クラシック

【インタビュー】5 STARS 大岩宝新 ヴァイオリン・リサイタル

【インタビュー】5 STARS 大岩宝新 ヴァイオリン・リサイタル

【インタビュー】大岩宝新

中学1年にてコンクールで全国1位となり、以来その煌めく才能に注目を集めているヴァイオリニストの大岩宝新が、東京・浜離宮朝日ホールにてリサイタルを開催する。新時代を担うべき若き音色は、どのような響きと彩りをみせてくれるのだろうか。話を聞いた。


――ヴァイオリンをはじめたきっかけは?

小さい頃、近所に音楽教室ができたのがきっかけで、友達と一緒にヴァイオリンとピアノを習ってみることになりました。


――ヴァイオリンへの気持ちが本格的なものになってきたのはいつ頃でしたか?

小学校3年生の時です。本格的に音楽をやっていくには1つの楽器に集中した方が良いと思い、ヴァイオリンに専念することにしました。最初は、コンクールに出てもなかなか結果が出ませんでしたが、6年生頃から少しずつ嬉しい評価をいただけることが増えました。
ヴァイオリンは、弓を弦にあてる重さや、弓とヴァイオリンの角度で音色がすごく変わり、多種多様な音が出せることが、ヴァイオリンの魅力だと思います。


――第73回全日本学生音楽コンクールの中学校の部で中学1年生にして全国大会1位となりました。ご自身での手ごたえや、周囲の反響などはいかがでしたか?

コンクールの舞台では、自分の音楽を信じて全力で表現することに集中していました。結果を知った時はただただ嬉しかったです。学校の先生方も応援に来てくれていたので、とても喜んでくれました。賞をいただいたあとも、演奏する時の心構えは変わらず、いい演奏ができるように心掛けています。


――今回のリサイタルはどのようなイメージを描いていらっしゃいますか?

今回のリサイタルは、自分が好きな曲や、演奏してみたいと思っていた曲を選びました。それから、クラシックを初めて聴く方でも楽しめるような、親しみやすい曲を意識しました。
楽典を勉強するようになって、自分なりに曲を分析できるようになり、それぞれの曲の面白さや、好きな調、コードの進行パターンというのが分かるようになってきました。

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ 第28番ホ短調K.304は、演奏したかった曲の1つで、この機会に弾いてみようと思いました。モーツァルトといえば、軽快で明るい曲調が多いイメージですが、この曲は珍しく短調の作品です。
グリーグのヴァイオリン・ソナタ 第1番 ヘ長調 Op.8は、僕の一番好きなヘ長調の曲です。北欧の民族的な要素や、曲の流れにストーリー性が感じられて、とても聴きやすく、躍動感のあるリズムも好きです。

パガニーニの24のカプリースより第20番 ニ長調は、冒頭の美しい旋律がとても素敵です。
曲の途中にトリルの連続があるのですが、非常に躍動感があってリズミカル。曲の進行もすごく好きなんです。技巧が必要とされる曲なので、自分の演奏を向上させることができると思いました。

サン=サーンスの序奏とロンド・カプリチオーソ Op.28は、スペイン風の要素が盛り込まれたとても華やかな曲です。
冒頭は哀愁が漂う雰囲気でゆっくりした曲調で始まりますが、しだいに生き生きと情熱的なメロディが現れます。早い曲調の中にも大きく歌い上げる部分は、とてもロマンチックな曲だと感じています。


――今年3月に東京藝大ジュニア・アカデミーも修了されて、今回のプログラムからも新しいステップに挑戦しようという意気込みが感じられますね

先生に技術や体の使い方について教えていただいていますが、少しずつですが感覚としてわかってきています。しかし、ヴァイオリンは非常に奥が深いので、これからも、より多様な音色や表現ができるように研究していきたいと思います。


――今回のリサイタルでは、名器と呼ばれる1669年製ヤコブ・スタイナーでの演奏となりますね。演奏してみて、感覚の違いなどは感じられますか?

作られたのが350年ほど前の楽器ということもあり、音色がすごく深く、演奏していて、体にしっくりくる感覚があってとても弾きやすいです。音色の良さ、深さ、弓をあてた時の一体感は、これまで経験したことのない感覚でした。
貸与いただいてから2年ほどスタイナーを弾いてきて、ヴァイリンの特徴もわかってきました。このヴァイオリンで弾ける喜びとともに、自信を持って演奏できるように頑張りたいと思います。


――楽器との感覚もすごくコンディションのいい状態なんですね。ここ最近で感じた、新しい発見などはありますか?

今年の夏に、フランスの国際アカデミーに参加してきました。アカデミーは標高2100メートルの自然が豊かな場所で行われ、世界中からいろいろな楽器を志す学生が100人以上あつまって、レッスンと演奏会を行なってきました。文化の違いやフランスの雰囲気など新鮮なことばかりで、音楽的にも非常にいい経験を積むことができました。

また、麓のシャンベリーという町に、古い歴史のある石造りの教会があるので、見てみたいと思い、移動の空き時間に行ってみました。
綺麗なステンドグラスが壁にほどこされ、天井が高く、神秘的で美しい教会でした。
せっかく来たのでここでヴァイオリンを弾いてみたいと思い、その場で演奏させてほしいとお願いしてみたら、数曲ならOKと特別に許可をいただいて演奏することが出来ました。実際に演奏してみると、今までに経験したことのない音の響きに驚きました。

石造りの建物と高い天井のため残響がすごく、神聖で厳かな気持ちになり、もともとヴァイオリンはこういう空間で演奏するための楽器なんだと実感しました。
ちょっとでも変な力が入ってしまうと、残響ですべてがさらけ出されてしまい、きれいな響きにならない。全くごまかしがきかない、という事がわかりました。
たまたま居合わせた観光客に向けて演奏し、温かい拍手をいただき、貴重な時間を過ごすことができました。演奏後に、涙を流しながら『très bien!』と声をかけてくれた方がいて、最高に嬉しかったです。たった10分程度の時間ではありましたが、特別で一生忘れることのない思い出ができました。そのあとの弾き方にもすごく影響した出来事だと思います。


――それはとても貴重な経験でしたね。演奏家として、今後どのようになっていきたいですか?

今回のリサイタルを開催するにあたり、すごくたくさんの人に助けていただいています。ヴァイオリンをとおして、人との縁や輪が広がっていくのをすごく感じることが多くなりました。みなさまに感謝や愛の気持ちを込めて、これからも演奏していきたいです。


――最後に、今回のリサイタルを楽しみにしている方々にメッセージをお願いします

中学生の頃と比べて、弾き方が大分変わってきていますので、成長した姿をみていただきたいです。先ほどもお話したように、たくさんの人に助けられてヴァイオリンを弾くことができていますので、感謝の気持ちが伝わるように演奏したいと思っています。しっかりと想いを込めて、お客様に喜んでもらえたら嬉しいです。



インタビュー・文/宮崎新之


5 STARS 大岩宝新 ヴァイオリン・リサイタル 公演情報
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