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【インタビュー】アンドレア・モリコーネ│エンニオ・モリコーネ『オフィシャル・コンサート・セレブレーション』

【インタビュー】アンドレア・モリコーネ│エンニオ・モリコーネ『オフィシャル・コンサート・セレブレーション』

【インタビュー】アンドレア・モリコーネ

映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネが生前、息子のアンドレア・モリコーネと共に企画したコンサートが開催される。今回は、『ニュー・シネマ・パラダイス』、『アンタッチャブル』、『続・夕陽のガンマン』などの名シーンを大スクリーンで上映しつつ、アンドレア・モリコーネ指揮のもと東京フィルハーモニー交響楽団が演奏するという特別なコンサート。11月の本番に先駆けてイタリアからアンドレア・モリコーネが緊急来日。コンサートへの想いや、父であるエンニオ・モリコーネとの共作の思い出などを語って貰った。


ーー「オフィシャル・コンサート・セレブレーション」は世界を回るツアーですが、なんと日本が初演なんですね?

僕はとてもそれが嬉しいです。きっと素晴らしいコンサートになります。このコンサートの特徴は、音楽と一緒に映像が流れることです。セレクトされた映画のシーンがスクリーンに映し出され、そこにシンクロした音楽をフルオーケストラが演奏します。この体験は音楽の美しさを更に引き立てるものだと思います。


ーーこのプロジェクトは、どういうきっかけで動き出したのでしょうか?

この企画は父のエンニオ・モリコーネが考えました。父がひとつのフォーマットを作りたいと考え、そして指揮を僕に任せたいと言ったことからはじまりました。父はこれまでも自身で作った楽曲のコンサート活動をやってきましたが、それを更に新しいものにしようとして映像を取り入れた今回のプロジェクトに着手していたのです。


ーー東京フィルハーモニー交響楽団に加え、イタリアから、エンニオ氏と長年活動を共にしたミュージシャンたちも来日されるんですよね?

普段、クラシックをレパートリーにしている東京フィルハーモニー交響楽団に参加いただけて僕はとても幸せです。イタリアからのメンバーは、ずっと昔からの知り合いで、友人です。一緒に演奏活動をしていくなかで非常に多くの思い出があります。そして、合唱で参加するGLORY CHORUS TOKYOも素晴らしいです。


ーーどんな演奏になるのか今から楽しみです


重要なのは、みんながちゃんと自分の役割を果たせる人々であるということ。そして、指揮者である僕もそうでなければいけません。僕もオーケストラと良い関係を築いていきたいと思います。


ーースクリーンの前で指揮をされるというのは、普段のコンサートで指揮をするのと違うのでは?

僕はスコアとオーケストラに集中します。映像は音楽に含まれるわけではありませんからね。ただ、観衆の方は映画を見ながら、音楽を聴いてください。映像があることはきっと素晴らしく、美しく、良いことです。そこで指揮をできることに僕は幸せを感じます。とはいえ、僕は指揮をしているので映像は見ませんけどね(笑)。


ーー演奏曲はすでに決まっているのですか?

『アンタッチャブル』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』、『海の上のピアニスト』、『ニュー・シネマ・パラダイス』、『続・夕陽のガンマン』『ミッション』、『ヘイトフル・エイト』、『マレーナ』などですね。


ーー素晴らしいラインナップですね。これらのセレクトはアンドレアさんが?

いいえ。父です。生前の父が全曲セレクトし、演奏曲順も父が厳しく指定したものです。


ーーそうだったんですね。アンドレアさんのお気に入りの曲は?

たくさんあります。「デボラのテーマ」(ワンス・アポン・ア・タイムイン・アメリカ)、「アンタッチャブル」、「ミッション」、「シチリア人の一族」(シシリアン)、「金のエクスタシー」(続・夕陽のガンマン)……。


ーー『アンタッチャブル』のテーマは私もお気に入りです

大好きです。演奏するためにはとてもエネルギーが必要です。「ボンッ」と力強くスタートし、ドドン、ドン、ドドドンって入っていくのです。指揮者の動きとしては、リズム感を持って指揮をしなければいけない。


ーー『ニュー・シネマ・パラダイス/愛のテーマ』はアンドレアさんとお父さまとの共作と伺いましたが、どのようにして生まれた曲なのですか?

あるとき、父が僕に電話をかけてきたんです。「アンドレア、ちょっと書斎に来ないか?」と。書斎に行くと脚本を渡され、読むように言われました。それは映画の脚本で、キスシーンでした。そして父は僕に「このシーンに合わせた曲を書いてみないか?」と言ったんです。当時、僕は23歳でしたが、すでに作曲の勉強をしていたので、部屋に戻りすぐに曲作りをはじめました。


ーーそれが「愛のテーマ」ですか?

そうです。完成したものを持って父に見せると、父はすぐに気に入ってくれて……これが父の凄さですが、すぐそれを5回リピートして、彼が少し手を加えたものがみなさんの知っている「愛のテーマ」です。おかげさまで今でも多くの人に愛される曲になりました。


ーーアンドレアさんにとってエンニオ・モリコーネ氏はどのような存在ですか?

すべてとは言いませんが、たくさんのことを教えて貰った凄く大きな存在です。父親ですので、自分にとって大きな部分を占めています。また、非常に多くの人に愛され、そして数多くの素晴らしい作品を書いている偉大な音楽家でもあります。


ーー60年代から現在まで、モリコーネ氏が生み出した音楽はずっと聴かれ続けています。なぜ、こんなにたくさんの人に愛されるのでしょうか?

父は仕事が好きで、そしてまた仕事の依頼が絶えなかったということもあります。日本では「武蔵 MUSASHI』もやっていますよね? 楽譜を見たのですが、とても素晴らしいものでした。


ーーはい。大河ドラマのサウンドトラックをモリコーネ氏がやるということで日本でも話題になりました

あと、アレンジメントも大切です。僕自身、アレンジメントとは何か? をよく自分に問います。アレンジメントは楽譜から取り除くことはできないのです。それがなくてはフルスコアにならない。人の心や記憶に残るためにはアレンジメントは不可欠です。これは僕の考えですが、曲というのは完璧でなければいけません。そういう意味で父の曲はパーフェクトだと僕は思います。なぜなら、音はすでにあって、それ以上の音を加えることができないほど完璧だからです。同時に、その音をいくつか外すこともありえないのです。すべてが不可欠だからこそ完璧なのです。


ーー今回、映画のシーンだけでなく、エンニオ氏のプライベートな映像も上映されるとか?

彼がどのようにして振る舞っていたかがわかる映像も入ると聞いています。ジュゼッペ・トルナトーレ監督によるドキュメンタリーの映像もあるかもしれません。晩年の彼はとても性格が優しくなっていた。その姿が見られるのも見どころのひとつだと思います。なので、コンサートというよりも、スペクタクルですね。ショーだと思います。


ーー普段、フルオーケストラを聴かない人も今回は足を運ぶと思います。日本のファンに向けてメッセージをお願いします

リズム、メロディ、コーラス、オーケストラ……多くの人が一生懸命、準備したコンサートです。ロイド・ウェーバーが作る大規模なミュージカルに匹敵するのではと自負しています。素晴らしいコンサートになりますので是非、ご来場ください。


ーーありがとうございました

グラッチェ!



取材・文/高畠正人

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