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【リハーサル・レポート】ディズニー・ワールド・ビート 2025

【リハーサル・レポート】

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「ディズニー・ワールド・ビート 2025」全国ツアー開幕!
ジャズで巡るアメリカ旅に大興奮!!

ディズニー音楽を豪華ビッグバンドのグルービーかつ大迫力のサウンドでお届けする「ディズニー・ワールド・ビート」。ジャズを筆頭にラテン、ソウルなど、バラエティー豊かなリズムにアレンジされたディズニーの名曲を、総勢21名の実力派バンドメンバー&シンガーが圧巻のパフォーマンスで披露するコンサートツアーが今年も開幕した。4月29日(火・祝)まで、全13公演が開催される同ツアー。4月5日(土)、北とぴあ さくらホール(東京都北区)で迎えたプレミア・ナイト前日に行われた公開リハーサルの模様をレポートしよう!音楽監督兼バンドリーダとして、21名の出演者を率いるブラッド・ケリーさんへ終了直後に行ったインタビューのコメントと共に紹介するので、ぜひご一読を!!

第1部は『ピーター・パン』より「右から2番目の星」でスタート。開幕を告げるMCの仰々しいアナウンスなどは一切なく、演奏でいきなり始まるのが何ともカッコイイ。次に披露される『アラジン』からの「ひと足お先に」は、音楽監督のブラッド・ケリーさん(以下ブラッドさん)による新アレンジなのだそう。北インドの古典音楽で使われる弦楽器のシタールを彷彿とさせる音色が入っていたりして、『アラジン』の世界観に絶妙に寄り添うインスト演奏だ。続く「あこがれの夏」(『アナと雪の女王』より)は一服の清涼剤のような心地よさ。

02-1アラジン

「町のクルエラ」(『101匹わんちゃん』より)「ゼロ・トゥ・ヒーロー」(『ヘラクレス』より)「ベラ・ノッテ」(『わんわん物語』より)ではLAから来日したシンガー4人の歌唱が加わってより華やかなステージに。悪女・クルエラになりきって歌うマンディ・ディクソンをはじめ全員ハンパない歌唱力だ(『アメリカン・アイドル』に出演歴があったり、自身のアルバムをリリースしたばかりだったりと多彩な経歴を持つシンガーたちの紹介は、MCも務めるブラッドさんがしてくるので4人全員に親近感がすぐわくのもうれしい)!ミートボール・スパゲティを仲良く食べる『わんわん物語』の名シーンを、スクリーンで見ながら聴く「ベラ・ノッテ」は贅沢な気分に浸れるだろう。

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第1部の最後に用意されているのは、「ディズニーランド&ジャズメドレー」と題した特別演奏だ。今年70周年を迎えるアメリカ・カリフォルニア州アナハイムにある「ディズニーランド・リゾート」から、アトラクションやショーに焦点を当てたスペシャル・メドレーが披露される。テーマパーク内では1950年代から「デイトナイト・アット・ディズニーランド」などと銘打ったジャズのイベントが多数行われ、あのウォルト・ディズニーもダンスを楽しんだのだとか。「レッツ・ダンス・アット・ディズニーランド」は、そんな古き良き時代のビッグバンド・ジャズの雰囲気がたっぷり!日本でもおなじみの「イッツ・ア・スモールワールド」からの「小さな世界」や「魅惑のチキルーム」の「チキ・チキ・チキルーム」など4曲のメドレーでは、シンガーたちの歌声だけでなく息の合ったダンスにも注目して。

08-1-1レッツ・ダンス・アット・ディズニーランド

そしてメドレーの最後を飾るのはジャズのスタンダード・ナンバーとして知られる「シング・シング・シング」。軽快だけと重厚感もあるドラムのビートから始まって、ホーンセクション(トランペット、トロンボーン、サキソフォンで構成されるアンサンブル)がノリノリでリズムを奏でると、客席にいるこちらも自然に足を鳴らし、体を揺らしてしまうほどの一体感が会場を包み込む。赤と緑を軸にした照明演出も心憎く、「ビックバンドの演奏で踊るのってめっちゃ楽しそう!」と実感できるはずだ。

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そうそう、第1部では日本語検定の5級に昨年、見事合格したブラッドさんの日本語MCとピンク色のジャケットも必見(必聴)だ!

