【インタビュー】藤原さくら

2025/11/15(土)

藤原さくら

武道館は今までの集大成であり、それを新しい形で表現したい

今年3月にデビュー10周年を迎えた藤原さくら。2024年初夏に耳と発声の不調によって歌唱活動を休止していたが、今年4月から少しずつ再開。夏には1年ぶりのワンマンにして、初となるブルーノート東京でのライブをおこない、6月には5thアルバム『wood mood』でトータルプロデュースを務めたジャズドラマーの石若駿と再タッグを組んだ新曲「Angel」をリリースした。

「前のアルバムは“森の中に迷い込んでいく”というコンセプトで作ったんですけど、自分の精神状態も反映していたなと思っていて。当時は、自分の思考という迷路で迷子になっていた感覚でした。新曲はそこに光が差し込んで、この迷路から抜け出せたらいいなという気持ちで作り始めたんですが、石若さんをはじめ、ジャズのメンバーが一緒にいるとセラピーを受けてるような感じがあって。スピリットが自由で根幹のところがカラッとしてる。ただ音楽が好きでやってるだけで、全然気負ってないんですよ。そんな彼らを見ているうちにどんどんと自分の視界が開けてきて、身軽になっていきました」

そして、心と体を軽くしてくれる“言葉”や“気付き”を「私を導いてくれるエンジェル」と例えた楽曲に続き、今年10月に配信リリースされた新曲「scent of the time」は、山梨県西湖での制作中に生まれたのだという。

「一人で行動しながら自然に触れる時間が長かったんですね。普段はどうしても携帯をずっと見ちゃったり、いろんなことを頭の中でぐるぐる考えたりしてしまうんですけど、いい意味で、何も考えない時間を取れて。ある日、湖面が光で輝いているのをぼうっと眺めてたら、涙が出てきたんですよ。病んでる?って感じですけど(笑)、木々のざわめきや風、湖や光といった自然と自分が一つになった感覚があった。自然と一体となって自我を手放すというか。もちろん、エゴが大事な時もあるんですけど、今の私は、自分の頭だけで完結するのではなくて、場と調和するという感覚が必要だったんだと思います」

思考の迷路という森を抜け出した彼女が湖畔に立って口ずさんでいる風景が目に浮かぶ楽曲。サウンドはシネマティックなヒーリングミュージックであり、「Angel」のサルサに続き、ボレロがフィーチャーされている。

「そもそもワールドミュージックが好きだし、今の自分には南のエッセンスがフィットしてて。今まではたくさんの服を着込んでいた感じなんです。それが防弾チョッキのように自分のことを守ってくれてたけど、今はもう衣替えする時期なのかもしれないなって。タイに行った時に虫の音を録ってきたりもしてるし、どんどん環境と自分が溶け込んでいくような感じになってる。次のアルバムではもっと自然にありのままに、薄着になっていく作品を作りたいですね」

冬から春が来て、また夏になるように、四季を繰り返すのは誰の人生にも同じこと。10年目の今、夏の風に溶け出した彼女はキャリア初となる日本武道館公演の開催が決定している。

「この10周年というタイミングで武道館ができるのは、どんどん新しいことに挑戦してきた私らしい締めくくりだなと思います。今までの集大成になるでしょうし、それをまた新しい形で表現したい。また、私は自分の今の気持ちを包み隠さずに話すタイプのアーティストだと思うんですけど(笑)、より今のありのままの自分を表現したいし、できるだけ気負わずに、精神的に薄着になった姿でその場に立ちたい。昨今、みんなも考えすぎの傾向にあると思うので、私がいろんな人に与えてもらったヒントをみんなにもシェアできる場になったらいいなと思いますね」

プロフィール

藤原さくら/ふじわらさくら

天性のスモーキーな歌声は数ある女性シンガーの中でも類を見ず、聴く人の耳を引き寄せる。ミュージシャンのみならず、役者、ラジオDJ、ファッションと活動は多岐にわたる。

公演情報

藤原さくら 10th Anniversary 武道館大音楽会

  • '26/2/23(月・祝) 17:00 東京・日本武道館

インタビュー・文/永堀アツオ
構成/月刊ローチケ編集部 11月15日号より転載


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