
メンバーはバンドの活動と並行し全員が別の仕事をやっている。それぞれのスキルをあげることにより、気がつけばINSPiは得意技能を持ったスペシャリスト集団となっていた。
アカペラの枠を越えた、振れ幅の広い面白いチーム…人数こそ6人だが、いざという時に集結しとてつもない力を発揮する『七人の侍』のようだ。
「なんで一人ひとりがバラバラな人たちが20年も一緒にやれるんだろうという面白さ。こんな人たちが続けられるなら、自分がいるチームでも調和、ハーモニーができると思ってもらえたらいい。今回は『We 20(need you)』…あなたが必要なんだというサブタイトルがついています。悩んで、不安を抱えながら生き延びてきたからこそのこの場であるので、ここまで生きてきたお互いを感じ合える時間にしたいと思います」
プロフィール
インスピ
今年デビュー20周年を迎えるアカペラグループ。2005年より日立CMソング「この木なんの木」を担当。昨年12月にはシングル「All right!」をリリース。メンバーは吉田圭介、大倉智之、北剛彦、杉田篤史、渡邊崇文、奥村伸二。
公演情報
『INSPi ベストテン~We 20(need you)~』
- 11/7(日) 15:00 東京・表参道GROUND
- 11/7(日) 18:00 東京・表参道GROUND
インタビュー・文/鈴木健.txt
構成/月刊ローチケ編集部 10月15日号より転載