クラシック

【インタビュー】吉見友貴 ピアノ・リサイタル

【インタビュー】吉見友貴

【インタビュー】吉見友貴

エリザベート王妃国際コンクールのファイナルでの演奏でも注目を集めた吉見友貴が、東京・大阪でピアノ・リサイタルを開催する。そんな彼に、公演について話を聞いた。



――今回のプログラムについて教えてください

今回のリサイタルでは、新しく取り組む作品をあえて多く取り入れました。リサイタルのコンセプトを先に考えて選曲したというよりも、いま、私が取り組みたい作品を中心に選曲しています。
リサイタル前半は、時代の流れと民族的なエッセンスを軸にプログラムを組んでいます。まず、モーツァルト《ピアノ・ソナタ》K.570 とバルトーク《ピアノ・ソナタ》を選びました。ピアノ・ソナタというものが、作曲された時代によってどのように変化していったか、お楽しみいただけると思います。ただ、バルトークは民族色の強い音楽なので、プログラムの流れを考えて、モーツァルトとバルトークの間に私が長く愛奏しているショパンの《マズルカ》op.56をはさみました。


――プログラム冒頭は、モーツァルトの《幻想曲》K.397と《ピアノ・ソナタ》K.570ですね

モーツァルトは、今後さまざまな作品に取り組んでいきたいと思っており、いつか彼のピアノ・ソナタの全曲演奏にも取り組んでみたいです。今回はそのなかでも私の中で一番ピンときたのが、K.570のピアノ・ソナタでした。数年前に聴いたあるアルバムに収められていたこの曲の演奏が素晴らしく、そのイメージもずっと私の心の中にありました。今回はこのソナタと幻想曲、2つのモーツァルト作品をお送りします。


――ショパンのマズルカの中で、このリサイタルではop.56を取り上げます

私は幼いころからショパンの音楽が大好きで、ショパンの音楽とはなんとなく気が合うといいますか、彼の作品の楽譜を見た瞬間、「ショパンはこんな音楽を想像していたのかな」と、私にとっては肌感覚で理解しやすい作曲家のひとりです。
《マズルカ》op. 56は、ショパンの円熟期の作品。3曲で構成されていますが、それぞれの中にドラマがたくさん詰まっています。


――バルトークの《ピアノ・ソナタ》は長年演奏しているのですか?

私のレパートリーはロマン派の作品が多いので、バルトークは普段のレパートリーとは少し異なるのですが、自分への挑戦の意味も含めて新しいスタイルの作品を演奏したいと思い、今回取り入れました。彼の《ピアノ・ソナタ》は、新古典主義的な要素を含みながら、無駄なものがそぎ落とされ、緻密に構成された作品で、同時に彼のカラーもとても現われている作品だと思います。リサイタルでその前に演奏するモーツァルトとショパンとはまったく違う世界を楽しんでいただければと思います。


――シューマンの《クライスレリアーナ》についてはいかがですか?

基本的に、リサイタルの前半と後半とを切り離してプログラムを考えることが多いのですが、今回は、プログラム後半のシューマンの《クライスレリアーナ》をメインとしています。
私にとって長年憧れの曲だったのですが、意外とこれまで取り組む機会がなく。今回の機会にどうしても演奏したいと思い、今回のリサイタルで初めて披露します。
この曲は、シューマンに怒られるかもしれないですけど、ある意味ではとっちらかっていると言いますか(苦笑)、曲調の変化が多い作品。それも徐々に変っていくのではなく、「えっ!?」と驚くような大胆な変化が多くみられますし、8曲で構成されているものをいかに、ひとつの作品として仕上げていくかがとても難しいです。キャリアを通して今後も深めていきたい作品の一つなので、このリサイタルが試金石になればと考えています。 シューマンがこの曲を作曲したのは、20代後半。今の自分はその当時のシューマンよりも少し若いですが、20代ならではの若いエネルギーに満ちあふれた演奏できればと思っています。


――今回のリサイタルは、東京・浜離宮朝日ホールで行われます

過去にも何度か演奏しているホールですが、とても響きが良く、弾いている自分も豊かな響きに包まれるような気持ちになります。


――同じプログラムを大阪のフェニックスホールでも演奏されるそうですね

小学生のころ、全日本学生音楽コンクールの予選と本選の時に演奏しました。思い出深いホールです。


――読者のみなさまにメッセージをお願いいたします

楽しんでいただけるのが一番だと思っています。リサイタルに足を運んでくださったお客さまに、「今日はいい一日だったな」と思っていただけるように頑張ります。


取材・文/道下京子

掲載開始日/2025年11月20日


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