【インタビュー】GLIM SPANKY
異端、でも王道。GLIM SPANKYがシーンを変えていく
GLIM SPANKYのニュー・アルバム『LOOKING FOR THE MAGIC』が、11月21日(水)にリリースされた。映画『不能犯』の主題歌「愚か者たち」やテレビ朝日系ドラマ『警視庁・捜査一課長 season3』の主題歌「All Of Us」等を含む全11曲。「TV Show」と「Looking ForThe Magic」の2曲は、ロサンゼルスでレコーディングされ、The White StripesのJack Whiteのサポート・メンバーであるJack Lawrence(ベース)とCarla Azar(ドラム)が参加している。
アルバム・ジャケットを、LAのアートの名所、サルベーション・マウンテンで撮影することも今回の目的のひとつだったそうだが、レコーディングに関してはさらに得るものがあった、と、松尾レミと亀本寛貴は言う。
松尾レミ 最高でした。いちばんよかった点は、たとえば日本で録る場合、私たちが思ういいドラマーっていうのは、まずうまいこと、でもそれを飛び抜けてイビツであること、そのふたつがとても大事なんです。その両方が揃ったドラマーをいつも探してるんですけど、なかなかいなくて。でも今回、LAで叩いてもらったCarlaは、まさにそれなんですよね。『ここはこういう感じでクリックからずれていいですよ』とか、普段は一応説明するんですけど、それが一切必要なくて、託せば思ったものが返って来る。
亀本寛貴 そりゃそうだよね。だって、日本でやってる時は、僕らJack Whiteすごい好きだから、『ああいうふうに叩いてください』ってお願いするんだけど、その本人なんだから(笑)
松尾 あと、ミックスは日本でやってるんですけど、ほかの世にある日本の音と違うなって私が感じる点は、たとえばボーカルとか、ほんとはきれいにしなきゃいけない部分、唾液の音が鳴ったりとか、服の布が擦れる音とか、そういう雑音を全部カットせずに入れてくれてるんですよ。ドラムもギターもノイズをカットしない、録りっぱなし、っていう生々しさが、ロックのサウンドになっている理由のひとつかな、と思っていて。そこはすごい気に入っている点です。
『LOOKING FOR THE MAGIC』という、GLIM SPANKYがなんであるかを象徴的に表しているアルバムタイトルも、LAに行ったことで生まれたものだという。
松尾 ジャケット写真を撮ったサルベーション・マウンテンって、クルマで砂漠を4時間ぐらい走り抜けると、やっと辿り着けるところなんですね。それがすごい人生と重なったというか……。人生も、いろんなつらいことだったりとか厳しいことだったりを抜けた先に、たまーに幸せがある。それがその景色と重なって、今私が思ってることとも重なって。今までもそのきらめきを探し続けてきた、これからも探していこうっていう。
私が今まで11年間GLIM SPANKYをやってきたこともそうだし、LAでレコーディングできたこともそうだし、たまたま道で見つけた100円もそうだし。それってすべて魔法だと思ってるんですよ。日々の魔法、ミラクル、きらめき。そういうものってみんな探してない?ってすごい思ったんです。やっぱり常に私たちは、生きていく中で、いろんなきらめきを見つけて、些細なことに幸せを見出して……っていう、そういう感情を共感したいなって思って。
70年代の英米のロックを受け継いでダイレクトに鳴らすGLIM SPANKYのロックンロールに、最初に飛びついたのは、長くロックを聴いてきた大人の音楽ファンだった。
逆に、邦楽フェスでオーディエンスが大暴れできるような、ファスト&ラウドで発散型なバンドが主流だったシーンにおいては明らかに異端、それが彼女たちでもあったわけだが、5月12日(土)に初の日本武道館ワンマンライブを大成功に終わらせるなど、じわじわと、しかし確実に、メイン・ストリームに歩を進めつつある。彼女たちの台頭によってシーンが変化してきたという部分もあるのかもしれない。
「確かに、時代が変わってきた感はありますね」と松尾。「正直、それはありがたいなと思っています。数年前は速いBPMの四つ打ちのバンドが最強、みたいな感じだったけど、今はだいぶ変わってきたなと思う」と、亀本も言う。
亀本 ただ、そうなるともっと欲も出ちゃうというか。変わったとは言ってもフェスではウワーッて盛り上がるバンドの方が主流だから。
松尾 そうだね。私たちは、自分たちはかっこいい音楽を作っているという自信を持ってやっているので言うのですが、ちゃんとかっこいいロックを作ってるバンドが、でかいステージにどんどん出て行く日本であってほしいっていう欲が、やっぱりありますね。
プロフィール
グリムスパンキー
松尾レミと亀本寛貴のロック・ユニット。'14年にデビュー、'18年5月12日には日本武道館ワンマンを成功させた。
公演情報
LOOKING FOR THE MAGIC Tour 2019
'19/3/2(土)18:00 長野CLUB JUNK BOX
3/3(日)18:00 長野CLUB JUNK BOX
3/10(日)18:00 横浜ベイホール
3/15(金)19:00 盛岡CLUB CHANGE WAVE
3/17(日)18:00 郡山CLUB ♯9
3/21(木・祝)19:00 神戸CHICKEN GEORGE
3/22(金)19:00 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
3/24(日)18:00 周南RISING HALL
4/4(木)19:00 静岡SOUND SHOWER ark
4/6(土)18:00 熊本B.9 V1
4/7(日)18:00 鹿児島CAPARVOホール
4/9(火)18:30 京都・磔磔
4/11(木)19:00 松山サロンキティ
4/13(土)18:00 高知キャラバンサライ
4/14(日)18:00 高松MONSTER
4/26(金)19:00 長野・松本a.C
4/28(日)18:00 新潟LOTS
4/29(月・祝)18:00 石川・EIGHT HALL
5/3(金・祝)19:00 札幌PENNY LANE24
5/4(土・祝)18:00 札幌PENNY LANE24
5/11(土)18:00 愛知・ダイアモンドホール
5/12(日)18:00 愛知・ダイアモンドホール
5/18(土)18:00 なんばHatch
5/24(金)19:00 広島クラブクアトロ
5/25(土)18:00 福岡DRUM LOGOS
5/31(金)19:00 仙台Rensa
6/8(土)18:00 豊洲PIT
インタビュー・文/兵庫慎司
写真/篠塚ようこ
構成/月刊ローチケ編集部 12月15日号より転載