NBSの〈旬の名歌手シリーズ〉2025年4月には、目下人気・実力ともに世界中で認められているソプラノ、リセット・オロペサが登場。2022年には同シリーズでルカ・サルシとのデュオ、2023年にはローマ歌劇場で来日したが、今回はいよいよソロ・コンサートが実現。今回のプログラムについて、また得意とするレパートリーについて、さらに今後取り組む初役についてなど、丁寧に答えてくれたメール・インタビューをご紹介する。
「私にとって、コンサートの聴衆のためにアリアを準備する最良の方法とは、実はアリアがはじまる前にあります」
――今回は待望の日本での初ソロ・コンサートになりますが、今回のプログラムの選曲について教えていただけますか?
「2つのコンサートで、モーツァルト、ロッシーニ、ドニゼッティ、ヴェルディ、ベッリーニ、マイアベーアなどの作曲家のアリアを含む、多彩なプログラムを用意できたことをとても嬉しく思っています!両日とも、多くのプロジェクトで共演してきた素晴らしい指揮者、コッラード・ロヴァーリスさんがオーケストラを指揮してくださいます」
――コンサートでは、あなたはたった一つのアリアで聴衆に役柄のイメージを伝えます。声と存在感の両方で聴衆にどのように伝えようと意識していますか?オペラで役を表現するのと、コンサートにおいてアリアだけで表現することでは、どう違いますか?
「素晴らしい質問!私にとって、コンサートの聴衆のためにアリアを準備する最良の方法とは、実はアリアがはじまる前にあります。アリアはつねに、登場人物が何かに反応して生まれた感情を聴衆に向けて表現します。準備は音楽の導入部で行われていて、導入部分をよく聴くと、すぐに感情が伝わってきます。また、アリアの途中で登場人物のおかれた状況が変わり、突然何かが起こり、ヒロインの感情が変化することもありますが、それが起こったときは、私の表情、声の色彩、ボディランゲージで表現するようにしています」
――あなたはロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティのオペラのヒロイン役で有名です。歌手として、これらのベルカント・オペラの作曲家たちの特徴についてどう思いますか?また、コロラトゥーラの名手として、これらの作曲家のコロラトゥーラはそれぞれ違いがあると思いますか?
「ここに挙げられた偉大なベルカント・オペラの作曲家たちは皆、真の天才でした。彼らはそれぞれ独自のスタイルと、歌手が彼らの音楽を歌うときに表現しようとする「特徴」を持っています。ロッシーニの魅力は、たとえば、私が今度のコンサートで皆さまに歌う、彼のもっとも叙情的なアリアの一つ『ギヨーム・テル』の「暗い森」にあります。ロッシーニといえば速いコロラトゥーラをたくさん思い浮かべますね。しかし、彼は実はオペラの中でも最も美しいメロディーをいくつか書いており、このアリアはその素晴らしい例です。
ベッリーニも美しい旋律の名手でしたが、私がこのコンサートで歌う、『夢遊病の女』のカバレッタは、コロラトゥーラ・ソプラノのための、彼の非常に技術的な作曲法を示しています。ドニゼッティからは、『ランメルモールのルチア』のドラマティックなアリアがあります。歌唱重視から劇性を強調するようになったことは、後にヴェルディに影響を与えました。私はキャリアの中で、これらの作曲家の作品を数多く歌えることを非常に光栄に思います!」
――ベルカント・オペラのアリアで、とても美しい装飾"ヴァリエーション"を歌われていますね。ご自身のヴァリエーションをどのように創られるのか、また参考にするものはありますか?
「最近では過去に録音された素晴らしい参考資料があり、楽譜自体にもヴァリエーションのオプションがあります。もちろん、ジョーン・サザーランドやベヴァリー・シルズ、マリア・カラスなどの歌手に関連した伝統はありますが、どの歌手も独自の特徴を残そうとしており、新鮮なアイデアを思いつく自由があります。私は自分のカデンツァを書く(歌う)のが好きですし、それが様式に合っていて、指揮者が同意してくださる限り、その瞬間に取り入れるのは楽しいです」
「私にとって、モーツァルトは音楽の訓練において基準となる作曲家です」
――ベルカントの作曲家たちに加え、モーツァルトもあなたのレパートリーにおいて重要な作曲家です。モーツァルトについて、どう考えていらっしゃるか教えてください。
「私はモーツァルトの音楽が大好きで、今度のコンサートでは『後宮からの逃走』からモーツァルトが書いたソプラノの代表作、火花が散るような技巧の素晴らしいアリアを歌う予定です。この曲は技術的な難しさでいっぱいです!大きな飛躍、音階、スタッカート、長いフレーズ、低音から高音まで......歌うのはとても難しいです。でも、私はこのアリアが大好きで日本に持っていきたいと思いました。私にとって、モーツァルトは音楽の訓練において基準となる作曲家です。私は長年フルートを学び、彼の曲をたくさん演奏しました。声楽を正式に学び始めたとき、モーツァルトの声楽の書き方と器楽の書き方に多くの類似点があることに気づきました。なぜなら、彼の曲は技術的に歌うのが難しいだけでなく、感情的に満足感を与えるものでもあると思うからです......ほんの数フレーズでも泣けてきます......。
モーツァルトは史上最高の作曲家だと思います」
――今後、デビューを予定している役はありますか?
はい、新しい役は常に考えています!日本に行くまでに、マドリードで『マリア・ストゥアルダ』(ドニゼッティ作曲)、パリでベッリーニの『清教徒』のエルヴィーラ役を初めて舞台で歌います(※演奏会形式ではすでに歌っている)。次に準備するのは、英国ロイヤル・オペラでの『ファウスト』(グノー作曲)のマルグリート役で、『ノルマ』(ベッリーニ作曲)の勉強も始めています。
――オペラアワードの2024年最優秀女性歌手に選ばれました。おめでとうございます!報せを聞いたとき、どう思いましたか?
ありがとうございます!このような評価をいただき、とても光栄です。ただ、本当のところ歌手を順位付けできるとは思っていません。すべては非常に主観的なものです。このような栄誉を受賞していなくても並外れて素晴らしい歌手もいますし。受賞は嬉しいことですが、観客とのつながりを感じ、自分の仕事に満足していることの方が重要です。最高の歌声を披露し、素晴らしい音楽を愛する観客のために、自分の愛することをしているときの素晴らしい気持ちに勝るものはありません。
――日本のファンにとっては幸運なことに、2022年以来、定期的に日本に来られています。日本でのお気に入りはありますか?
これまで何度か日本に来ることができて光栄でしたが、毎回とても楽しかったです!!人々は素晴らしく、風景や街も素晴らしいと思います!私の夫も日本が大好きなので、一緒に過ごして日本にもっと親しむことができて嬉しいです。日本の素晴らしいオペラ・ファンの皆さま、いつも応援ありがとうございます......皆さまのために歌うのは素晴らしいことですし、皆さまが音楽を本当に愛していることを知っているので、いつもとても幸せです!皆さま、ありがとうございます!!
メール・インタビュー/2024年11月に実施
公益財団法人日本舞台芸術振興会 WEBサイトより 転載
「リセット・オロペサ ソプラノ・コンサート」公演情報│ローチケ[ローソンチケット]