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「1998年の初来日から何百回とステージに立ってきた日本には大切な仲間がたくさんいて、第二の故郷のように思っているんだ。日本語を学ぶのも日本語でのMCに挑戦するのも日本の観客により楽しんでもらいたいから」と語る彼には、頭が下がるばかり。さらにピンクのジャケットは「桜の季節に合わせようと思って。ロスのダウンタウンにあるファッション街で見つけたんだ」とのこと。また御年73歳にして、ほぼ立ちっぱなしでトロンボーン演奏や指揮をしたかと思えば歌声まで披露。ステージでのマルチタスクぶりは聖徳太子かブラッドかと突っ込みたくなるほど。「健康な限りは戻ってきたい」と語る彼には体に気をつけてもらって、できる限り長く続けてほしい!そう願わずにはいられない。

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第2部のテーマは、「ストーリー・オブ・ジャズ」。ジャズが生まれたアメリカ・ニューオリンズから出発し、カンザスシティやシカゴ、ニューヨーク、そしてロサンゼルスをロード・トリップ(車旅)でめぐりながら、ジャズの歴史を紐解いていくという構成で進行するプログラムだ。シンガー4人は歌うだけでなくラジオDJに扮して、ジャズと各都市のつながりを簡単にレクチャーしてくれるので、ジャズ初心者にとってはありがたい限りだ。

まずは「ルート66」の演奏からスタート。『カーズ』でも使用されたジャズのスタンダードは、アメリカのロード・トリップの代名詞とも言える国道の名前がタイトルになった曲。オープニングを飾るのにこれ以上ふさわしい選曲はないだろう。そしてジャズ発祥の地からは「それがニューオーリンズ」「もうすぐ人間だ」をセレクト。2曲ともジャズマンであるブラッドさんが音楽的にも大好な作品だと語る『プリンセスと魔法のキス』からの楽曲だ。「これぞビッグバンドで聴くべき」というリズム&サウドのナンバーは気分がアガルこと請け合い!今回で4回目のツアーとなる「ディズニー・ワールド・ビート」で演奏を務めるブラッド・ケリー・ビックバンドのメンバーは、ジャズ音楽界の第一線で活躍する超豪華なタレント揃い。ブラッドさん曰く「初回から参加してくれているメンバーもいて、年を経るごとに仲良くなっているし、セッションを積み重ねるごとに味のあるサウンドや緻密なアンサンブル、軽妙な即興などがより一層出てくるように。日々成長しているんだ」とのこと。一流ミュージシャンたちとのコラボが楽しくて仕方がないという表情のブラッドさんだが、きっと持ち前のフレンドリーさでメンバー同士の距離を縮めて結束を強めていったのだろう。

いっぽうビックバンドとはミスマッチな印象を受ける「美女と野獣」(『美女と野獣』より)や「2ペンスを鳩に」(『メリー・ポピンズ』より)といったナンバーの選曲も。こちらの心配をよそに、「このノリの良いアレンジでダンスしてたら、ベルと野獣は秒で打ち解けてたはず」なんて思えるほど、違った”風景”が見える演奏に。「2ペンスを鳩に」のほうは逆にしっとりとした演奏(冒頭で登場する木製の大きくて長い笛のようなものは、ブラッドさんによるとハーモニック・フルートと呼ばれる管楽器とのこと)に加え、クリフ・サンローランのハイトーン美ボイスも手伝って不覚にも目頭が熱くなるほど。

シング・シング・シング

シカゴでは同地で生まれたベニー・グットマンゆかりの音楽をフィーチャー(ちなみにウォルト・ディズニーもシカゴの出身)。演奏されるのは、“スウィング・ジャズの王様”の異名を持つベニー・グッドマンが自身の楽団を率いてレコーディングしたことで知られる「みんなジャズがお好き」だ。ディズニーのオムニバス・アニメーション映画『メイク・マイン・ミュージック』(1946年)の短編の1つに同ナンバーが全編にわたって使用されていることから、その映像に合わせた形で演奏される。当時のアメリカン・カルチャーも感じつつ、大人も楽しく見られる演目となっている。さらにニューヨークでは『ファンタジア/2000』でフィーチャーされた「ラプソディ・イン・ブルー」、そして「A列車で行こう」の演奏が。NYの古い映像を見ながらジャズの名曲に耳を傾けているなんて何とも贅沢な時間!

旅の終着地であるロサンゼルスからは、昨年公開された『モアナと伝説の海2』のスペシャルメドレーの演奏が。同作の音楽を担当した1人であるエミリー・ベアーは、あのクインシー・ジョーンズに見出された若き音楽家で、ジャズピアニストとしても活躍しているそう。そんな彼女が手がけたナンバーが大海原をボートで進むなどのアニメーション映像と一緒に演奏されるため、臨場感がハンパなしだ!

最後にあるアンコールの演奏では、一部のメンバーがステージに降りてきて演奏する場面も。一瞬だが間近で聴く楽器のド迫力に触れられるのもいい思い出になるだろう。20分の休憩を含めて約2時間半のプログラムは、素晴らしい演奏とよく練られ構成・演出によって、一級のエンターテイメントに仕上がっている。さらにブラッドさんを筆頭に演者が楽しんでいるのが手に取るようにわかり、見る側もつられて楽しくなるのも、このライブの特徴と言えそう。これまでビックバンドとは無縁だった人には、ディズニー音楽を介して新たなジャンルの音楽に生で触れる絶好の機会。またディズニー音楽を敬遠していたジャズファンにとっても目から鱗の衝撃体験になるはず。ぜひ足を運んでみて!

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取材・文/山本航

掲載日/2025年4月16日(水)


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