ヴァイオリン郷古廉、チェロ佐藤晴真
協奏曲と「新世界」のコンマス&首席奏者に挑む!
次代を担う若手音楽家のなかでも人気、実力ともにトップクラスのヴァイオリン郷古廉、チェロの佐藤晴真。協演を重ねて信頼しあう2人がこの秋、飯森範親の指揮でソリストとしてともに協奏曲を弾いた後、コンサートマスター&チェロ首席奏者としてオーケストラで交響曲を演奏するという、意欲的なコンサートにチャレンジする。
郷古はティボール・ヴァルガ・シオン国際コンクールで優勝し、各地のオーケストラでソリストを務める傍ら、ベート-ヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏シリーズに取り組むなど室内楽でも充実した活動を展開している。今年春にはNHK交響楽団ゲスト・コンサートマスターに就任したことでも話題になった。
一方、佐藤は2019年のミュンヘン国際コンクールチェロ部門で日本人初の優勝を果たして、一躍脚光を浴びた。ベルリンと日本を拠点に、国内外のオーケストラと協演を重ねるほか、名門ドイツ・グラモフォンより3枚のアルバムをリリースするなど目覚ましい活躍を見せている。
2人は2022年秋と2023年春に室内楽で協演し、意気投合。今回はブラームスの《ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲》でコンチェルト初共演を果たす。技巧的なカデンツァ、美しいヴァイオリンとチェロの対話、ブラームスならではの豊潤なハーモニーなど、聴きどころの多いコンチェルトだけに、2人の情熱がどんな化学反応を起こすのか、楽しみが尽きない。
そして、なんと言っても話題を集めそうなのがプログラム後半。2人が日本センチュリー交響楽団のコンサートマスター席とチェロトップ席に座り、ドヴォルザーク《交響曲第9番「新世界より」》を演奏するというのだ。
郷古は「コンチェルトだけでなくシンフォニーのコンマスもお願いしたいと言われ、率直にやってみたいと思いました。交響曲を弾くのは僕にとって喜び。数年前からソリストはコンチェルトだけ弾くという姿勢で良いのか、考えるようになっていました。コンサートマスターとして少しずつ交響曲を弾けているという今はすごく楽しいです」と語る。
「郷古君がやるならば、僕も逃げるわけにはいかない」と語る佐藤は、「コンチェルトを弾くのとオーケストラのトップで演奏するのでは、頭の中のアンテナの張り方が全く変わるので緊張感と責任感がありますが、僕自身楽しみたい」と意気込みを語る。
ブラームスと、ブラームスによって見出されたドヴォルザーク。今回のプログラムについて郷古は、「それぞれがとても華やかだけど、質感や輝き方が違う作品。飯森さんは、よくありがちな演奏を嫌っている方だと思うので、僕としてはその辺りの気持ちも共有できそうだと感じています。是非期待して聴きにいらしてください」と語る。
伝統あるザ・シンフォニーホールで、フレッシュな2人がどんな音楽を聴かせてくれるのか、大注目の公演になりそうだ。
取材・文/出水奈美
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